「プリンス」も「毒舌」も個性。ミュージカル界の顔、井上芳雄の人気の秘密。

「ミュージカル界のプリンス」、井上芳雄。21歳のとき、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役で彗星のごとくデビューし、以来18年、数多くのプリンス役を演じてきた。楽屋出待ちをするファンの列は通称プリンスロードと呼ばれ、元祖プリンスとして先頭に立つ存在だ。魅力の源は、圧倒的な歌唱力と存在感、そして愛のある毒舌!? 

井上芳雄を筆頭に、ミュージカル界には、知る人ぞ知る魅力的な存在がまだまだいっぱい! そこで、ライブドアニュースでは、「ミュージカルの世界」特集と題して、今注目の、ミュージカル界の逸材たちをご紹介する。

撮影/平岩 享 取材・文/大原 薫 制作/アンファン
スタイリング/吉田ナオキ ヘアメイク/川端富生

「ミュージカルの世界」特集一覧

僕や堂本光一くんが、プリンス界では最年長かも

現在のミュージカルブームを牽引している井上さん。プリンスと呼ばれることはどう思っていらっしゃいますか?
「一体いつまでプリンスなのか」と最近よく言われるんです(笑)。プリンスといってもキャッチコピーみたいなものですよね。最近はバラエティに出ると「プリンスです」と言うだけで笑いが起きるので、ありがたいなと思いますよ(笑)。でも、これも個性のひとつと思っています。普段はプリンスでも何でもないですけどね。

今年、『ナイツ・テイル−騎士物語−』で堂本光一くんと共演したんですが、彼も(井上さんと同い年で)プリンスと呼ばれていますよね。光一くんを見ているとプリンスって年齢ではないなと思うんです。でも、精神性というのかな?(笑)夢のない世の中だから、夢を持つ要素がひとつでも多いといいと思うんです。醸し出す何かがあって、存在を必要としてもらっているとしたらうれしいですね。
最近は井上さんに続いて「ミュージカル界のプリンス」と言われる俳優も増えてきましたね。
言われてもいいけど、1回1000円くらい使用料が欲しい、なんてね(笑)。でも、呼び名がかぶるのはおいしくないから、違う呼び名にしたらいいかなと思うんですけど。石丸(幹二)さんも、劇団四季時代はプリンスと呼ばれていたけれど、あれくらいのキャリアになると最近は、もう呼ばれないのかな? 浦井(健治)くんも(山崎)育三郎もまだまだプリンスでしょう。そう思うと、39歳の僕や光一くんがプリンス界では最年長なのかもしれない(笑)。
舞台の活躍以外にも、井上さん個人としてメディアに登場する機会が増えましたね。頭の回転の速い井上さんの当意即妙なトークが評判です。
最近は、歌よりも求められてきてるかも(笑)。この3日くらいずっとしゃべる仕事をしてきて、先日も『堂本兄弟』に出させてもらったんです。バラエティの光一くんとは初めて一緒にやったんですが、さすがに若いころからやっているだけあって、トークの回しも上手だし、(『ナイツ・テイル』の騎士)アーサイト役のときとはまた違う魅力があるなと思って、そうメールしたんです。そうしたら「芳雄くんもああいう話を面白くできるのはさすがだよ」と返事がきました。お互いにトークを褒め合うという……(笑)。
井上さんの「毒舌」にも注目が集まっています。『アウト×デラックス』(フジテレビ系)や『有田哲平の夢なら醒めないで』(TBS系)などで「山崎育三郎が出ている番組を見るとテレビを消す」とか「有望な若手は大嫌い」とおっしゃったりして、ファンにはおなじみの「ブラック芳雄」ぶりを発揮していますが、ぜひ、この場でも井上さんの「毒舌」を披露していただけたら、と。
毒舌は別料金です(笑)。最近インタビューで「いつからそんなに毒舌なんですか」と言われます。でも、毒の出し方も場によって変えているんですよ。「ここくらいまではいいかな」とか、「むしろ出したほうがいいかな」とか。けっこう、毒舌は毒舌で、大変です(笑)。
トークでも新たな分野を開いてらっしゃるんですね。
毒舌についてだけで2時間くらいしゃべれますからね(笑)。毒舌でも悪口は言いたくないんですよ。身体的な特徴を言って笑いを取るのは簡単かもしれないけど、それはしたくない。最近、しゃべる機会が多くなってちょっと話を盛りたくなってきているので(笑)、ちゃんと自制心を持ってやらないと、と思っています。日々訓練ですね。

僕だって2.5次元舞台に呼ばれたら、いつでも出るつもり

トレンディエンジェルの斎藤 司さんや、ミュージカル『テニスの王子様』やミュージカル『刀剣乱舞』の三浦宏規さんが、大作ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演するなど、お笑い芸人やタレント、2.5次元舞台で活躍する若手が、たくさん出演するようになってきていますね。
古川(雄大)くんのように、2.5次元から来て、本格的なミュージカル俳優になっている人もいるし、ミュージカルも意外と間口が広いんですよ。すそ野は広いほうがいいと思うんです。ジャンルもたくさんあっていいし、それが活性化につながる。今、名前が挙がったような方たちは、ちゃんと技術も実力もあってやってらっしゃる方だと思うし。

思うに、2.5次元作品は、お客様が俳優の成長を見守るという、とても日本的な成り立ちになっていると思うんです。相撲や宝塚、歌舞伎のように、最初はちょっとつたなくても応援しているうちにどんどん成長していく――そのことに喜びが見出せる。なかば家族のようになれる、日本の愛でる文化のひとつの形なんじゃないかなと思って。
たしかにそうですね。アイドルグループを応援している人も、成長を見守ることに喜びを感じている人が多い気がします。2.5次元舞台のファンも、“推し”の成長を見たいがために、何度も舞台に通い続けますから。
それに、2.5次元で初めて舞台を見たという方もいるでしょう? それはスゴいことなんじゃないかなと思います。ただひとつ気になるのは、これも日本人の特徴だと思うけど、2.5次元が好きな人は2.5次元だけ、ミュージカルが好きな人はミュージカルだけを見る、と細分化されてしまう傾向があるということ。同じジャンルのものにしか目を向けないのはもったいないんじゃないかな。

そういう意味では、2.5次元作品で活躍する人たちがミュージカルに出るのは、ファンの人が新たにミュージカルに触れるいいきっかけになっていると思いますね。僕だって2.5次元に呼ばれたら、いつでも出るつもりですよ。テニスをやったり、自転車を漕いだりもします!って需要ないでしょうけど(笑)。

二枚目ばかり演じたいわけではない。今までと違うチャレンジを

2019年1月から、ブロードウェイミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』(以下『グレート・コメット』)が上演される。トルストイの『戦争と平和』を元としたストーリーで、主人公のピエールは父の莫大な遺産を継いでお金持ちになったものの、満たされぬ思いを抱いている人物。魅力的な男性アナトールと駆け落ちしたがやがて捨てられてしまうナターシャと、次第に運命を重ねていく。
井上さん扮するピエールは、今まで演じてきたプリンスとはかなり異なるキャラクターですね。
全然、プリンス要素はありませんね(笑)。ピエールは決して見た目がいいわけではないし、中身も偏屈な人物で、いわゆる「ヒーロー」ではないけれど、そこが面白いなと思って。僕としては二枚目の役ばかりをやりたいわけではないし、これから年を重ねていくうえでいろいろな役ができたほうがいいとも思うから、今までと違うチャレンジができるのがうれしいですね。
ピエールが思いを寄せるナターシャ役は生田絵梨花さんが演じます。乃木坂46の現役アイドルでありながら、『レ・ミゼラブル』のコゼットや『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役などミュージカルでも活躍されています。
作品としての共演は初めてですが、トニー賞授賞式のナビゲーターでご一緒したり、このあいだは『井上芳雄by MYSELF SPECIAL LIVE』のゲストとして出演していただいたんです。生田さんは乃木坂46の活動と並行してミュージカル女優をやっていらっしゃる上に、音大のピアノ科に在籍してクラシックを勉強している。すごいポテンシャルを秘めた人だと思うし、新しい流れがきたなと思いますね。

今、「生田無双」が起こってますよ(笑)。次々と話題のミュージカルのヒロインを演じている。本人は真面目な人だし、きっと「自分はここが足りない」とか謙虚に思いながら経験を重ねていらっしゃると思う。今回共演できるのが楽しみですね。
ブロードウェイでは出演キャストが楽器も演奏していて、ピエール役のジョシュ・グローバンはピアノとアコーディオンを演奏していましたが、日本版ではどうでしょう?
台本に指定があるので、今はアコーディオンとピアノを練習していますね。ピアノがうまいわけじゃないから、大変ですけど(笑)、舞台上で弾くことになると思います。
ブロードウェイでこの作品を見ましたが、従来のブロードウェイミュージカルとは全く違う、新たな方向性の作品だなと思いました。
この作品はブロードウェイの最新作で、若いクリエイター(作詞・作曲のデイブ・マロイ)の勢いやエネルギーを感じますね。従来の枠に囚われない作品で、台詞もほとんどなく、歌だけで話が進んでいくんです。しかも、ブロードウェイ版ではアクティングエリア、つまりステージがほとんどない。
キャストが通路を縦横無尽に移動し、演技していくんですよね。観客を巻き込んだパフォーマンスもあって目が離せませんでした。
そうなんです。ほぼ客席の中で演じている形なんですよ。
『戦争と平和』のストーリーを伝えるより、パフォーマンスを重視した作品かなとも感じましたが、日本版はどうなるんでしょうか?
たしかに、お客様を巻き込んで一緒に演じる面白さはあると思います。でも、日本版として上演するにあたって、「『戦争と平和』という壮大で入り組んだ話を伝えるには、工夫が必要だね」と演出の小林 香さんと話をしたんです。ブロードウェイ版のコンセプトは受け継ぎながら、日本版ではパフォーマンスを見せることと物語を伝えることを両立できたらと思いますね。
今回の『グレート・コメット』のように、今までにない新しいことに取り組むのはいかがでしょうか?
新しいことに挑戦するのは楽しいけれど、大変なことでもありますね。『ナイツ・テイル−騎士物語−』を新作で上演したときも思ったけれど、作品を立ち上げるということは皆が「これはどうなるんだ」という試行錯誤の連続。そのぶん、できあがったときにはそれ以上の喜びがあるんです。だから今回の『グレート・コメット』は覚悟して臨みたいですね。

作品としても決してわかりやすいラブストーリーではないし。ナターシャを密かに見守るという役で、どんな居方ややりようがあるのか。僕が今までやったことがない役柄に挑戦していきたいですね。
『グレート・コメット』から始まる2019年は、井上さんにとって、どのような年になりそうですか?
僕も来年で40歳になりますが、年々「その日暮らし」になっているのを感じるんです(笑)。一日一日与えられた役割を必死にやらせてもらって、その結果新しい世界が開けてくる。年を重ねてきたせいか、いろんなことが楽しく、やりやすくなってきているのを感じます。だから、とにかく、毎日を一生懸命に生きていきたいなと思いますね。
井上芳雄(いのうえ・よしお)
1979年7月6日生まれ。福岡県出身。A型。2000年、東京藝術大学音楽学部声楽科在学中に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビューを果たす。近年はストレートプレイやラジオ番組、テレビのバラエティ―番組など、活躍の幅を広げている。2018年は堂本光一と共演したミュージカル『ナイツ・テイル−騎士物語−』が大プロジェクトとして演劇界の目を集めた。2019年は、1月にブロードウェイミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』、3月〜4月に『十二番目の天使』に出演。

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出演作品

『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
2019年1月5日(土)〜27日(日)@東京芸術劇場プレイハウス
音楽・詞・脚本・オーケストレーション:デイブ・マロイ
訳詞・演出:小林香
原作:レフ・トルストイ(原作『戦争と平和』より)
出演:井上芳雄、生田絵梨花、霧矢大夢、小西遼生、松原凜子、水田航生、はいだしょうこ、メイリー・ムー、原田薫、武田真治ほか
http://www.tohostage.com/thegreatcomet/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、井上芳雄さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2018年12月10日(月)18:00〜12月16日(日)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/12月17日(月)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月17日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月20日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
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