タイ・バンコクで、王室関連の式典に出席し、信者から施しを受けた食べ物を持って歩く僧侶(2018年10月13日撮影)。(c)Romeo GACAD / AFP

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【AFP=時事】タイの僧侶、ピピット・サーラーキットウィノン(Pipit Sarakitwinon)さん(63)は毎朝、寺の周りを歩き、腕のエクササイズを数百回行う。同国では肥満になる僧侶が増えているため、保健当局などが問題への対策に乗り出している。

 タイでは僧侶が深く敬われており、信者たちは盛んに食べ物を施す。だが、喜捨される食べ物には、砂糖、脂肪、油がたっぷり入ったものが多く、これが僧侶の健康問題につながっている。

 バンコク市内の病院で行われた僧侶向け健康診断中にAFPの取材に応じたピピットさんは、「ダイエットをする前は、100メートルも歩かないうちに疲れてしまっていた」と話し、以前は体重が180キロあったことにも触れた。

 タイの保健当局と宗教当局は2017年12月、僧侶の間で、糖尿病、高血圧、膝の問題が急増していることを受けて、「僧侶のための健康ガイドライン」を作成し、食べ物に気を使うよう呼び掛けた。

 タイの人々は、毎日托鉢して回っている僧侶に食べ物を喜捨することで徳を積み、先祖供養をしている。だが、これについては厚意が行き過ぎてしまったともいえる。濃厚なカレー、砂糖たっぷりのお菓子、炭酸飲料、塩辛いスナックなど、僧侶に施す食べ物は、高カロリーで不健康なものが多いのだ。

 アジア開発銀行(AIB)によると、タイはアジア有数の「肥満国」だという。チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)の保健医療学部が2016年に僧侶を対象に実施した調査によると、約48%が肥満、約42%が高血圧と診断された。

 タイでは、僧侶の正午以降の食事が禁じられている。ブッダも、午後は食事を控えるよう信者に対して言ったと伝えられている。

 だが、仏典に出てくる「パナ」と呼ばれるある特定の飲み物だけは、正午を過ぎても摂取することが許されている。だが、この飲み物に砂糖がたっぷり含まれているのだ。

 タイの小売店舗では、加工食品などを詰めたお布施セットが販売されており、誰でも簡単に入手できる。だが、これも問題を悪化させている原因の一つとされている。

■施しは断ることができない

 ガイドラインでは、「仏教の教えをいつでも伝えられるようにしておく」ために、健康には気を付ける必要があると僧侶らに呼び掛けているが、信者のお布施を断わることは微妙な問題だ。

「ブッダの教えによると、信者が施すものは何であれ、受け取らなければならないとされている。断ることはできないし、否定することもできない」と、バンコク市内にあるサンウェート(Sungvej)寺の僧侶で、ガイドラインの作成に協力したラーチャウォンムニーさんは話す。

 ラーチャウォンムニーさんは、健康に関する教育を通じて状況に何らかの変化が現れることを期待している。ここで言う指導には、健康診断受診の勧めなどが含まれている。

 ガイドラインは、タイの地方部で小規模で行われていた活動が基になっている。

 東北部ノンカイ(Nongkhai)県にあるポーチャイ(Phochai)寺の僧侶、パーワナー・タンマコーシット(Bhavana Dhamakosit)さんによると、寺では肥満と高血圧の問題が多く見られたため、僧侶たちは3年前から健康診断を受けているという。ただ、僧侶は寺を転々とするため、実際に病院や歯医者で健康診断を受ける数は多くない。

 また、ガイドラインでは信者に健康的な食事を施すよう勧めているが、僧侶たちは信者にプレッシャーをかけすぎることには慎重だ。これについてパーワナーさんは、「特定の食事を食べないよう僧侶に呼び掛ける方がより効果的だ」と指摘する。

 僧侶向けのガイドラインは強制ではない。それでも効果が見られ始めた僧侶も出てきている。

 今年初めに体重を記録し始めてから、これまでに約30キロの減量に成功したというピピットさん。「村人からもらう食事を以前よりも選ぶようになった」と問題との向き合い方についてコメントした。
【翻訳編集】AFPBB News