日本が世界に誇るメニューの1つ、天婦羅。

「江戸の三味」である、寿司、天婦羅、そばの1つとしても知られ、現在ではその美味しさは日本のみならず、世界中に知られている。

また、おいしい天婦羅は、丁寧な仕事と熟練の技が必要であるため、おいしい天婦羅をリーズナブルに味わえるお店はなかなか存在していないのが実情だ。

今回は日本各地に存在する天婦羅のおいしいお店の中から、東京都千代田区神田司町にある老舗の天婦羅屋をご紹介したい。

お店の名前は「八ッ手屋(やつでや)」だ。

・大正3年(1914年)創業の老舗天婦羅屋、それが神田の「八ッ手屋(やつでや)」
こちらのお店、大正3年(1914年)創業の老舗の天婦羅屋。

大正3年(1914年)と言えば、日本ではドイツのシーメンスによる日本海軍高官への贈賄事件であるシーメンス事件により第1次山本内閣が内閣総辞職に追い込まれるという不安定な状況、世界ではサラエボ事件をきっかけに第一次世界大戦が発生するなど、情勢が不安定な状況。

そんな時代に産まれた老舗の天婦羅屋である「八ッ手屋(やつでや)」さんは、今なお、美味しくて安い天丼を提供し続けている、正に神田の名店と言っても過言ではない。

・絶品の上天丼
こちらのお店には、様々なメニューがあるのだが、その価格には驚いてしまう。

例えば、お持ち帰りの弁当だが、なんと680円で提供されている。

中天丼であっても750円、上天丼でも1050円と、老舗天婦羅屋でこの価格が提供されている事に驚きを禁じえない。

なかでもオススメしたいのが上天丼だ。

天丼のネタは、海老天2本に、シャキシャキとしたインゲンの天婦羅が1本、そして、食べ応えのあるイカのかき揚げが盛られている。

そしてそれらを創業以来の継ぎ足しの丼タレがウマくまとめあげている。

海老天はぷりぷりとしており、エビのもつ味わいと丼タレとの相性は抜群だ。

インゲンの天婦羅は、インゲンの持つ食感や野菜本来の甘みを感じられ、丼のネタの中で、一服の清涼剤の役割を果たしている。

そして特筆したいのが、イカのかき揚げだ。

大ぶりにカットされたイカはプリプリ食感で、かき揚げ丼としてだけでも食べたいと思えるほどの味わい。

価格、味わい、雰囲気、そのどれをとっても理想の天丼と言っても過言ではなく、あの作家浅田次郎氏が自身の著書の中で「たまげるほどうまい」と評したほどの味わいに偽りがないことが分かる。

・お吸い物もお新香も美味しい
そして天丼の脇役も秀逸。

こちらのお店では、天丼と一緒にお吸い物とお新香も提供されるのだが、これがまた、秀逸なのだ。

透き通ったお吸い物には三ッ葉とそうめんのみ。

奥行きのあるお吸い物の味わいは非常に美味。

簡単だからこそ、ごまかしのきかないお吸い物はシンプルながらも、おいしい天丼に寄り添うベストなパートナーと言える。

そして、お新香。

こちらのお店ではキャベツを一か月塩漬けした自家製のお新香が供される。

少し酸味のある味わいは、おいしい天丼の味わいをキリッと引き締めてくれる。

神田の路地裏に佇む、老舗の天婦羅屋「八ッ手屋(やつでや)」。

ランチタイムの3時間しか営業しない、無骨なお店には、いままでも、そしてこれからも多くの人々が訪れるに違いない。

そんなお店の一本芯の通った味わいは、時代が変わっても、受け継がれていって欲しい、そんな記憶に残る文化遺産の1つといっても過言ではないのだ。

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お店 八ッ手屋(やつでや)
住所 東京都千代田区神田司町2-16
営業時間 11:00〜14:00
定休日 土曜日・日曜日・祝日