5月1日、韓国・釜山の日本総領事館前への設置を阻止され、警察に取り囲まれた「徴用工」の像(名村隆寛撮影)【

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 韓国は徴用工判決で日韓関係の法的基盤を覆した。

 判決から1カ月余、ようやく発言した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「過去の歴史で日韓関係が損なわれてはならない」と述べたが、日本の反応は冷え切っている。慰安婦問題をめぐる日韓合意で一方的に「和解・癒やし財団」を解散し、徴用工判決は「司法の判断」を盾に放置する韓国政府との間に、どのような「未来志向」が成立するというのか? 韓国の反日政策は拡大の一途であり、文大統領の対日政策は「過去で一色」だ。

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 判決は韓国側の歴史観にのっとって、1910年の日韓併合を全否定、65年の日韓請求権協定を一方的に解釈して「強制労働の慰謝料請求」を持ち出した。

 国際法では国家間の合意順守が原則であり、条約は3権(司法、立法、行政)を超越して国家を拘束する。国内法で条約を否定されていたら、国家間の外交は成り立たない。したがって徴用工判決は「国際法違反」(日本政府)なのである。

 徴用工判決はこうした法的問題に加え、さらに「5つの理由」で日本政府と日本人に不快感と拒否感を呼び起こしている。

 【放置】判決が日韓関係の根幹に関わる内容だったにもかかわらず、文大統領は1カ月以上、何も発言もせず放置した。安倍晋三首相、河野太郎外相など日本側首脳が強い危機感を表明したのを無視したに等しい。請求権協定は1965年、国交正常化のための日韓基本条約とともに結ばれた両国関係の基盤である。民間企業の問題ではない。

 判決後、李洛淵(イ・ナギョン)首相が出した「司法判断を尊重し、被害者たちの傷が最大限癒やされるよう努力する」との声明は何の立場表明にもなっておらず、韓国政府が日韓関係をどう考えているのか、いまだに不明なのである。

 【侵略戦争】太平洋戦争で日本は韓国と戦ったわけではない。韓国はサンフランシスコ講和条約に参加していない。韓国は日本の戦争について法的に「評価」できる立場にない。

 しかし判決は、労働者の動員が「日本政府の朝鮮半島への不法な植民地支配や侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為」などとした。

 韓国の当時の立場から日本企業について「侵略戦争の遂行と結びついた反人道的な不法行為」と決めつけるのはおかしい。日韓併合について韓国は「不法」と主張しているが、すでに国際的には「当時の国際法で合法」との評価が定まっている。

 【2度払いを要求】国交正常化交渉で日本は韓国に、徴用者名簿などの資料提出を条件に「個人への補償」を複数回、提案した。この事実は韓国で公開された外交文書で明らかになって久しい。個人への補償支払いを拒否したのは韓国側である。そして、「韓国政府への一括支払い」を要求した。

 また、補償とは「被徴用者の精神的、肉体的苦痛に対する補償」を意味すると日韓で確認した。お互いの主張や事情を理解し譲歩して、資金の位置づけを「経済支援金」とすることで合意した。

 判決は、こうした歴史的事実を無視して「慰謝料」を要求した。請求権協定でも「精神的苦痛」の補償を受け取っているので、実際には2度目の支払い要求ということになる。

 【同時期に「癒やし財団」も解散】文在寅政権は11月21日、慰安婦問題に関する日韓合意(2015年12月)の柱となってきた「和解・癒やし財団」の解散を一方的に発表した。韓国は日韓合意を朴槿恵(パク・クネ)前政権と日本の「政治合意」で条約のような国際的拘束力はないと位置づけた。

 しかし、日韓合意は日本政府が10億円を拠出するなど「条約に準じる内容」と位置付けられるものだ。韓国の合意白紙化への日本の怒りは大きいが、この財団解散後の後続措置も決まらない中で一連の徴用工判決が出た。続々と反日的な問題を蒸し返す文政権に、日本には強い「うんざり感」が広がっている。

 【訴訟対象拡大の恐れ】文在寅政権は日韓が歴史を克服するため譲歩し和解した過去を覆している。特に請求権問題は国交正常化交渉の核心部分で再出発の基礎となった法的基盤だっただけに、判決がこれを全否定したことのダメージは大きい。要求を「慰謝料」との位置づけたことで、訴訟の対象は徴用工に止まらず、あらゆる種類の「強制労働被害者」に広がる可能性が指摘されている。

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 徴用工訴訟は大法院の下級審(1審、2審)で少なくとも12件あり原告数は900人を越える。韓国政府は世論を判断するため、李洛淵首相が有識者の意見聴取をしたが、対応策作成のメドは示されておらず、「先延ばし戦術にしかみえない」(政府関係者)。

 韓国側の原告代理人や支援団体は判決後、来日して当該の新日鉄住金本社を訪問、「協議に応じなければ差し押さえ作業に入る」などと強気の構えをみせている。韓国政府は事態の拡大を傍観し、日韓関係悪化を放置している。(編集委員)