創業200年のブルックス ブラザーズが「着古されない」理由

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米国の歴代大統領のスーツを手掛けてきた米ブルックス ブラザーズは創業200周年を迎えてなお、古びることなくレレバンス(適切性)を維持している。

同社は現在、人工知能(AI)を使ってビジネスプロセスの最適化や自動化を支援するイタリアのORSグループから協力を得て、各店舗の在庫管理や、売上高に対する販促活動の効果の分析などを行っている。

さらに、ORSが米マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授らと開発を進めているブロックチェーン技術を、自社のサプラインチェーン全体に導入する計画だ。「エンドツーエンドでAIを活用した」プラットフォームを導入する業界初の企業になるという。


ブルックス ブラザーズCEO、クラウディオ・デル・ベッキオ

独占インタビューに応じた同社のクラウディオ・デル・ベッキオ最高経営責任者(CEO)は、「業界ではよりパーソナライズされたアプローチを取る傾向が明確になってきている」として、次のように語った。

「当然ながらファッションは変化している。あらゆる変化が加速度的に進んでいる。変化する業界により迅速に対応する能力が、ますます重要になっている」

「企業が主導するマーケティングは、大幅に効力を失っている…私たちは、顧客が何を求めているかを予測する必要がある。AIは、そのためのソリューションだ」

業績は好転

現在の戦略によって、同社はオンライン注文については店舗から即日出荷・配送することを実現。また、需要のある商品の在庫を常に確保し、売上高を伸ばしている。

デル・ベッキオは、需要を適格に把握することの重要性を理解している。イタリアのアイウェア大手ルックスオティカ グループの創業者であり、2001年にブルックス ブラザーズを英小売大手マークス&スペンサーから買収したのは、彼の父親だ。

変化に対応している同社の取り組みは、効果を出し始めている。2年連続で減少した前年比での売上高は、今年は増収に転じた。米国以外の市場と、オンラインでの売上高が2桁台で伸びているためだ。

非公開会社である同社の年間売上高は、およそ12億ドル(1350億円)。その約30%ずつを、オンライン販売と国外の市場で稼ぎ出している。大手百貨店などにも出店しているが、自社店舗とオンライン販売から売上高の90%以上を得ている。

同社は現在、米国内と外国にそれぞれ約300店舗ずつを展開する。AIの活用によって在庫管理の効率化が実現できることから、今後は店舗を現在より小規模にした上で、出店数を増やしていく計画だ。

「巨人」は脅威か?

デル・ベッキオはまた、ファッション業界の誰もがその存在を意識しながら、あまり話題にしたがらないアマゾン・ドット・コムについても質問に答えた。

同社はビジネスに関して、現在アマゾンと協議中だ。CEOによれば、アマゾンのプラットフォームを通じた販売について同社から「打診があった」という。

「社内でかなり話し合っている。決断は戦略的なものとなる…(消費者として)私自身も何でもアマゾンで購入する。多くの消費者が利用している。そのことに抵抗するつもりはない」

対中貿易戦争の影響は?

同業の各社と同様、米国の中国に対する制裁関税の引き上げについては、「様子を見ている」ところだ。ただ、デル・ベッキオによると、ブルックス ブラザーズが生産において中国に依存する割合は、同業他社の多くに比べて低い。詳細は明らかにしなかったが、例えばシャツはマレーシアで生産しているという。

「メイド・イン・アメリカ」で知られる同社は、米国内の3カ所に工場を所有しており、スーツの95%をマサチューセッツ州で、ネクタイの全てをニューヨークで生産する。実際には国産の量を増やしたい考えだが、「適任と言える人材が不足しているため、実現は簡単ではない」。

カギを握るミレニアル層

ブルックス ブラザーズは2013年、「レッド フリース」コレクションを発売した。目的はミレニアル世代の消費者を引き付けることだ。


カジュアルにアップデートされた「レッド フリース」コレクション

CEOによると、より流行を意識し、平均価格帯を下げたこのラインは、同社の事業の約8%を占めるようになっている。顧客の60%がミレニアル世代だ。また、同社の顧客は80%が男性だが、このラインではほぼ半数が女性だという。

ミレニアル世代の顧客を呼び込むためには、その世代の管理職が必要だ。61歳のCEOによれば、同社は各店舗を監督するポジションに、27歳の従業員を任命した。

「若い人たちを大いに頼りにしている」というCEOはこの人事について、次のように述べている。

「リバース・メンタリングと呼んでいる。これまでは私たちが若い従業員たちをメンター(指導)してきた。だが、今ではその若者たちが私たちに、何をすべきか教えてくれている」