リーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグ(CL)を含めて、今季はまだ4試合出場にとどまっている香川真司だが、ドイツのメディアでその名前を目にすることは意外なほど多い。11月16日のキッカー誌ウェブ版では「香川が状況打開策は移籍しかないのか」という記事が、トップに掲載されていた。

 2010〜11と2011〜12シーズン、それ以前はあくまで国内の一強豪にすぎなかったドルトムントが、CL決勝トーナメントの常連となるビッグクラブに成長した時期に、重要な役割を担った功労者がくすぶっている。そのことはドイツメディアも気に留めているのだ。地元紙ルールナハリヒテン紙も、ツイッターによる練習のレポートや遠征メンバーチェックなどで、欠かさず香川の名前を挙げている。


練習中の香川真司(ドルトムント)。冬の移籍期間の動向が注目されている

 香川自身による「スペイン移籍願望」表明は、当然のようにドイツメディアでも大きく取り上げられた。だが、個人の希望だけにフォーカスしたその発言は、好意的にとらえられることはなかった。その発言には「がっかりした」というのが正直なところだろう。もちろん、香川の苦境は皆の知るところもである。

 そんな香川の意向を受けて、ミヒャエル・ツォルクGMは、「不満を抱いていること、あれこれ考えていることは理解できる」とコメントしている。ウィンターブレイクに話し合いの機会を持ち、移籍願望があるなら無理に慰留はしない方向だという話もしている。チームが快調にブンデスリーガの首位を突っ走り、かつ選手が飽和気味の現状では、慰留する理由を見つけるほうが難しい。

 香川は、指揮官ルシアン・ファブレの構想に合わなかったというよりも、流れに乗り遅れた。当初、ドルトムントは単に若返り路線を模索しているように見え、1989年生まれの香川が弾かれてしまうのは不運の感があった。だが、時がたつにつれて、決して年齢だけがファブレ監督の判断材料でないことは明確になってきた。

 たしかに香川と同じ2列目は、生きのいい若手がひしめいている。2000年生まれのジェイドン・サンチョはイングランドの未来を担う人材であろうし、2015〜16シーズン終盤から活躍するクリスチャン・プリシッチは98年生まれ。ボランチのモハメド・ダウドは96年生まれで、今季の注目株ヤコブ・ブルン・ラーセンは98年生まれだ。

 だが、指揮官が信頼するMFアクセル・ヴィッツェルも、香川とポジションがかぶるマルコ・ロイスも、89年生まれと香川と同世代。不動の右SBである古株のウカシュ・ピシュチェクは85年生まれなのである。ベテランが軽視されているわけではない。

 実際のところ、本人のアピール不足もあるように思う。チャンスは多くはなかったが、ゼロではなかった。それをつかめなかったのだ。

 たとえばチームが7-0で大勝した第5節ニュルンベルク戦。香川は62分から途中出場し、その後に3点が決まっているのだが、香川自身は無得点で、アシストもできなかった。試合後の香川は、得点につながる動きや、味方からの信頼の重要性を痛感していた。絶好のタイミングで、別の選手にパスが送られたからである。

 その後、ツヴァイテ(2軍)に加わり、先発した11月6日の4部ロートヴァイスエッセン戦。チームは5-0で大勝し、香川は4アシストしているものの、無得点だった。さらに11月16日、3部のロッテとの練習試合では、チームは3-2で勝利し、香川は全3得点をアシストしている。この試合で、調整が必要だったパコ・アルカセルは、当然のように得点している。

 もちろん、得点がすべてではないが、目に見える結果が必要なのもこの世界。以前から香川は、呪文のように「得点という結果がほしい」と言い続けていたが、そこから遠く離れてしまっているのだ。

 香川が移籍願望を抱くのは当然だろう。現役選手である限り、出場機会を求めるのは当たり前のことだ。ただし今回の発言は、たまらず口にしてしまったのか、それとも何らかのアピールのためにメディアで明らかにしたのか、その思いが見えてこない。

 個人的には、所属チームのある選手が、現状で何も貢献できていないのに、次への思いを口にするのは、いただけないことだと思う。また、こんな発言をしてしまうと、退団セレモニーなどを行なって、気持ちよく送り出してもらえないのではないかという心配も抱いてしまう。クラブからもファンからもメディアからも愛される存在なのに、もったいないことだと思う。スタジアムには、いまも香川のユニフォームを着たサポーターがいるのだ。

 ドイツで報道されているように、ドルトムントの最大のライバルであるシャルケで監督を務めていた、マルクス・ヴァインツィールが指揮するシュツットガルトへ行くのか。それとも夏に実現しなかったというセビージャ移籍が実現するのか。すべてが香川サイドだけで決められる問題ではないが、この冬の香川は目が離せない状況に置かれている。