12月は日本独自の異称で「師走(しわす/シハス)」と呼ぶ。
この時期になると、ニュースなどでも「師走」と耳にするようになるが、この言葉を聞くだけで、なんだか一気に年末の慌ただしさを感じる人もいるのではないだろうか。

それもそのはず。「師走」の語源は諸説あるものの、簡単に言うと、お坊さんや先生など“師”と呼ばれる人物が、忙しくて走り回る時期だといわれている。

そこで今回は、いろいろなタイプの先生がいろいろな意味で奮闘する映画14本をご紹介しよう。

人間味あふれる先生

映画 鈴木先生』(2012)

独自の教育理論を持つ中学教師は、理想的なクラスを構築するための要として、1人の女子高生に注目していた。しかしある日、彼女は乱入してきた卒業生に人質として捕らえられてしまう。

先生もやっぱりクラスに気になる生徒がいて、密かに妄想しているのである。だって人間だもの。心の声がダダ漏れなので、あきれるほど生徒たちを観察しているのがよくわかる。生徒の表と裏の人間関係を把握するのも、先生の大切な仕事。生徒にも闇はあるが、先生にも闇はあるのだ。人間だもの。

にしても、あれやこれやとモンモンとしながら自己完結している先生は、生徒から見ると変人かもしれない。ここまで生徒と向き合っているのかと、感激されるかもしれない。長谷川博己のクールな早口モノローグがツボ。風間俊介の強烈な登場に、同じ学園モノということでTVドラマ『3年B組金八先生』(99)を思い出す。

『あの子を探して』(1999)

中国の貧しい農村で、休職中の小学校教員の代理として13歳の少女が候補になったが、彼女は中学校も出ていないため、ある条件と引き換えに授業を担当することになる。

教師としては頼りない彼女だが、生徒を一人も脱落させなければ報酬アップという提案をされ、生徒に自習させて教室の外で見張っているという手抜き授業を始めるあたりは、かなりしたたかな子である。しかし子供たちは、やんちゃで生意気盛り。ある日クラスで手を焼いていた少年が、家庭の事情で町に出稼ぎに行ってしまう。

一応先生なのに、いつも不満気にブスッとした表情。そうそう、思春期ってこんな感じだったっけ。最初は自分のためだったけど、都会で生徒を探し回る彼女は孤独で健気で、つい応援したくなる。あっけらかんとしたラストがいい。のちにハリウッドで派手なワイヤーアクションを撮るチャン・イーモウ監督だが、やっぱりこういう素朴な味わいが原点。

恋に落ちる先生

『すれ違いのダイアリーズ』(2014)

田舎の小学校に赴任した青年教師は、前任者の女性教師が残した日記を見つけ、それを読んでいくうちに、会ったこともない彼女に親しみを感じるようになる。

1年後、彼と入れ違いで彼女がその学校にやって来ると、今度は彼が残した日記を彼女が読む。そうやってお互いの日記を読みあうことで、二人の距離は縮まっていく。しかし彼らは、自分の日記を読まれていることを知らない様子。時間を超えた長い交換日記のような不思議なラブストーリー。

舞台になるのは湖上分校。電気は蓄電池で、タンクの水を飲み、携帯電話はほとんどつながらない。そんな場所で心細い教師生活を始めた彼は、彼女の日記に励まされる。同じ教師という立場だからわかりあえる悩みや喜び。二人の関係がなかなか進展しなくてじらされるのも、またよし。

『いきなり先生になったボクが彼女に恋をした』(2016)

恋人に浮気され、沖縄出張中に会社が倒産してしまった韓国人の男性が、仕事で韓国語を習得しなければならないシングルマザーと出会い、韓国語を教えることになる。

やっとのことで旅行会社に就職した彼女は、取引先のVIPが来日するまでに韓国語をマスターしないと解雇されてしまう。幼い子供を1人で育てている彼女は、正念場を迎えて崖っぷち。一方、恋人と仕事を一度に失い、見知らぬ土地で途方に暮れている彼も、人生の迷子状態で崖っぷち。

子供のために頑張る彼女に心を打たれ、その健気な姿に「守ってあげたい本能」をくすぐられてしまう彼を演じたのは、韓国の人気男性アイドルグループのメンバー。そのせいか、韓国ドラマを観ているようなラブコメディだ。男女の距離を縮めるのは、アクシデントに限る。

型破りな先生

『スクール・オブ・ロック』(2003)

バンドをクビになってしまったギタリストの主人公が、ふとしたことで厳格な有名学校へニセ教師として赴任し、子供たちを活気づけるために破天荒なロック授業をする。

真面目に教師の仕事をする気はなかったのに、規律でがんじがらめにされている生徒たちの無気力な様子に気づいた彼は、バンドを結成して大会に出場することを思いつく。実は彼はバンドをクビになっているので、自分もまたバンドをやりたかったというのもありそう。そうして彼は、嬉々としてロックの授業を始めるのであった。

彼は全身全霊でロックを愛する男。そのギタープレイはどこまでも熱く、メロディに合わせて表情が顔芸のように変化する。そんな姿を見せられた生徒たちは、自己解放の道へとまっしぐら。あともう少しというところで失敗し、投げやりになってしまう先生を、逆に叱咤激励するまでに成長する。教師冥利に尽きるなあ。

『コッホ先生と僕らの革命』(2011)

1874年、イギリス留学を終えた主人公は、母校に英語教師として赴任したが、反英主義的な資本階級の生徒たちは先生に反発心を抱き、真面目に授業を受けようとしなかった。

ドイツで「サッカーの父」と称される実在の教師を描いた作品。ドイツ初の英語教師として生徒たちと向き合い、当時ドイツではあまり知られていなかったサッカーを生徒に教えはじめる。そして、サッカーのルールを英語で教わる彼らは、そのフェアプレイ精神を通じて自由と平等についても学んでいくのである。

労働者階級の生徒は露骨に差別され、サッカーは反ドイツ的だとみなされる時代。そこへイングランドのサッカーチームがやって来て、地域の人々や学校・政府関係者が見守る中で交流試合をすることになる。反発や反感の嵐を受けていた先生の教育方針が、公の場で試される瞬間。勝てばみんな嬉しい。

うっかり先生

『おっぱいバレー』(2008)

廃部寸前の中学男子バレーボール部顧問になった新任教師が、部員たちを奮起させようとして、「試合に勝ったらおっぱいを見せる」という約束をさせられてしまう。

冗談みたいな話だが、実話なので何ともしがたい。思春期の男子がどれだけ本物のおっぱいを見たいのか。かつて男子だった大人たちは、きっと心から共感するのだろう。中坊たちにとっては、お金よりも名誉よりもおっぱいが必要。それから急に練習に打ち込むようになる姿がおかしい。 

先生は本当におっぱいを見せるのか。見せてよいのか。かといって、生徒たちを裏切ってもよいのか。教育者として、これは結構深刻な問題だろう。勝ってほしいが、勝っては困る。たかがおっぱい。されどおっぱい。実はつらい過去を持つ先生は、このおっぱい問題をどう乗り越えるのか。いかにもうっかりしそうな先生を、綾瀬はるかが好演。

『先生と迷い猫』(2015)

堅物な偏屈おじいちゃんとして近所でも評判の主人公は、亡き妻がかわいがっていた野良猫が毎日仏壇の前に来るのが気に入らず、ある日怒鳴って追い払ってしまう。

実話を基にした映画。9年ぶりに主演を務めるイッセー尾形が、定年退職をした校長先生を演じ、妻に先立たれて1人暮らしをしている偏屈な男らしい細かいディティールが、まるで1人芝居のよう。言葉を発しない猫に話しかけ、今度は姿が見えなくなった猫に向かって話しかける。

彼が淡々として見えるのは、自分を守るために寂しさを抑え込んでいるからではないか。自分が孤独であることを認めたくない。その突っ張りとプライドが、無自覚なだけに切ない。うっかり口にしてしまった暴言のせいで、猫はいなくなったのかもしれない。みんなでワイワイと捜索しているうちに、彼の凝り固まってしまった心が溶けていく。

人生を教える先生

『いまを生きる』(1989)

1959年、全寮制の名門進学校にやって来た新任の英語教師は、厳格なルールに縛られている生徒たちを前に、教科書を破り捨てるように言い放つ。

先生は詩人でもあるので、ちょっと変わり種。なので、授業も風変りで型破りだ。中でも、生徒を机の上に立たせ、物事を別の視点から見ることの大切さを教えるシーンは有名で、感動してマネをした先生がいたとかいないとか。ちなみに机から降りる時も、ちゃんと周りを見渡すようにね。

生徒たちは常に試され、思考を刺激されて、学校や親の価値観に縛られない自由な生き方に目覚めていく。人はいつか死ぬのだから、自分の人生には自主的に関わるべし若者よ。そう教えていた先生だったが、ショッキングな出来事が起こってしまい、事態は急展開。ああ、でも先生の教えは永遠です。

『モリー先生との火曜日』(1999)

仕事で多忙な日々を送る主人公は、テレビで大学時代の恩師が「人生で一番大切なこと」について語っているのを見て心を動かされ、久しぶりに会いに行く。

筋萎縮性側索硬化症を患い、余命いくばくもない恩師は、訪ねてきた元教え子に週1回の最後の授業を行う。それがこの映画である。モリー先生を演じた名優ジャック・レモンの遺作になったこともあり、そう思うと、先生が本当の幸せについて語る言葉の重みがより感慨深い。

死を前にした先生は、元教え子に「死」ではなく「生」を説く。そして「愛と許し」の話をし、最も大切なのは日々を悔いなく過ごすことだと教える。主人公は録音した先生の言葉を事あるごとに聞き返し、それが血となり肉となってゆくのだろう。そこまで信頼のできる先生がいて、彼は幸せだ。

サイコな先生

『バトル・ロワイアル』(2000)

経済的危機により大きく傾き始めた日本で、不登校児や少年犯罪の増加を受け、政府によって大人の復権を目的とした“新世紀教育改革法(BR法)”が公布された。

年に1度、全国の中学3年生から無作為に選んだ1クラスを無人島に閉じ込め、最後の1人になるまで殺し合いをさせるという衝撃的なストーリー。そのため、国会議員を巻き込んでの賛否両論が起こり、一種の社会現象にまで発展した問題作である。続編『バトル・ロワイアル II〜鎮魂歌(レクイエム)〜』(03)も製作された。

自分の命を守るために親友を殺したり、力を合わせて生き残ろうとしたり。中には、早いうちに諦めて恋人と一緒に死ぬ生徒もいて、極限状況に追い込まれた人間の反応はさまざま。このゲームの指揮をする冷酷な先生を北野武が演じ、人間的な感情が見え隠れする最後のシーンで複雑な気持ちに。自己愛の強い柴咲コウが必見。

『テハンノで売春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる』(2000)

ソウルのテハンノで売春をしている女子高校生は、街で担任の先生とバッタリ会ってしまい、仕方なく最高のサービスをして見逃してもらう。

長くて不思議なタイトルそのまんま、先生にバラバラにされた女子高校生が、謎の人物につなぎ合わされて復活し、まだそこにいて先生に復讐する話である。二人が体をくねらせながら一緒に歌うシーンは、どえらいものを見てしまったという後味でうなされそう。

男の性欲が見えるサングラスをかけて客をつかまえる彼女は、そもそも男という生き物を見下しているフシがあるが、とにかくその先生が異様で気持ち悪く、しかし復讐の仕方は漫画チック。何だかよくわからないけど心に引っかかるC級映画。

ひどい目に遭う先生

『先生を流産させる会』(2011)

担任の先生が妊娠していることに気づいた女子生徒グループが、先生がセックスをしたということに異常な嫌悪感を示し、「先生を流産させる会」を結成する。

実在の事件をベースにした衝撃作。インパクトのあるタイトルが敬遠されそうだが、そこは監督の深い意図を汲んで観るべし。自分が女であることを否定し、性への嫌悪感を募らせていく思春期の女子特有の感情。男子には計り知れないそのモヤモヤが、思わぬ方向へと暴走する。

実は先生の方も、自分が誰から嫌がらせを受けているのかを知っており、両者は次第に女同士の戦いみたいな様相に。そこへ、娘を溺愛するモンスターペアレントがからんでくるので、母性愛について考えさせられたり。確信犯は1人だけで、他の子は無邪気な悪意から。ホラーってそういう無垢なところから生まれるのね。

『危険なプロット』(2012)

作文の添削ばかりで退屈な日々を送っていた高校の国語教師が、文才のある生徒と出会い、彼に小説の書き方を教えていくにつれて、思わぬ事態に巻き込まれていく。

原作が戯曲なだけに、会話中心で無駄がなく、実によく練られた心理サスペンス。日常に存在する狂気や人間が抱えている闇という「見えないけど、確実にそこにあるもの」を浮きあがらせ、たまに独特のユーモアでホッとさせつつ、人間の本質に鋭く切り込んだ監督の真骨頂である。

退屈な教師生活に刺激を与えてくれそうな生徒がいたら、それは魔が差してしまうかも。知的好奇心が仇となり、先生は人生の落とし穴に自ら足を踏み入れてしまった。悪趣味は蜜の味。その生徒は文章だけで先生を破滅させたが、それは先生が勝手に堕ちただけとも言え、いろいろな解釈ができそうなラストシーンに注目。

いかがでしたか?

映画には、主役としても端役としてもいろいろな先生が登場するが、こうしてみると、先生は物語の重要な役割を担っていたり、個性的なタイプが多い。

中でもブッ飛んだ先生は現実ではありえないだけに、映画だからこそ楽しめる存在だ。

また、キャラクターの性格づけとしても、教師という職業はなかなか面白いのではないだろうか。

映画の中で、自分だけの理想の先生を探してみるのも楽しい。

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