高級クラブ付きカジノの前で夜、裸で遊ぶ男児(右下)

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【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】カンボジア南部のビーチリゾート・シアヌークビルが、中国による投資が殺到しここ2年ほどで激変している。

「30年以上カンボジアで実権を握るフンセン首相の後ろ盾は中国。彼は『雲昇』という中国名を持ち、父親はもともと海南島出身の華僑。近年は独裁色を強め国際社会から非難されているが、中国との深い関係があるから強気だ」とは首都プノンペン在住記者。

 シアヌークビル市長はそのフンセン氏の友人といわれ、自ら中国に足を運び投資を呼び込んでいる。とりわけ盛んなのがカジノ誘致で、自国内で賭博が禁止されている中国人観光客を呼び込むためだ。

 街には派手なカジノビルが30棟以上も並ぶようになり、静かなリゾートは一変。海と賭博目的の中国人観光客が急増。中華料理店や中国雑貨店なども多くなり“チャイナタウン化”が一気に進んだ。人口10万の同市に昨年は中国人12万人が押し寄せたとみられる。カジノはさらに増える見込みで、建設計画が70以上あるという。

 街の経済は一気に上向きだが、治安悪化は深刻。今月2日には、中華料理店従業員の中国人が同僚とケンカになり、ナイフで刺殺された。先月26日にも、中国人同士のグループが酒に酔って銃やナイフで乱闘騒ぎ。今年7月、レストランで食事中の中国人4人が狙撃された事件も、犯人はやはり中国人とみられている。同月には、カジノで大負けし、あり金を全部スッてしまった中国人5人組が、別の中国人観光客を身代金目的で誘拐する事件まで発生。

 地元では「まるで自国のように我が物顔に振る舞っている」と中国への反感が高まっている。先月30日には、10代のカンボジア人3人組が中国人襲撃容疑で逮捕。中国人に仕事を奪われたと考える若者も少なくなく、こうした事件は増加している。仕事がないため外国人旅行者を狙ってひったくりをし、日本人も被害に遭っている。

 カンボジアでは麻薬が出回っていて、“ヤク中”になる中国人も多い。地元ウェブメディア「ポストニュース」によると今月1日、薬物で狂乱状態になった中国人が暴れ、警察官を負傷させる事件が発生。薬物の所持や使用で捕まる中国人も相次いでいる。

「投資による経済効果は限定的。中国企業は建設現場の労働者から飲食店の店員まで、全て中国人を使うから、地元にあまり金が落ちない。資本力で圧倒する中国企業にテナントを追われたりして、失業するカンボジア人はむしろ増えている」と冒頭の記者。

 次々と建つリゾートマンションは、建設段階から中国人投資家の投機対象となり、相場以上に値上がりするバブルの様相を呈している。また、きれいなビーチが建設資材などで汚染されるという問題も。「このままでは中国にのみ込まれてしまう」と地元民の危機感は強い。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「おとなの青春旅行」(講談社現代新書)。