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持ち家か? 賃貸か? 住まいは一生を左右する買い物だけに、選択に迷う人も多いだろう。そんな中、「マンション購入は早いほど得をする!」と断言する人がいる。会員数23万人を超える分譲マンション価格情報サイト「住まいサーフィン」を運営、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』などの著書もある沖有人氏だ。
4人に1人が「生涯未婚」の時代、「一生賃貸でかまわない」という人が、一体どんな末路をたどるのか? 沖氏はこう警鐘を鳴らす。

「一生賃貸派」の末路

「家を買うのは結婚してから」という通念が変わらないまま、4人に1人が生涯未婚という時代に突入すると、「一生賃貸派」が大量に増えることになりそうだ。

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だが高齢者になると、現役時代と同じようには賃貸物件に入居できなくなってしまうという現実がある。賃貸入居には審査がある。そして高齢者の「審査落ち」はすでに社会問題化している。

高齢者が賃貸住宅を借りる場合の最初の関門は、入居時の家賃保証の問題だ。

20世紀の間、賃貸住宅に入居する際は、親や知人などに連帯保証人を頼むのが一般的だった。そうすることで家主は、借り手が家賃を滞納した場合には、保証人に対して取り立てを行うことができた。そのため保証人はちゃんとした職を持ち、社会的信用のある人に限定されていた。

しかし21世紀に入ると連帯保証人に代わり、専業の家賃保証会社が入居者から保険料を取り、滞納が出た場合に家主に対して家賃を立て替え払いする仕組みが確立された。今では新たな賃貸契約の7割以上が家賃保証会社を利用しており、残りが連帯保証人になる。

高齢者の場合も賃貸住宅に入居する際は家賃保証会社を頼むことになる。

しかし家賃保証会社は高齢者を嫌がる。

日本賃貸住宅管理協会による家賃債務保証会社の実態調査によれば、大家が拒否感を示す入居者の属性として、第一が障害者のいる世帯、第二が単身の高齢者、第三が外国人となっている。

単身高齢者は一人親世帯より、生活保護受給者並みに嫌われている。年代別審査状況の結果を見ても、年齢が高くなるほど入居審査を通りにくくなっていることが窺える。

なぜそうなるのか。

直接的理由としては、リタイア世代は現役世代に比べて年収が低いということがある。家賃保証会社は一定以上の収入がある人に対してはおおらかだが、所得が低い人に対してはきわめてシビアなのだ。

銀行預金の残高証明書など、それなりの資産があることを証拠として見せたとしても難しく、相続税を支払うほど資産がある人でさえ保証を断られてしまう。

このようなことになる背景には、高齢者の85%が持ち家に住む日本社会において、借家住まいを続ける単身高齢者が少数派ということがあるのかもしれない。

理由はともかく家賃保証会社で審査落ちとなれば、家主のほうも賃貸契約を拒否することになる。

そうなると連帯保証人を立てるしかないが、これは現役世代に限られる。大企業に勤めている息子でもいればいいが、独身で子供がいなければそれもできない。

高齢者は家主に嫌われる

家主のほうも高齢者は嫌がる。

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これは「貸した部屋で死なれたら困る」という頭があるためだ。高齢者は居室内で死亡する確率が高く、単身だと発見が遅れる場合も多い。

死体が腐乱すれば異臭が発生し、遺品の処理なども面倒なことになる。

しかも人が死んだとわかれば、その部屋に入居したがる者は少なくなってしまう。

このような実態を改善すべく、2017年10月に「住宅セーフティネット法」が改正施行された。国土交通省ではこの法律に基づき、家賃補助や改修工事への補助と引き換えに、所得の少ない人やお年寄りなどの「住宅確保要配慮者」の入居を断らない賃貸住宅を、「セーフティネット住宅」として登録している。

だが補助を担う自治体は財政難から支援に及び腰で、目標である「2020年度に15万5000戸」に対し、制度開始から半年の時点で登録された賃貸住宅は600戸強に留まっている。目標達成率0.4%という状況だ。東京都では登録ゼロなので、今のところまったく役に立っていない。

国土交通省では将来的に50万戸のセーフティネット住宅登録を見込むが、実現の見込みが立っていないのが実情だ。

試算では、借家率が変わらないシナリオでさえ、東京都だけで高齢者の借家世帯数が10万増え、生涯未婚率分借家率が上昇するシナリオに至っては、70万近い高齢者の借家世帯数が増えるのだから、審査落ちする高齢者の自宅難民が続出する可能性がある。

現状で保証人が立てられない人へのセーフティネットとなっているのが、UR(独立行政法人都市再生機構)の賃貸住宅である。

URは民間と異なり国籍不問、職業不問で入居させてくれる。保証人、礼金、仲介手数料、更新料の「4つの『なし』」を売り物にしており、入居審査も比較的緩い。

誰でも入りやすい分、URには低収入の住民が多い。外国人や夜に働いている人も多く、治安や住環境はよいとは言えない。

またURの場合、もともと家族向けの団地だった物件が多く、平均して面積が大きく、その分、家賃もそこそこ高く設定されている。それほど面積を必要としない単身者にとっては割高感がある。

生活保護受給者を対象とした賃貸物件もある。

生活保護受給者には一定額の家賃分の住宅扶助が支給される。扶助の金額は地域や世帯の人数により異なり、東京23区の単身世帯であれば、4万900〜5万3700円となっている。

これは毎月、自治体から振り込まれるので、その直後に家賃の自動振替を行うよう設定しておけば、家賃の取りはぐれがない。そうした賃貸住宅では生活保護を受けている人を優先的に入居させている。

ただしそうした物件も住居としてはプアなアパートである。家賃が住宅扶助の上限を下回ることが前提となるからだ。現役時代にそれなりの収入を得ていた人にとっては、住環境が大きくグレードダウンすることになる。

高齢になってもまともな賃貸住宅に住めるのは、定年を過ぎても十分な所得がある人に限られるのが実態だ。

今さら実家に戻れるか?

今、東京・大阪・名古屋の三大都市圏に住む人の多くは、戦後に地方から移住してきた人たちとその子供世代、孫世代である。

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高度成長期の地方の農家では、長男が家を継いで実家に残り、次男・三男は家を出て上京するケースが多かった。都市に移住したのは、そこに仕事があったからである。

この人の流れは今も続いている。地方から都市への人口流入量が多くなるのは、地方で有効求人倍率が低く、都市部で高い時期と重なる。2018年現在は景気が好調で人手不足が取り沙汰される状況で地方でも求人倍率が高いため、地方から都市への人口流入は頭打ちとなり始めている。

地方から上京した単身者は、最初は会社が用意してくれた寮や単身者用のアパートに住み、結婚したら社宅か家族向けの賃貸住宅に移り、子供が大きくなってきたら住宅ローンを組んで通勤圏内に家を買う、というのがパターンだった。かつて言われた、庭付き一戸建てを「上がり」とする「住宅すごろく」である。

いずれにせよ二度と実家に戻ることはない。上京はいつの時代にも片道切符だった。

高度成長期までは単身者の多くは実家が地方にあったが、今は世代交代が進み、通勤圏内に両親が買った実家があるという人が多くなった。

そのようなわけで、今の単身者の半数は実家で親と暮らし、半数は実家から離れて一人暮らしをしている。

実家が地方にある場合はもちろん通勤圏内にあったとしても、一度家を出た子どもが親のいるうちに実家に戻ることは難しい。家族の誰かが同居をやめたら、帰ってくることはない前提で取り扱われるようになる。

私自身も親元を離れて久しく、実家には今も私が使っていた部屋はあるが、完全に物置と化している。自分が高齢になり定年を迎えたからといって、今さら実家に戻ることはできない人が少なからずいるだろう。

単身者が高齢で要介護状態となった場合は、一人暮らしは無理になるので、介護施設に入居することになる。

コストパフォーマンスが高いのは特別養護老人ホーム(特養)だが、それだけに非常に競争率が高く、普通はまず、すぐには入れない。

その他の選択肢としては民営の有料老人ホームがある。有料老人ホームは実際に要介護状態になっていなくても、健康なうちから入居可能だ。

ただし入居金だけで数百万かかり、入居後も毎月数十万円の費用が必要になるため、多くは企業年金で入居費をまかなえる人が入居しており、持ち家もない単身者には高嶺の花と言ってよい。

結局、高齢になって持ち家がないと、まともなところには住めないということだ。

「2人に1人がおひとりさま」の人生100年時代。マンション購入は早いほど得をする!