NHKは、2019年後期の連続テレビ小説『スカーレット』のヒロインに、女優・戸田恵梨香が決定したと発表した。

「陶芸は21歳のときに興味を持ち始めました。石垣島で趣味程度に楽しんでいて、自分で焼いたお茶わんでご飯をいただいています。本気で修業して、極めていけたら」

 と戸田は会見で抱負を語っていた。

 ドラマのモデルは、滋賀県の陶芸家・神山(こうやま)清子さんだとされる。実は、神山さんは「日本骨髄バンク」設立に大きく貢献した人物として有名だ。きっかけは、長男・賢一さんが、白血病で余命2年半と宣告されたことだった。

「1990年2月、息子の29歳の誕生日の直後でした。ショックでした。でも、3日ほどですぐに気持ちを切り替えました。こんなことをしていてはダメだ、もし、この子が長くは生きられないのなら、母親としての役目を精一杯果たそう。そう決心したんです」

 神山さんは、『週刊エコノミスト』(2005年2月8日号)のインタビューでこう語っている。

 1985年、女優・夏目雅子が白血病により27歳で亡くなったこともあり、世に白血病の怖さは知られていた。しかし、当時は公的な骨髄バンクはなく、民間団体しかなかった。

 神山さんは、賢一さんを救うため、知人らとともに「救う会」を結成。募金とともに、4カ月で3000人近くのドナー希望者が集まったが、適合するドナーはなかなか見つからない。

 その後も、賢一さんを会長として「骨髄バンクと患者を結ぶ会」を設立し、募金活動を進めるが、ここで予想外のことが起きる。

「最初は、賢一だけのために血液を集めるという話でした。ところが、名前を公表したことで、うちの子供も救ってほしい、募金を使う権利はわれわれにもあると、全国の患者さんの名前とHLA(白血球の型)のデータが私たちのところに送られてきたんです」(同上)

 神山さんたちは活動を続けるが、借金は増え続け、結果、1991年、公的な日本骨髄バンクの設立につながっていく。

 だが、ドナーの適合は非血縁者で数百から数万人に1人と言われる。賢一さんは適合するドナーが見つからず、1992年に31歳の若さで亡くなってしまう。

 賢一さんは「僕で終わりにして」と遺言を残したが、神山さんは現在も患者とドナーを結びつける活動を続けている。

 神山さんは、別のインタビューで、「募金をお願いしていると、土下座せよと言われた。助けてやっているというのが当時の風潮。患者には残酷な状況だった。骨髄バンクはドナーと募金がないと続かない。たくさんの人の思いでできた骨髄バンクを大切にしたい」(河北新報、2005年8月27日)とも語っている。

 ちなみに、ドラマのタイトルとなる「スカーレット」は、黄色みのある赤色のこと。そんな情熱的な主人公を、戸田恵梨香が演じることになる。