iPhone XS Maxより便利?全世界で使えるLTE+衛星スマホが登場
普段日本で生活しているとスマートフォンの電波の圏外エリアに出くわすことはあまりないでしょう。おそらく本格的な登山で山登りしたときや、長距離フェリーかクルーズ船に乗った時にドコモなどの電波が入らないといった経験をしたことがある人もいるかもしれません。

世界中の携帯キャリアはお互いローミング提携しているので海外へ行っても自分のスマートフォンを使うことはできますが、携帯キャリアのアンテナからの電波が届かない場合はお手上げです。ところがそんな「携帯圏外」でも使える端末として、衛星電話があります。

この衛星電話は通話とメッセージ専用機が長らく販売されていましたが、最近になってAndroidスマートフォンに衛星電話を搭載した製品も出てきました。イリジウム衛星を使う「Xplore X7」はその1例です。

衛星電話サービスを展開している衛星キャリアはこのイリジウムの他に、インマルサットやスラーヤ(Thuraya)、エイセス(ACeS)、さらに日本のワイドスターなどがあります。この中でも中東ベースのスラーヤは着々とエリア展開を広げ、現在はアメリカ以外のほぼ世界中で利用できます。そのスラーヤからいよいよAndroidスマートフォン「X5-Touch」が登場します。

X5-TouchはスラーヤとLTE/W-CDMA/GSMの衛星+携帯に対応するスマートフォンです。本体サイズは145 x 78 x 24 mm、重量は262g。厚く重いのは衛星電話のモデムや大きいアンテナを内蔵しているためで、屋外での使用が多いことからIP67の防水防塵とMILスペック(810G)にも対応する強固なボディーを採用しています。なおスラーヤの衛星を使うときは本体に収納されている衛星アンテナを伸ばして使います。



主なスペックは5.2インチ1980x1080ピクセルディスプレイにSnapdragon 625、RAM2GB/ROM16GBに800万画素カメラ+200万画素フロントカメラ。バッテリーは3800mAhでOSはAndroid 7.1になります。スマートフォンとしてのスペックは2世代前といったところですが、日々バリバリ使うメイン機というよりも、地球上のあらゆるところでコミュニケーションを図る無線機としてアプリを入れて活用する、という位置づけの製品でしょう。

Android OS搭載のスラーヤ端末ならではの機能がDSDS。ナノSIMスロットを2つ搭載し、「スラーヤSIM+携帯SIM」として使えるそうです。衛星電話と携帯回線の同時待ち受けはおそらく世界初。街中では高層ビルなどがあると衛星をなかなかつかめませんが、携帯キャリアの電波はバリバリはいります。一方山岳地に入れば衛星はいつでも受信OK、携帯キャリアの電波ははいったりはいらなかったりします(山頂に近づくにつれつながらなくなったり)。しかしこのX5-Touchのように衛星+携帯のDSDSなら、いちいちどちらかのSIMに入れ替えることなく、常に連絡を取ることができるというわけです。



なおスラーヤが打ち上げている人工衛星はアメリカをカバーしていませんが、スラーヤのSIMのままアメリカの携帯キャリアへのローミングができます。またこのX5-TouchのLTE側SIMスロットにアメリカのSIMを入れて使う方法もあります。

気になるネットワーク周りは、LTEがB1/B3/B5/B7/B8/B20/B40/B41ということで必要最小限。最高通信速度は300Mbpsです。一方スラーヤ回線はGmPRS(Geo Mobile Packet Radio Service)に対応。速度はDL60kbps/UL15kbpsと低速ながら、山頂でもデータ通信が可能です。SNSで連絡を取り合うくらいなら十分使えるでしょう。料金はもちろん高めですが、未開の地の探索時もX5-Touchがあれば緊急連絡が取れる安心感があります。



X5-Touchの本体価格はVAT抜きで999ポンド(約14万5000円)、12月から販売予定とのこと。なお日本での利用は衛星電話に関して「日本で認可を受けた事業者が販売する端末のみ利用可能」のため、X5-Touchが日本で正規販売されないと使えません。しかし海外へ出るなら海外購入+スラーヤのプリペイドSIMで使うことができます。10万円超えの価格は高く感じますが、iPhone XS Maxにアップルケアを付けると15万円近くしますからあまり変わりません。世界を旅する人なら購入を検討してもいいかもしれませんね。