切っても切れないのが親子の絆、血のつながり。しかし世の中には、そして映画の中には、血縁はなくとも家族を超える絆を育む他人同士もいる。それが親子ほどの年の差、あるいはそれ以上に年の離れた者同士がつながる、稀有な物語もある。

今回は「大人と子ども、他人同士にも関わらず育まれる強い絆」が、観る者の心を打つバディ映画5本をご紹介しよう。

パーフェクト ワールド』(1993)

1963年、テキサス。刑務所を脱走したブッチ(ケヴィン・コスナー)と相棒テリーは逃避行のさなか、8歳の少年フィリップを誘拐し人質にとる。はじめからソリが合わない2人だったが、とうとうブッチはフィリップに危害を加えようとしたテリーを殺害してしまう。

父親の愛を知らずに育った逃走犯ブッチと、複雑な家庭環境で育った少年フィリップの間には奇妙な友情が生まれ、2人は逃亡を続ける。一方、かつてブッチを刑務所に送った州警察の署長レッド(クリント・イーストウッド)が2人を追っていた……。

ケヴィン・コスナーとクリント・イーストウッドという2大スターがタッグを組んだロードムービー。クリント・イーストウッドが監督も務めている。

ブッチとフィリップは、どちらも父親の愛に飢えている。被害者が犯人と長時間ともに過ごすことで好意や親近感を持つ心理作用を「ストックホルム症候群」と呼ぶが、それに似て、この2人の間にも確かなシンパシーが生まれていく。

ロクデナシの父親から届いた絵はがきをずっと大切に持ち歩いているブッチの孤独といじらしさに胸を掴まれる想いだ。

『レオン』(1994)

ニューヨークで孤独に暮らす寡黙なプロの殺し屋レオン(ジャン・レノ)は、隣室に住む少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)と知り合う。実父と義姉から虐待を受けている12歳のマチルダにとって、幼い義弟マイケルだけが唯一心の癒しだった。

ある日、麻薬密売組織の商品を横領したことがバレたマチルダ一家は、組織を裏で牛耳る悪徳刑事スタンフィールド(ゲイリー・オールドマン)に惨殺される。運よく難を逃れて帰宅したマチルダは、隣室のレオンに助けを求め、そこから2人の奇妙な共同生活が始まる。

リュック・ベッソン監督の人気を不動にした名作であり、ジャン・レノとナタリー・ポートマンの出世作。

19歳から冷徹な殺し屋として生きてきたレオン。仕事終わりに入った映画館で食い入るようにスクリーンを見つめる姿や、マチルダとゲームをするときの無垢な表情など、見た目はオジサンなのに、端々に可愛らしさを感じさせる。そう、彼はオジサンの姿をした少年なのだ。

劇場公開されたのは、一部から「刺激が強い」「不健全である」と指摘された、レオンとマチルダが愛の言葉を交すシーンなどがカットされたオリジナル版。22分の未公開シーンを加えた完全版では、2人のプラトニックな関係性を見ることができる。

愛を知らない孤独な2人が共に過ごしたのはたった2週間。年の差を超えた純愛は、観る者までも純粋な心の境地へと引き込む。

『セントラル・ステーション』(1998)

リオ・デ・ジャネイロの中央駅で、代書業を営む老女ドーラ(フェルナンダ・モンテネグロ)のもとに、幼い息子を連れた女性が夫への手紙の代筆を依頼にくる。ところが、手紙を書き終えた後に依頼主であるその女性は事故で亡くなり、ドーラは一人残された9歳の少年ジョズエ(ヴィニシウス・オリヴェイラ)を家に招き入れ、父親のもとへ行かせようと共にバスで旅に出る。

ひねくれ者の老女と母を失った少年が父親探しの旅に出るブラジル発のロードムービー。1998年のベルリン国際映画祭で金熊賞と主演女優賞の2部門を受賞した。

もともと優しくもない、小さな悪行を重ねて生きてきたイジワルな老女だったドーラ。しかし、少年との旅を通じ、共に良いことも悪いことも体験・共有して、距離を縮めて行くことで、心に変化が生まれてくる。

ラストは、ブラジルの闇もとらえながら、そんな中で徐々に育まれていく絆が導く美しいシーンへ。まさに、小さな旅が大きく人生を変えた奇跡。一見の価値がある秀作だ。

『キッド』(1921)

ある日、いつものように街を散歩していたチャーリー(チャールズ・チャップリン)は、街頭に捨てられた赤ん坊を見つける。抱き上げた彼の前を通りかかった警官は、彼が赤ん坊を捨てにきたと勘違いして目を光らせる。

仕方なく彼は、その赤ん坊を自分のボロアパートに連れて帰り、育てることに。そして5年の歳月が流れ、ジョンと名付けられた少年(ジャッキー・クーガン)はチャーリーの仕事を手伝うようになっていた。

1921年公開。チャップリンが製作・監督・脚本・音楽・主演を手掛けたサイレント映画の名作。彼の初長編作であり代表作のひとつだ。

貧しい中でも笑い合い、食事を半分ずつにして小さな幸せを分かち合う2人。1時間にも満たない作品の中に、笑い、悲哀、そして愛が詰まった優しい世界が広がる。天才チャップリンが描く愉快さと哀愁を味わえる珠玉の一作。

『アウト&アウト』(2018)

元ヤクザの矢能(遠藤憲一)は、両親を亡くした少女・栞(白鳥玉季)と2人で探偵事務所を営んでいた。ある日、1本の依頼電話が入り指定された場所へ行くと、依頼主は銃で撃たれて亡くなっていた。矢能は罠にはめられ殺人の容疑者にされてしまう……。

映画『藁の盾』の原作者きうちかずひろが原作・監督・脚本を務めるクライム・エンタテインメント。

矢能が娘のように大切にしているのは、血のつながりのない訳アリ小学2年生の少女・栞。無愛想だが心優しい元ヤクザの私立探偵と小学生の女の子が、巻き込まれた事件に果敢に挑む異色のバディ・ムービーだ。

しっかり者の女の子が強面の矢能を説教する、思わずほのぼのするシーンも。2018年11月16日(金)から公開中。

最後に

血のつながりを超えた絆を描く素晴らしい映画は、今回紹介した他にもまだまだある。寒さが増すこれからの季節に、心から温まるバディ映画を楽しんでみてはいかがだろうか。

(C)2017「アウト&アウト」製作委員会

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