フィギュアと彫刻は違うのか? 彫刻家と造形家のリアルな仕事現場から考える。
2018年、日本。私たちは「彫刻」に囲まれて暮らしている。へえ、そう? と、意外に思うだろうが、考えてみてほしい。町中には銅像がたくさんあるし、旅行や法事で仏像を拝む機会も少なくない。フィギュアなども彫刻に含めれば、目にしない日の方が珍しいかもしれない。だから、私たちはもっとよく知るべきだ。彫刻の楽しみ方を。

5回にわたり彫刻について考える本特集、今回は彫刻家の小谷元彦さんと造形家の竹谷隆之さん、トップクリエーター2名によるスペシャル対談。竹谷さんの仕事場にお邪魔して、作品の制作秘話から仕事に欠かせない金銭的な交渉まで、作家のリアルな仕事ぶりについて伺いつつ、「フィギュアと彫刻の違い」という、身近だけれど曖昧な問題に切り込んで頂いた。
小谷元彦/美術家・彫刻家 (左)
1972年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科准教授。ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館 (2003年)への出品や森美術館(東京)での個展「幽体の知覚」(2010年)の他、国内外での展示多数。
竹谷隆之/造形作家 (右)
1963年、北海道生まれ。1980年代より造形作家として活動、「仮面ライダー」などのフィギュア原型から映画「シン・ゴジラ」などの美術デザインまで、幅広く手掛ける。NIKEのマーク・パーカーCEO他、海外のファンも多い。
「いきなり細かい話ですが...」

――今回のテーマは「フィギュアと彫刻の違い」ですが、まずはお二人の普段の仕事内容・制作過程について伺っても良いでしょうか。

小谷 
竹谷さんに聞いてみたいなと以前から思っていたんですけど、原型作るときに左右の半分しか作らないって、本当なんですか?それをスキャンして反転させて完成させてるっていうのを何かの記事で読みました。

竹谷 
ああ、それはよくやりますね。

小谷 
やっぱりそうなんですね。いや、画期的な制作を手段を試されていると思って。

竹谷 
最初はすごく周りにバカにされたんですけどね。「半分やるなら全部やればいいじゃん」って(笑)。

小谷 
でも、半分だけでちゃんとした形を造るのって、逆に難しくないですか。鏡にくっつけて全体像を確認しながらの作業ってことですよね?

竹谷 
最初に多少の苦労はありましたけど、慣れたら大丈夫ですよ。あと、確認には鏡ではなく、磨いたステンレス板を使いますね。鏡だと銀面とガラス面があって、ガラスの厚み分どうしても隙間が空いて見えてしまうので。

小谷 
形を理解するのが難しそう(笑)。 Zブラシ(3DのCGを制作するソフトウェア)なんかはあまり使われないんですか?十数年前「スカパー!」で竹谷さん密着の制作ドキュメンタリーを見たのですが、その時に粘土の塊にスパチュラで頭部を造っていく作業が、Zブラシで頭部を造っていく過程とすごく似てると感じていました。

竹谷 
作業が楽になるかなと思ってZブラシも習ってはみたけど、自分はむしろ手でやった方が早いということが分かって、今は必要なときに人に頼む感じですね。

竹谷さんは画面右側のようなデザイン画を描き、画面左側に見えるような3DCGデータの制作は外注する。
その後、上がって来たデータに竹谷さんは修正点を書き加え、ブラッシュアップしていく。

竹谷 
小谷さんはZブラシ使いますか?

小谷 
制作で使ってますよ。Zブラシ2から使い始めたので、それ以前はMaxってソフトからの出力をしてました。2002年からでしょうか。時期的には世界的に見ても他の人より遥かに早かったかと思います。しかし、初期の頃はとても有機物を扱えるようなソフトではなかったですね。3DCGはすごく面白いことができそうな反面、最初は何だか危険が潜んでいそうな気もしてました。やっぱり、コンピュータ上のシミュレーションで物を見るっていうのは、形を理解する上ではいいんですけど、結局画面の中は無重力じゃないですか。自分の足が地に着いていない状況での確認は、手応えのあるソフト(freeform)でもかなり疑似的で、そこは結構不安に感じました。

竹谷 
3Dデータの場合、画面の中で見ていた物を出力してみてようやく「ああ本当はこうなってたのか」みたいに気付くことってありますよね。

小谷 
ありましたね。こんなはずじゃないのに、みたいな。でも今はむしろコンピュータを使うと、自分が想像していない形が出てきたりする、エラーを含めてそれが面白いと思ってます。例えば、ソフトの機能で制作中のデータの一部をパッと隠すというか、透明にすることができるじゃないですか。そうして一部分がゴッソリ見えなくなったとき、不意に「ん? これ良くね?」ってなることがよくあるんです。手作業だと制作中の頭を一部ボコっとなくすなんてなかなかできないけど、CGだと簡単で。ミスしてデータを一部消しちゃったときにも、「しまった!」と思いきや「良いかも」ってなったりします(笑)。

竹谷 
ははは。僕のイメージだと、コンピュータは命令したことしかやらないような気がするんだけど、そういう偶然性も利用してやれるんだったら、それはそれで魅力的ですね。

小谷 
命令するどころかむしろ、たまにコンピュータの計算にこっちが従ってるみたいな気がしますよ。あっちの演算力が、こっちの脳内イメージの演算を越えていきますからね。ある意味、自分のイメージを壊すためにコンピュータを使ってる感じですね。自分の手では崩せない範囲まで、コンピュータなら崩してくれる。

T字カミソリは、地球外テクノロジーっぽい

――小谷さんの作品では、国立新美術館(東京)での「JOJO展」出品作でも像の部分的な欠損が印象的でした。馬の胴体がバッサリなくなっているような、あれも偶然の産物なのでしょうか?

《Morph》(展示の一部)
ⒸMotohiko Odani, Courtesy of YAMAMOTO GENDAI /Ⓒ荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社/ 荒木飛呂彦原画展JOJO冒険の波紋(東京会場)/Photo:Kei Okano

小谷 
偶然性は重要にしているけど、あれは最初から胴体なしでやるつもりでいましたよ。胴体なんか造っても面白くないし、そもそも造るの大変だし(笑)。

竹谷 
見る側への効果としても、欠損してる方が想像力が働くっていうのはありますしね。でも、偶然性というのは、別にCGに限った話ではないですよね。粘土に適当に貼り付けてみた素材が「おお、いいじゃん!」みたいなことってよくないですか?

小谷 
確かにそういうのもありますよね。粘土は粗付け状態が特にいいです。そういえば、竹谷さんはいろんなパーツを引用して造形物を組み上げるような制作は最近もやってらっしゃるんですか?

竹谷 
やってますよ。1番最近のだとこれですかね。今年の1月〜2月に上野の森美術館で開催された、生頼範義さん(「頼」は異字体)の回顧展に合わせて造ったやつです。生頼さんの原画を元に、T字カミソリ、ガンダムの足などのプラモデルのパーツ、ツボ押し棒、などなどいろんな物を流用して造っていますね。

《ベガ》 造形:竹谷隆之 原画:生頼範義 デザイン画:寺田克也 写真: 竹谷隆之

小谷 
いいですねぇ。結構大きいんですか、これ?

竹谷 
足元から上の先端までで1メートル以上はありますね。

小谷 
これって、現代美術の用語でいうと“アッサンブラージュ”って手法ですよね。美術以外の場所でこういうオブジェの扱いは映画「スターウォーズ」が有名ですが、既製の物を自分の造形物に取り入れて作るっていうのを日本のフィギュア業界で平然とやっていたのは竹谷さんや韮沢靖さんだったような気が僕はします。その辺りってどうですか?

竹谷 
んー、子どもの頃からやってはいましたが、僕が成人した頃には小林誠さんや横山宏さんがすでに高度な域に達していましたね。

小谷 
とにかく、竹谷さんはアッサンブラージュのやり方がすごく上手い。文脈が違う現代美術の人がやるときは、サイズが大きいせいもあるのか、もう少し形がバタバタしている方が好まれますけどね。例えばピカソのアッサンブラージュなんかは、もう少しラフというか遊びがあるというか、扱われた物質の固有名詞が残るようなつくりを意図的にしています。竹谷さんのこれは、もう、言われなきゃ分からないレベルですよね。

竹谷 
手法については、形が合っていて使える物は使うというだけで、僕はそこまで深くは考えていないですけどね。もし誰かカミソリだと気づく人がいても、その人も「へーそういう使い方があるのか」と思って面白がってもらえたら嬉しいなというのはあります。

――竹谷さんは、美術の文脈などは特に意識されないですか?

竹谷 
しないですね。純粋に形としてのT字カミソリの曲線がこの作品のマナーに合っている、というだけです。一見何のための形なのか読み取りづらい不思議さがあるので、地球外テクノロジーみたいなものに合わせるには都合が良かったんです。人間くさい造形にするなら、ヒンジやリベットなんかがあるといいんですけど、この作品にはT字カミソリの曲線がちょうど良かった。

小谷 
いやはやしかし、この破綻のなさは本当にすごい技術ですね。これは既製品だけでできているわけではなく、ご自身で造ったような部分もあるんですかね?

竹谷 
顔のベースなんかは自分で造ってますね。全部を材料探して作ろうとすると大変なので。ベースをパテや粘土で作って、パーツを嵌めていくという手順です。あと、生頼さんの絵をそのままのバランスでトレースするのではなく、寺田克也がリデザイン画を描いてそれを元に造形するという企画だったので、特徴的なチューブの位置など、原画の中の大きい要素は踏まえつつ、あとは自分の感覚でアレンジして造り直したという感じですね。

90年代初頭、フィギュア界に衝撃が走った
竹谷さんの《Metamorphosis Addict》(「月刊ホビージャパン」1992年3月号掲載)は、変身常習者のバッタ男。当時の本人解説には次のように書いてある。「その昔悪い人達にバッタ男に改造されてしまいまして、運良く逃げ出したまでは良いのですが、すっかり変身薬漬けになっているので、無性に変身したくてしょうがありません。今ではクスリの量もかなり増え、1本や2本じゃ変身しきらなくて大変です。」

小谷 
僕が竹谷さんの仕事で最初に大きな衝撃を受けたのは、92年の「月刊ホビージャパン」掲載の作品でした。キャラクター背後の物語の再設定も、形の再解釈による造形も斬新。この頃は美少女フィギュアの造形が加速度的に進化していくような傾向はありましたけど、こういう骨とか筋とか、解剖学的なものを表皮に出すっていうのはなかった。美少女フィギュアのような"虚構の実体化"とは違って、虚構を取っ払うリアリズムの提案だった。
僕は竹谷さんの作品を見て「これは…!」って驚き、本当に汗が出ましたよ(笑)。この頃から現在まで、こうした生物的な造形の系譜は続いてきているわけですけど、当時のあの衝撃っていうのは、モデリング素材として「スカルピー」(オーブン粘土。商品名「ポリフォームスーパースカルピー」)が発売されたことがとても大きかったような気がします。その辺りのお話を伺ってもいいですか?

竹谷 
確かに、スカルピーが出てきたときは革命的でしたね。相当面白がって使っていました。線描写が細かくできるし、焼かないと固まらないから時間的な制約もない。しかも固めた後でも削って修正ができてしまう。「これはいろんなことができるなあ」と興奮したのをよく覚えてます。

小谷 
スカルピーによる繊細な細い線や表皮の生々しいテクスチャーは、それまでのポリパテや石粉粘土なんかでは出せなかったですよね。僕もスカルピーが出た頃は少し使ってみたんですけど、大きい造形にはあまり向かないので今はほとんど使ってません。似たような素材もたくさん出てきましたが、竹谷さんは今でもスカルピーを使うことが多いですか?

竹谷 
そうですね。自分の造るものには合っているので。まあ、クレオスという日本の粘土メーカーと一緒にスカルピーに近い素材の開発をしてまして、実際にはそれを使うことが多いですけども。映画「シン・ゴジラ」の原型制作作業をしてた時は、ちょうどこの粘土の開発時期だったのでサンプルをもらって使っていました。

楽をするのも仕事のうち?

竹谷 
シン・ゴジラの時は、表皮のテクスチャーを造る専用の道具も作ったんですよ。ゴジラって全体がゴーヤみたいに凹凸のあるテクスチャーじゃないですか。あれ全部を普通のスパチュラでやろうとするとかなり面倒です。そこでスタンプみたいなものを作っちゃおうと思い付いて。そうすれば他の人に作業を頼みやすいし。実際、「シン・ゴジラ」もステンレス板に左半分を自分で作って、監督たちのOKが出た後、残りの半分は数人で寄ってたかって作業しました。

シン・ゴジラの表皮のテクスチャーを再現してくれた。使っている道具は、シン・ゴジラ制作時に作ったスタンプを改良したもの。左が第二形態の表皮、右が第四形態の表皮。

竹谷 
造形を仕事としてやっていく上で、どこに労力を割くかっていうのは結構大事な問題ですよね。何かそういう工夫ってあります?

小谷 
僕もありものをそのまま作品に使ったりはしてます。例えば《SP4 the specter》って作品は日本の近代彫刻にアプローチしてるのですが、馬の頭部は頭骨を買ってきて、それにそのまま油土で復元模型と同じように肉付けをして作ってますね。馬の顔をじっくり見て観察するのも手間だし、本物の骨に肉を付ければ間違いないだろうと思って。道具の発明は作品のコンセプトにもなり得ますね。

《SP4 the specter  - What wanders around in every mind》© Motohiko Odani Photo by Keizo Kioku Courtesy of YAMAMOTO GENDAI

竹谷 
これだけ大きいと、イチから作るのは大変ですよね。しかしこの「中途感」、いいですね。骨格に肉を付けていって、表皮まで作らずに途中で止めると、どの段階でもなんかかっこいい…。胴体も何か元になるものがあったんですか?

小谷 
いや、胴体だけは何もなくて1からやらざるを得ませんでした。全身の骨買おうとしたのですが、なかなか見つからなくて。この手の物は、自分の手でやることはもう一生ないですよ。こんな大きいのはね、しんどいです!

竹谷 
ははは。

―― 「大きいからこそやりがいある!」なんてことは…?

小谷 
全くない! 大きいのをやるとゴミの出る量も多いし、お金かかるし、人手もいるし、場所もとるし、ずっと視界に入ってくるから目を開けているのも嫌になる(笑)。

彫刻とフィギュアの違い、越境者としての成田亨

―― おふたりの仕事の様子が非常に生々しく見えてきました。ここで一度立ち止まって、彫刻とフィギュアという2つのジャンルの関係性について、改めて考えてみたいです。どちらも隣接した領域のような気がするのですが、何か決定的な違いなどはあるのでしょうか。

竹谷 
私の場合、両者の違いや垣根というのはあまり考えないようにしてます。自分はどちらでもなく、「造形」という分野で仕事をしているつもりですし、あまり気負って考えたことはないですね。もちろん、オリジナルの表現なのか商業美術なのか、といった違いはあると思いますが...。

小谷 
簡単に言い切るのは難しいですが、似て非なるものだと思いますね。少し詳しく話すと、彫刻というジャンルは、巨大な鉄の抽象彫刻から、造らない彫刻作品としての"レディ・メイド"、彫刻としてのパフォーマンスまで、幅広い考え方の中にあります。さらに歴史的に素材も多種多様に変化してきて、現代の彫刻では常に作品を取り巻く「空間の概念」が重要になっている。彫刻家はそうした知識を踏まえつつ、形やビジュアルそのものというよりは、作品の背景やそれが生み出す身体的な体験のことを考えて制作しています。一方のフィギュアは、オブジェクトにフォーカスし、原型だけでなく塗装も絶対的なファクターである、というあたりは大きな違いでしょうか。ファンの目を含め、細部のチェックが非常に厳しく、それゆえ高度な完成度が求められる。また、美少女フィギュアの進化には、競争の原理が働くためなのか、日本人の集合知性みたいなものを感じます。エロティシズムの取り込み方、2次元のオリジナルを3次元に解析していくことなど、かなり高度な次元まで昇華されていますよね。

―― なるほど。非常にざっくりまとめれば、彫刻は表現の幅広さとコンセプトが特徴的、フィギュアはより職人的な技術力の高さが特徴的ということでしょうか。

小谷 
はい、フィギュアの方が日本古来の工芸的要素が強いと思います。ただ、現場の視点ではなく、はたからどう呼ぶかとなると結局、見る人の捉え方やボキャブラリー次第のところはありますね。この問題を考える上で有名な例として、「ウルトラマン」シリーズなど特撮のキャラクターデザインを手掛けた成田亨さんについて掘り下げる価値はありそうです。成田さんは美大の彫刻科を出た人で、最後まで自分は「彫刻家」であるという立場を貫いていた人です。だから、実は「ウルトラマン」の怪獣や怪人のデザインには、当時の現代彫刻のエッセンスがかなり取り入れられていたんですよね。例えば、ウルトラ怪獣の"ウィンダム"なんかはアントワーヌ・ぺヴスナーとかナウム・ガボとか、ロシア構成主義の彫刻のニュアンスが色濃く出てます。特に目の周囲の造形に顕著ですね。成田さんは彫刻というジャンルの幅広さを知っていたからこそ、こうした造形を産み出せたのだと思ってます。

「ウルトラセブン」に登場する怪獣。(左:キングジョー 右:ウィンダム)

竹谷 
アフリカ彫刻の影響なのか、面取りも独特です。

小谷 
ドゴン族のお面なんかを参照していましたね。

竹谷 
成田さんの怪獣はそういった造型的な要素が相まって、全体的に「遠い感じ」がするように思います。地球の者ではないな、宇宙から来たんだな、というのが感覚的に分かる。

小谷 
「遠い感じ」、しますね。こいつは人間の言葉喋んないな、って思いますもんね。

竹谷 
全然理屈が通じなそう。ウィンダムは味方の怪獣だからまだいいですけど、敵方のキングジョーなんかになると、どこが目なのかすら分からない(笑)。

小谷 
「キングジョーの目はどこだ説」ありますね!僕はこの両肩に立ってる、アンテナみたいな所が目であってほしいです。

竹谷 
あ、僕もそこがいいですね! 子供の頃は真ん中の丸2つに目を見てしまいがちだけれども…

小谷 
それだとかわい過ぎるんですよね! つぶらな瞳過ぎる。

竹谷 
クマさんみたい。

小谷 
おでこの四角が目で、一ツ目だという人もいますけどね。

竹谷 
いや、やっぱり突起が目の方がかっこいいですよ。ここに目を見てこそ、成田さんらしい「遠い感じ」があると思います。

小谷 
キングジョー、合体前の分離した形が特に良いです。万国旗を背景にウルトラセブンに馬乗りになって殴るシーン、僕はあそこシビれました。

竹谷 
あの時は本当、負けちゃうんじゃないかって思いましたよね。

小谷 
強過ぎでしたよ、キングジョー。

―― すみません、私は「ウルトラマン』シリーズに詳しくないのですが、この「キングジョーの目はどこだ説」は有名な議論なんですか?

竹谷
&
小谷 
いや、別にそんなこともないと思いますけど。

――(...。)

小谷 
まあ何にしろ、「ウルトラセブン』などに登場する怪獣や怪人は、成田さんが、デザインというよりも「自分の作品だ」と思って制作していたという経緯もあって、端々に新しい「ヒトガタ」として、彫刻的な感触が残っているということです。成田さんの原則やコンセプトが見えるというか、普通にデザインされたもの以上のメッセージが背後に透けているような感覚がすごくあります。成田さんの作家としての位置付けは、日本の美術史においても歴史的に語られず「点」のままなので、国内でも国外でも、今後もっと研究されていいと思いますし、線にしたいですね、僕は。

(※ 後日、ふたりは成田亨さんの画集を読み直し、キングジョーのデザイン案を複数見比べた。その結果、「ここが目だ」と盛り上がっていた突起は、普通に肩である可能性が浮上してきた。が、いずれにせよ、真相は不明である。)

仕事にまつわる権利とお金

小谷 
竹谷さんにまた質問なんですけどいいですか?

竹谷 
もちろん、どうぞ。

小谷 
竹谷さんはデザイン的なものも含めて、商業的な仕事を結構されてるじゃないですか。そういうのを続けてくると、何かこう、溜まってこないですか? もう全部やめちゃいたいみたいな衝動とか、たまにないですか?

竹谷 
それは当然ありますよ。本当は好き勝手やっていたいですから。今すごく、バネがたわんでいてるような感じです(笑)。

小谷 
いやー、そうなりますよね、絶対に。でも逆に僕らは商業的なことやってみたい、って思う時があるんですよ。しかも、正直、そういう話も来なくはないんです。けれども、残念なことに契約書を見たら「これは無理!」みたいな条件がいつも書いてあって、どうしたらいいんだろうって思っていたんです。

竹谷 
それは、権利関係を全部持ってかれちゃうとか、そういうこと?

小谷 
ですね。そういう厳しい条件の仕事が来たら、竹谷さんはどうしてるんだろうと気になってて。

竹谷 
まあ、仕事の内容によりますよね。ロイヤルティーがあるものに関しては、こちらに入るパーセンテージを増やしてほしいとか、そういう交渉はしますよ。既存キャラクターの仕事だと、難しいですけどね。版権物を扱うときはその版権元に権利があるのは当然ですから。あるいは版権物だとしても、この企画では僕がこういうアレンジをしてるから、こちらにも2〜3パーセントはくださいねとか、そういうケースもなくはないです。

《タケヤ式自在置物 深沙大将》

竹谷 
リボルテックタケヤ(現在の名称は「タケヤ式自在置物」)の仏像シリーズは、また少し特殊かもしれないですね。まず、日本だと著作権は作者の死後50年で失効するので、仏像には版権がない。加えて特にどこの仏像を再現しているというものないので、これは完全にオリジナルの企画、つまり自分たち(山口隆氏と共同制作)の版権になります。ただ、特に依頼されたわけでもない自主企画なので、発売してくれるメーカーを探すひと手間はありました。1社目に話をしたら、「原型料はそっちで持つならいいけど」と言われてしまい、お金がなかったので…。2社目の海洋堂で社長に話をしたら「ええよ!」という軽い返事がもらえたので、よかったです。

小谷 
作家が原型料を持つか持たないか、という仕組みがあるのですね。美術業界は原型料持つのは当然のことでスタートしている感じがします(笑)。

竹谷 
この場合の原型料というのは外注経費などのことですね。まあ金型を作ったり、製造コストがいろいろとかかりますからね。売れるかどうか分からない企画に、メーカーも簡単には乗らないですよ。

今、1番したいこと

―― そろそろお時間なのですが、最後に、お二人が「今、時間があったら1番したいこと」を伺ってもいいですか?

竹谷 
んーなんでしょうね。海に行きたいですかね。きれいな海辺で、使えそうなものを拾いながらボーっとしてるっていうのを今1番やりたいです。最近は行けてないですけど、海辺は面白いんですよ。物がいい感じに朽ちていてね。海辺の町で育ったせいもあって、落ち着きますし。小谷さんは海に行ったりしますか?

小谷 
僕は育った場所が海から遠かったので、そういう意味での思い入れはないですけど、海辺の物は面白いですよね。潮でダメージを受けた、独特の朽ち方をしていて。

竹谷 
ずっと漂っていた時間の経緯がそのダメージに表れてるような感じですね。自然の中では人間が作った物を壊そうとする作用が働いていて、そうして錆びたり朽ちたりする物は美しいです。

小谷 
何かを作るっていうのとは対極的なものですが、不思議です。その点は僕らが共有している感覚かもしれないですね。素朴ですが、漂流物が時間をかけて風化され朽ちていく、あの自然感は、どこかしら彫刻の本質を持っています。自然の力の痕跡ゆえ、観察価値も高いです。

竹谷 
小谷さんはいかがですか?

小谷 
今年、「これは運命かも」と思った仕事の依頼が2つくらいあったけど、最後まで実現しなかったので、次回何か良いオファーがあればなんとか貫徹したいですね。

―― 「時間があったら何をしたいか」という質問でしたが、おふたりとも考えるのはやはり仕事に関わることなんですね。こちらもなんだか身が引き締まる思いがします…! 本日はどうもありがとうございました。

撮影/山中慎太郎
文・編集/飯田直人
デザイン/桜庭侑紀

<あなたはもう彫刻を無視できない>特集、次回のテーマは「銅像」。皆さんはなぜ町中にやたら裸の銅像が置いてあるのか、気になったことはないだろうか? そんな歴史の謎も解き明かしつつ、日本の銅像のほぼ全てを生産する富山県高岡市を取材してきた。銅像職人のアツい想いに触れたら、銅像の前を素通りなんて、もうできなくなっちゃうよ。(12月7日公開予定)

豪華!タケヤ式自在置物プレゼント

タケヤ式自在置物シリーズの内、「金剛夜叉明王」と「深沙大将」をそれぞれ1名の方にプレゼントいたします(どちらかを選ぶことはできません)。
応募方法
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受付期間
2018年12月6日(木)18:00〜12月12日(水)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/12月13日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月13日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月15日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
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