アマゾン超え!ヨドバシ・ドット・コムが「最強ネット通販」な理由

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つい先日、ほぼ同じようなタイミングで、ヨドバシ・ドット・コム(ヨドバシカメラ運営)とアマゾンとで買い物をした。どちらもすごく急ぎのものではなかったので、とくに配達方法の指定をしないままだったが、奇しくも現状でのこの2社のラストワンマイルの差を体感することになった。

先に答えを言ってしまえば、「納得」と「ガッカリ」だった。

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ヨドバシ・ドット・コムでは、随時、メールで状況の連絡(注文確認、決済確認、商品出荷、配達開始とお届け予定)が入ってくる。注文確認から出荷まで約4時間だった。

一方、アマゾンの場合、注文確認と発送確認のメールが届くが、それ以降の配送状況は自分から確認しなければ、いま荷物がどういう状況になっているのか(近くの配達店まで輸送中、配達中)はわからない(このときはうっかりしていて、再配達問題解決アプリ「ウケトル」との連携を忘れてしまった。この連携をとっていれば、状況に変化があれば、随時、連絡が入っていたはずなのだが)。こちらは深夜の注文だったが、2時間で出荷されていた。

「分単位」のヨドバシに対して、アマゾンは…

問題は受け取りのタイミングだ。当日は、別段、出かける用件もなく、いつ届いても構わない状態ではあったが、ヨドバシ・ドット・コムは、配達開始のメールにお届け予定時間が1分単位で入っているうえ、この日、実際に受け取ったタイミングもほぼ予定時間どおりの正確さだった。

以前の経験では、予定より大きく遅くなる場合に限らず、少し早くなるときでも電話で連絡が入った。細かいことは気にしなくても、だいたいの時間に届けばよい、という人には少々、うっとうしいかもしれないが、「分単位の正確さで届けます」という自信にも受け取れ、そういうマネジメント体制を敷いているのだろう。

配達開始以降のメールには担当者の氏名が入っていることから、万一、クレームでもあろうものなら、担当者の評価に直結するということもあるのかもしれない。

それに対しアマゾンはというと、2017年のヤマトショック後の配送料値上げ以降は、ヤマト運輸に頼らない配送体制にシフトしていることもあり、以前に比べ、到着時間を読むことが難しくなった。それまではメールから「配達中」を確認すると、デリバリープロバイダの配送であっても、ほぼ2時間以内に届いていたが、このときは「配達中」開始時刻から約6時間後(夕方の午後7時)。しかもポスト投函可のものではなく、受け取り印の必要なものだったため、到着を待つ間、イライラが募ってしまった。

もっとも、どちらのケースでも、荷物を受け取るこちら側に大きな支障はなかったのだから、ネット通販としての問題はない。それどころか、配送料無料(ただし、アマゾンはプライム会員の年会費3900円を支払っている)で、注文時点から換算すると、どちらも24時間以内に手元に届くというサービスを提供してくれている。

しかしながら、こうした些細な差を消費者は微妙に感じとっているのではないか。じつはそれを裏付けるようなデータがある。公益財団法人日本生産性本部サービス産業生産性協議会が2009年度から調査結果を公表している「JCSI(日本版顧客満足度指数)」がそれだ。

この調査では、過去1年以内にそのサービスを利用したことがある人(通信販売業の場合は、2回以上、会計を伴う利用)を1企業・ブランドあたり300人以上を確保し、調査しているのが特徴で、6つの指標(顧客期待、知覚品質、知覚価値、推奨以降、ロイヤルティ、顧客満足)をもとに、顧客満足度を100点満点で指数化している。

業種の違い、調査年度の違いに関わらず比較可能なものとして設計されたものであり、たとえば、2018年度の得点が前年を下回っていれば、その企業・ブランドの顧客満足度が下がったと評価することが可能だ。

過去5年について、通信販売業(調査対象は、ヨドバシ・ドット・コム、Amazon.co.jp、ジャパネットたかた、楽天市場、通販生活、オルビスなど、主要23企業・ブランド)でこの数値を見ていくと、先日の私の体験も、“たまたま”ではなかった、そう読み取ることができる。

2014年度の結果を見ると、ヨドバシ・ドット・コム、amazon.co.jpが化粧品通販のオルビスと並び、「80.7点」でトップに立っていた。それが2018年度では、1位は5年連続のヨドバシ・ドット・コムで「84.1点」、amazon.co.jpはというと「76.2点」で全体の9位だ。

この5年の間、ヨドバシ・ドット・コムはほぼ右肩上がりで得点を伸ばしているのに対し、amazon.co.jpは「80.7」⇒「76.5」⇒「77.0」⇒「77.9」⇒「76.2」とバラつきが目立っている。

もちろんこのJCSIは絶対的なものではなく、数ある顧客満足度を測る調査のひとつでしかない。しかし、名だたる大手企業がこの調査でのランキングをプレス発表したり、この調査結果(有料で詳細なデータが手に入る)を社内のCS向上活動に用いたり、経営計画に活用しているというから、一調査以上の信頼性があると考えている。

似て非なるヨドバシとアマゾンの「顧客中心主義」

では、ヨドバシ・ドット・コムとアマゾン、その激化するラストワンマイルの攻防を制するのはどちらになるのか。ここからはその本題について分け入っていきたい。

そのことを考えるにあたっては、まずもって両社のビジネスに対する考え方を知ることが重要だ。

ご存じの通り、アマゾンは絶対的な「顧客中心主義(カスタマーセントリック)」を掲げ、「地球上で最も多くの品揃えを提供する」ことをミッションとする世界最大のEC企業である。

一方、ヨドバシカメラはというと、以前(2014年)に同社の藤沢和則副社長に取材した際の言葉を借りると、「お客さんにフォーカスしているだけ。理論的にできるかどうかではなく、『お客さんに喜んで使ってもらえるどうか』が目安。企業として当たり前のことを淡々と進めているだけ」となる。

取材したその当時は、ちょうど「オムニチャネル(いつでも、どこでも、顧客が好きな時、好きな場所で、買い物をし、商品を受け取ることができる環境)」が流通業界のキーワードとして日本でも流行り始めたころ。話を聞いてみてわかったのが、同社がかなり以前から、私が持論とするオムニチャネル実現の3つのポイント(「在庫の一元管理」「店舗とネット販売の価格の統一」「店員の教育」)を達成していたことだった。

そのことを伝えると、「そういわれると自信になります。ただ、われわれはオムニチャネルを目指してきたのではなく、“チャネルレス(お客さんがチャネルを意識することなく、あらゆる接点で自由に買い物ができる)”を提供したいだけ」と返してきた。確かに、その後もヨドバシ・ドット・コムは進化を続けているから、経営の「言行一致」と言えるだろう。

このように同じ「顧客中心主義」を掲げる両社の間でも、その中身は絶妙に違っているところが興味深い。

ヨドバシとアマゾンでは「スピードの質」が違った

続けて注目したいのは、両社の「物流戦略」の違いだ。

2015年11月、アマゾン・ジャパンはスピード配達の「プライムナウ」を日本でスタートさせた。アマゾンプライム会員(年会費3900円または月会費400円)向けのサービスで、東京・神奈川・千葉・⼤阪の⼀部地域を対象に、2時間単位の配達時間を選択できる「2時間便」を無料で提供。一部地域では送料890円で「1時間以内配送」にも対応しており、プライムナウに対応する商品は対象地域により異なり、最大約7万品目(東京都市部の場合は約2万4000品目)だ。

このサービスに対応するため、アマゾンは独自の配送網を構築。首都圏エリアの場合、東京都(世田谷区、江東区、豊島区、三鷹市)、横浜市の5カ所に、プライムナウ専用のFC(フルフィルメントセンター)を設置し、最短1時間以内の商品配達に対応可能な体制をつくり上げている。

宅配業界で問題となった再配達については、不在時には「置き配」(受領印なしで玄関先や敷地内に置いてくる)に対応し、アプリを通じて配送状況がリアルタイムにわかり、ワンタップで配達員と通話できる仕組みもある。

なんらかの事情で、商品の受け渡しができなかった場合は注文がキャンセルされ、送料と商品代金が返金される。

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一方、ヨドバシカメラは、2016年9月、東京都23区全域と、武蔵野市・三鷹市・調布市・ 狛江市の一部を対象に、ヨドバシ・ドット・コムからの注文商品を最短2時間30分で無料配達する「ヨドバシエクストリーム」を開始した。

ヨドバシ・ドット・コムの品揃えは実店舗とほぼ同じ約600万アイテム。そのうち約10%が「ヨドバシエクストリーム」の対象商品で、品目数ではアマゾンの「プライムナウ」(最大約7万品目)を凌駕している。

ヨドバシカメラは通常、配達を宅配業者へ委託しているが、迅速で柔軟な対応が求められる「ヨドバシエクストリーム」では自社社員が配達をする。

物流拠点の運営も外部委託せず、専任担当者を置き、配送車両約300台を配置し物流品質を高めている。都内に在庫保管用の物流拠点が3か所、その商品を仕分けるデポを12ヵ所に設置している。商品在庫を分散することで、配達のリードタイムを短縮することができる。

「ヨドバシエクストリーム」は、もともとスピード配送を目的にしたものではなく、「配送の効率化」「配送レベルの向上」を追求した結果、実現されたという。顧客の都合に合わせて届けることを目的に、物流業務を徹底的に効率化した結果、受注後、わずか5分で商品をピッキングし、30分以内に出荷することが可能となり、最短2時間30分で商品を届けられる体制を形づくることができた。再配達にも対応する。

アマゾンの「プライムナウ」も「ヨドバシエクストリーム」も、独自の配送網をつくり上げることでスピード配送を可能にした。しかし、スピードを“メイン”に外部事業者に配達を委託するアマゾンと、自社で配達までを担い全社の効率化を図ることで物流品質を担保しているヨドバシカメラとでは、同じようなサービスでも、そのスピードの質が異なるということがわかるだろう。

2017年にヨドバシカメラは、同社の物流の重要拠点である神奈川県川崎市のセンターを6倍に増床、延べ床面積25万平方メートルの巨大な物流拠点を完成させた。これはアマゾンの国内最大の物流拠点、小田原FCの床面積20万平方メートルを上回る規模だ。この投資からも、ヨドバシカメラが物流にどれだけ本腰を入れているかがよくわかる。

そしてこのセンターの本格稼働後の2018年6月には、横浜市や川崎市の一部地域を「ヨドバシエクストリーム」の対象エリアに加えた。物流の重要性を知る同社が配送領域を広げたということは、これまでの配送エリアで、しっかり、配達密度が取れたということだろう。

朝にネットで注文して、昼には店で受け取る

「ヨドバシ・ドット・コム」は宅配だけでなく、店舗受け取りでもスピードを担保している。店頭在庫があれば受注30分以内の受け取りも可能。東京・秋葉原、大阪・梅田、福岡・博多の店舗では、24時間店頭受け取ることができる。

私の会社の近くにヨドバシカメラの旗艦店があることから、個人的にもよく利用している。

少し前のことになるが、昼休みに立ち寄った最寄り店舗で、気になるコーヒーメーカーを見つけた。会社に戻ってパソコンから、ほかにどんな種類があるのかを確認し、別の購入商品を決定。その日のうちに手に入れたかったため、最寄り店舗に在庫があるかどうかを確認したところ、運悪く在庫切れだったが、その日の夕方出かける場所の近くにあるヨドバシカメラの店舗では在庫が確認でき、帰りがけに商品を受け取ることができた。

決済はネット上で済んでおり、店舗ではスマホ画面による購入確認の後、商品を受け取るだけだった。購入金額(税込)の10%となるポイントもしっかりついていた。

他のケースでは、朝いちばんにネットで商品の注文と、最寄り店舗での受け取りを指定したところ、30分もしないうちに商品が用意され、午前中に商品を受け取ったということもあった。

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ネット上にリアルタイムの在庫状況が店舗ごとに公開されているからこそ可能になる商品の受け取り方だ。また、こうした購入方法をしても、売場で混乱なく商品を受け取れるというのは、社員がそうした仕組みを提供していることを十分に理解していることの現れだ。つまり、社員教育が行き届いていることにほかならない。

アマゾンでも主要コンビニエンスストアで購入商品を受け取ることができるが、ヨドバシカメラほど融通が利かず、早く受け取りたいというニーズには向かない。

こと物流の品質ということに限っていえば、「あの世界最強のネット通販、アマゾンさえも見劣りする」、そういってもよいぐらい顧客満足度の高い物流を実現しているのがヨドバシカメラなのだ。

2018年3月期のヨドバシカメラの売上高は6805億円(前期比9.8%増)、経常利益が606億円だった。同社の成長エンジンは、いうまでもなく売上高1000億円を超える規模になったヨドバシ・ドット・コムで、店舗よりも高い利益を稼ぎ出しているといわれている。家電業界№1のヤマダ電機(単体)の2018年3月期の売上高は1兆3513億円(同1.0%増)、経常利益は322億円(同44.8%減)であり、ヨドバシカメラはヤマダ電機の半分程度の売上げで、2倍近い経常利益をあげたということになる。

ちなみに、アマゾン日本事業の2017年(2017年1〜12月)売上高は円ベースで1兆3335億円だった(2017年の平均為替レートを1ドル=112円で換算)。円ベースの伸び率は前期比14.4%増。利益の指標についての公表はない。

店頭販売に比べて配送コストを見込まねばならないEC売上げがかなりの規模を占めているヨドバシカメラが、送料を無料にしても、業界内で高い利益率を維持できているのは、それだけ自社配送を外部委託よりも効率的に運営できているということだ。

現在、ヨドバシカメラのEC比率は約15%だが、あるインタビューで「将来的には、EC比率を50%まで高めたい」と答えている。ここからは実店舗とネット通販の双方で集客を高めることが、アマゾンを超えるヨドバシの戦略となっていくのだろう。