先輩たちが選んだ「就職人気企業ランキング」TOP10

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今年2月の合同企業説明会(キャリタス就活フォーラム)の様子。JALやANAなど航空業界の人気は引き続き高い (撮影:風間仁一郎)

今の大学3年生や大学院1年生にあたる「2020年卒生」の就職活動は、すでに始まっているといっていい。例年1〜2月に実施されていた冬のインターンシップが前倒しされ、今年は10月や11月にも「秋のインターンシップ」を開催する企業が増えている。

インターンシップの前に行われる企業のインターンシップ説明会には、早々にスーツ姿で訪れる学生が増えている。夏までのインターンシップは私服での参加が主流だったが、学生にとって秋以降のインターンシップは、「就職活動のひとつ」「選考はすでに始まっている」という意識で、スーツをまとっているかもしれない。


就活の早期化が顕在化する中、「どの企業を志望するか」についても、考える時期に来ている。そのためには、業界研究や企業研究を進めなければならないが、そもそもどんな企業があるのか、把握する必要があるだろう。それを知る材料に、就職人気ランキングを利用してもいい。まずは、どんな企業が「誰もが知る人気企業」なのかを、把握しておくことも大切だ。

就職人気企業ランキングは各就職情報会社が定期的に発表しているが、今の就活生が投票する就職人気企業ランキングは、就職解禁といわれる来年の3月以降にならないと発表されないケースがほとんどだ。

まずどんな企業が人気かを把握する

そこで参考にしたいのが、「先輩たちが選んだ就職ランキング」、つまり過去の結果だ。今回は、3つ上までの先輩である、2017年〜2019年卒生のランキングを掲載したい。経済状況などに応じてこの3年で浮沈する企業もあれば、不動の人気を誇っている企業もある。それらはどういった企業か、大きな傾向とともに見ていきたい。

今回紹介するランキングデータは、文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の調査を基にしたもので、調査対象者は同社の就職サイト「ブンナビ!」に登録する就活生。なお、今回は上位100社のみを紹介しているが、300位までを4月20日配信の「学生2万人が選ぶ『就職人気ランキング』300社」で公表している。

表に「前半」とあるのは、この調査が就活の序盤に行う「前半」と、就活の終盤に入ってから行う「後半」との、年2回行っているため。前半のほうがイメージ先行型で、後半のほうがより現実的な視点から企業を選ぶ傾向が強い。今回のランキングはすべて前半の結果のみを掲載している(2019年卒生の後半の結果はこちら)。

傾向を見ていこう。ここ最近の特徴は、航空業界の人気が高いということだ。

2018年卒生のランキングから、全日本空輸(ANA)がトップに躍り出て、昨年は1位全日空、2位日本航空(JAL)と、国内航空大手の2社がワン・ツーを占めた。これまでもキャビンアテンダント職を目指す女子学生の支持はあるが、2020年開催の東京五輪やインバウンド(訪日外国人旅行客)の拡大から成長する業界、との評価を男女問わずしていることが背景にある。ANAエアポートサービスJALスカイなど関連企業も、トップ100位以内に顔を出しているのも特徴だ。

同様の理由で旅行業界の人気も高い。JTBグループを筆頭に、エイチ・アイ・エス(HIS)近畿日本ツーリストなどがここ最近、上位にランクインしている。2025年の大阪万国博覧会の開催も決まり、インバウンド拡大の流れはもうしばらく続きそうな気配。これら2つの業界の就職人気は、まだ続くものと思われる。

一方、絶対的な人気を誇っていた金融業界は、ここに来て凋落の傾向が見える。2013〜2017年卒まで、就職人気ランキングの1位はメガバンクの指定席で、さらにトップ10のうち7〜8社が金融業界という状況だった。企業の安定・安心感や採用数の多さから、幅広い人気を集めていたが、ここにきて状況に変化が見られ、2018年卒ではメガバンクが1位に座を明け渡した。2019年卒のランキングではトップ10に入るメガバンクの数が減少している。

背景には金融業界の人員削減が挙げられる。金融とテクノロジーを組み合わせた「フィンテック」が広がってきており、現場でもAI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などが導入され、これまで人手に頼っていた事務処理作業が削減されている。その結果、各金融機関では人員の削減や配置転換を進めており、新卒採用でもかつてほどの大規模採用を行う金融機関が減った。

金融業界は採用数減らし、人気に陰り

そうした採用数の動向だけでなく、マイナス金利による金融機関の収益性低下も顕著になっており、将来性を含めて金融機関離れが徐々に広まってきている。今後はさらに就活生の金融離れが広がると予想される。ただ、それでも人気の上位にいることは変わりがない。第一志望ではないが、数社選ぶ中の1つに、金融機関を選ぶ学生も少なくないだろう。

前回、2019年卒の特徴としては、バンダイナムコエンターテインメントオリエンタルランドソニーミュージックグループなど、エンターテインメント・アミューズメント企業がじわりと上位に進出していることも挙げられる。一昔前にはマスコミ業界が上位をにぎわせていたが、将来性やハードな労働環境であるとのイメージから鳴りを潜めており、集英社講談社といった大手出版社が存在感を示している程度だ。

メーカーでは食品業界の人気が引き続き強い。女子学生の人気に支えられているのが大きな理由だが、明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)ロッテ味の素など、誰もが知る有名企業がランクインしている。

それ以外では広告代理店や、鉄道などの存在が目立つ。印刷会社は、大日本印刷凸版印刷の大手2社が上位に入っている。成長性の高い電子部材といった印刷物以外の事業が柱になっていることを、学生はしっかりと把握している結果なのかもしれない。

このように人気になるのには理由がある。それは知名度だけでなく、企業の成長性や業界の将来性などを折り込んで、先輩たちも判断してきたのだろう。ランキングから「なぜこの企業が上位なのか」を調べることは、業界研究や企業研究の一歩にもなる。そしてそこから、関連企業やライバル企業など新たな発見をしていけば、志望企業の選択肢も増えていくことになろう。




■調査について
調査方法:文化放送キャリアパートナーズ運営の就職サイト「ブンナビ!」上でのWebアンケート、文化放送キャリアパートナーズ主催の就職イベント会場での紙アンケート、文化放送キャリアパートナーズ就職雑誌同送ハガキアンケート
*投票者1名が最大5票を有し、志望企業を1位から5位まで選択する形式
調査期間等はそれぞれ下記のとおり
(2019年卒)
調査期間:2017年10月1日〜2018年3月31日
回答数:19888(うち男子7716、女子12172/文系16460、理系3428)
総得票数:66386票
男女比を1:1にするため、男子得票数に1.577501296を掛けたポイント制
(2018年卒)
調査期間:2016年12月1日〜2017年3月31日
回答数:16851(うち男子6223、女子10628/文系14155、理系2696)
総得票数:47778票
男女比を1:1にするため、男子得票数に1.707857946を掛けたポイント制
(2017年卒)
調査期間:2016年2月1日〜2016年4月10日
回答数:10168(うち男子3853、女子6315/文系8527、理系1641)
総得票数:34827票
男女比を1:1にするため、男子得票数に1.638982611を掛けたポイント制
「就職」を重視する学生は「企業イメージ(企業価値)」よりも「仕事イメージ(仕事価値)」に重点を置くとの仮説の下で、ランキングを算出。就職者誘引度は、学生が企業イメージと仕事イメージのどちらを企業選択時に重視したかという回答によって算出。企業イメージのみで投票した場合は就職者誘引度ゼロ、仕事イメージのみで投票した場合は100とし、得票平均値を就職誘引度としている。
総得票数×就職者誘引度=就職ブランド力とし、就職ブランド力を基にランキングを作成。社名はアンケート上の名称で1採用窓口=1社名を基準にしている。グループで採用が一本化されている場合は「○○グループ等で表記」