2019年のスマートフォンは、カメラからゲームに?  次世代に挑む戦略で明暗がわかれる

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●急速に注目と成長をはじめたゲーミングスマートフォン
スマートフォン業界では今年後半から、ゲームに特化した「ゲーミングスマートフォン」が、
にわかに注目を集めつつあります。

日本国内においては、ASUSが同社のゲーミングブランド「ROG」を冠した「ROG Phone」を11月23日に発売。
このほかにも、すでにファーウェイが特定ゲームにGPUを最適化して動作性能を向上させる「GPU Turbo」機能を搭載した、「HUAWEI nova 3」を10月5日より発売しています。


専用ゲームパッドも発売している「ROG Phone ZS600KL」



ROG Phoneの魅力について熱く語る女性プロゲーマーのチョコブランカさん


今、世界では、中国・台湾系のスマートフォンベンダーを中心に、ゲーミングスマートフォンが次々に販売されています。

こうした背景には、
スマートフォン市場に「新たなトレンド」を生み出したい。
そうした各社の思惑があります。

●もはやマンネリ化した「カメラ機能の強化」というトレンド
スマートフォン市場は2016年あたりから今日まで、「カメラ機能」がセールスポイントになっていました。
・セルフィーカメラの高画質化
・カメラのデュアル、トリプル化
・ズームやボケ効果など表現力の向上
・夜景など、AIによる最適な撮影の実現
などが大きなトレンドの1つとなっていました。

しかし、今年になり、カメラの強化、進化のアピールにも限界が見え始めています。
・カメラユニットを3つ、4つと増やしても、ユーザーが使いこなせない
・カメラユニット増加による本体価格の高騰
・AIによる認識・撮影で、どのスマートフォンでも失敗がなく、差がなくなった
・セルフィーの美肌撮影など、自動補正の品質でも差がなくなった

つまり、どのスマートフォンのカメラ機能でも、ほぼ満足できる写真が撮れるのです。
多くの消費者にとって、スマートフォンでの撮影品質に大きな差がなくなったことで、カメラ機能でスマートフォンを選べなくなりつつあるのです。


そこでベンダー各社がカメラ機能にかわって目をつけたのが「ゲーム」です。
実際、スマートフォンの用途は、SNSなどのネットや音楽・動画視聴とともに、ゲーム利用者は年々増えています。
ゲーム品質も大きく進化し、今や家庭用ゲーム機にも劣らない画質とクオリティを持ちはじめています。

それを証明しているのがスマートフォン向けゲームの市場で、2017年には日本国内だけで1兆円規模に成長しており、今後ますます伸びていくことが予想されています。

つまり、高性能化した現在のスマートフォンの有り余る処理性能を、有効に活用するコンテンツとしての「ゲーム」が、カメラにかわって台頭してきたというわけです。


背面と正面に2基ずつカメラユニットを持つHUAWEI nova 3。カメラ機能の強力な機種だが、ゲームに最適化するGPU Turbo機能も搭載する


ゲーミングスマートフォンとは言っても、単にゲームしかできないわけではありません。

スマートフォンとしての基本的な機能は全て備えています。

では、
なにが一般的なスマートフォンとは違うのか?
高性能なスマートフォンを同じではないのか?
どこで普通のスマートフォンと差別化できるのか?

実に悩ましい問題です。

そこでベンダー各社は、
「ゲーミングスマートフォン」ならではの差別化を図ります。
・本体のデザインのゲーミングデバイス化
・人気ゲームに最適化、オーバークロック化
・強力な発熱対策、熱伝導率の良い放熱板や専用ユニット
など、フルパワーでゲームがプレイできる拡張性能やオプションパーツを採用することで、一般のスマートフォン以上の「ゲーム性能」を謳っているのです。


高い処理性能をさらに向上させるGPU Turbo機能



性能的にはアップルの「iPhone XS」シリーズなども、ゲーミングスマートフォンと呼んで差し支えないほど高い処理性能と表示品質を持っている


●ゲーミングスマートフォンは成功するのか? 海外での人気次第
ゲーミングスマートフォンが2019年のトレンドとなるかどうか?
実は、未知数なのです。

その理由は、ゲームコンテンツにおける動作でのピーク性能の高さが最大のセールスポイントとなる点にあります。
・一般のハイエンドスマートフォン以上の高性能モデルになる
・専用の高性能なオプション品も必要
といったことから、本体だけでも10万円以上の高価なモデルに加えて、オプションも加えれば、総額で20万円近くにもなるケースが十分にあるからです。

ここまで価格が上昇すると、一般の人が購入するメイン市場にはなりにくいと思われます。


世界のゲーマーはゲーミングスマートフォンにどこまで食いつくか


とはいえ海外では既に、各社が本格的な開発競争に突入しています。
・ゲーミングデバイスベンダーRazer
ゲーミングスマートフォン「Razer Phone」シリーズを展開。
・ファーウェイ
「Honor Play」という日本未発売のゲーミングスマートフォンを発売。
・中国の大手スマートフォンベンダーXiaomi
「Black Shark」というゲーミングスマートフォンを発売。

一方、日本のソニー、シャープなどのスマートフォンベンダーでは、
・ゲーミングスマートフォン市場への参入
・ゲーミングスマートフォンの発売
といった動向は、現時点でありません。

ゲーミングスマートフォンが2019年のトレンドになるか否かは、
海外市場での結果次第とも言えます。

ただ、海外で成功し、本格的に日本でもブームやトレンドになった場合、海外メーカー主導となり、日本のベンダーが後塵を拝すのは避けられないかもしれません。


秋吉 健