世界的人気シリーズ「ハリー・ポッター」のスピンオフとして2016年に公開された映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』で主役を演じたことにより、世界にその名が知れ渡るようになったエディ・レッドメイン。それ以前から、はにかむような柔らかい笑顔と、舞台で鍛えた確かな演技力で人気があったが、ここにきてよりメジャーな存在になってきたイギリス人俳優だ。

エディ・レッドメインのプロフィール

エディ・レッドメインは、1982年イギリス生まれ。イギリスの名門校であるイートン校に入学し、ケンブリッジ大学を卒業。演技には子供の頃から興味があったようで、初めてオーディションを受けたのは12歳の時、舞台「リチャード三世」でのことだった。

2005年には舞台で新人賞を受賞し、2009年にはローレンス・オリヴィエ賞助演男優賞およびトニー賞を受賞して、まずは舞台俳優として高い評価を受けた。ちなみに、一時期バーバリーのモデルを務めていたことも。

エディ・レッドメインが世界から注目されるようになったのは、『博士と彼女のセオリー』(14)で物理学者スティーヴン・ホーキングを演じ、アカデミー賞主演男優賞やゴールデングローブ賞主演男優賞など数々の賞を受賞した時であろう。その後『リリーのすべて』(15)でもアカデミー主演男優賞にノミネートされ、映画俳優としてその実力が認められた。

2016年に大英帝国勲章OBEを受章。

このように、舞台からキャリアを積んできたイギリス人俳優エディ・レッドメイン。そこで今回は、エディ・レッドメイン出演のおすすめ映画10本をご紹介しよう。

『ザ・デンジャラス・マインド/悪魔のルームメイト』(2006)

同じ部屋にいたくない

イギリスの名門寄宿学校にいる主人公は、ルームメイトを殺害した容疑で逮捕されるが、取り調べに対して反抗的な態度を取り、なかなか口を割らなかった。

殺されたのは転校生。容疑者は校長の息子。2人の間に何があったのか、警察は心理学者を呼んで真相を聞き出そうとする。 そして彼が少しずつ語りはじめたのは、動物の剥製作りが趣味だというルームメイトの不気味な異常性であった。

日本では劇場未公開だったが、映画専門チャンネルで放送された作品。頭がよくて生意気。自信満々なので、先生相手でも簡単にやり込めてしまう。そんな鼻持ちならぬ問題児をエディが演じ、あの優しい顔が傲慢に見えてくるのが不思議。でも、こんな役もしていたとは!

『美しすぎる母』(2007)

優しすぎる息子

貧しい家庭で育った主人公は、その美貌によって大富豪と結婚し、息子にも恵まれて幸せな人生を送っていたが、夫の裏切りを知り、息子に偏った愛情を注ぐようになる。

1972年に起きた母親殺害事件の映画化。夫の浮気をきっかけに精神状態が不安定になっていき、若さと美貌への固執や、1人息子に対する異常な依存をみせる母親をジュリアン・ムーアが演じた。これ以上はないというほどの適役である。困りましたねえ。こんなお母さんは。

何しろ裕福なので、暇を持てあましているのである。そこで彼女は外国を飛び回り、息子のセックスにも口を出す。というか、危険な領域まで足を踏み込んでしまう。息子役のエディは、そんなありがた迷惑な母親の愛を拒否できず、大人になるにつれて閉塞感とうっとおしさが頂点に。息子の優しさは仇になる。

『イエロー・ハンカチーフ』(2008)

あの名作がアメリカンに

失恋して憂うつな日々を送っている少女は、たまたま知り合った風変わりな青年に誘われ、同じ店にいたどこかワケありの主人公と一緒に旅に出る。

山田洋次監督作『幸福の黄色いハンカチ』(77)のリメイク版。時代設定が現代のアメリカに変わっているだけで、ストーリーは同じである。なので、武田鉄矢の役をエディが!という衝撃ときたら。オリジナル版でヒロイン役だった桃井かおりが、さりげなくカメオ出演しているのも嬉しい。

いろいろなハプニングを乗り越え、ドライブを続ける3人。彼らの絆は深まり、みんなが主人公の苦悩を分かち合う。はにかんだ笑顔とそばかすが似合うエディは夢見るような青年で、トラブルを起こしても憎めない純粋さが、一種の救いになっていたり。田舎っぽい雰囲気も新鮮だ。

『マリリン 7日間の恋』(2011)

僕がそばにいます

イギリスの上流家庭出身の主人公は、以前から憧れていた映画の世界に飛び込み、第3助監督の仕事に就く。そんなある日、崇拝していたマリリン・モンローが撮影現場にやってくる。

名優ローレンス・オリヴィエが監督と主演を務める『王子と踊り子』(57)の撮影のため、ロンドンへやってきたマリリン・モンロー。最初は歓迎されたものの、強いプレッシャーによる緊張と焦りで毎日遅刻し、NGを頻発する彼女に周囲はイライラを募らせていく。

原作は主人公の回想録。華やかなハリウッドスターが、人知れず抱えている孤独と苦悩を描いた撮影秘話というべき内容なので、公開された映画と合わせて鑑賞すると面白いだろう。女神も人間だったことを知り、愛おしさが倍増したエディは、情緒不安定なマリリンを受け入れ、励まし、そばにいた。束の間だったからこそ、永遠の輝き。

『HICK ルリ13歳の旅』(2011)

まさかの悪役

アメリカの田舎町で暮らす孤独な少女は、両親が突然いなくなってしまったことをきっかけに、誕生日にプレゼントされた拳銃を持ち、憧れのラスベガスに向かう。

故郷は退屈で居場所もない。だから彼女は、とにかくラスベガスに行こうと突き進む。しかし、ヒッチハイクで知り合った青年によって、彼女の運命は大きく変わっていくのである。その危険な男をエディが演じ、人懐っこい笑顔なだけに、じわじわと滲み出てくる狂気が怖すぎる。

13歳でこれはあまりにも過酷な体験。確かに成長はするかもしれないけど、トラウマは大丈夫か。いたいけな少女を地獄に突き落とすエディは、やり口がわかりやすい悪党だ。こんなエディは見たくないというファンもいるだろうが、意外と似合っているので、チャレンジ精神を汲んであげて。

『レ・ミゼラブル』(2012)

恋と革命

貧しさからパンを盗み、19年も刑務所にいた主人公。出所後は改心して市長になるが、娘を養うため極貧生活を送る女性と知り合い、幼い娘の面倒を見ると約束する。

世界各国の舞台でロングラン上映されていた有名なミュージカルで、この映画もリピーターが続出するほどの大ヒット。登場人物たち本人がみんなその場で歌っているという臨場感が、それまでのミュージカル映画にはない感動を呼んだ。

エディは、王制打倒を掲げる組織に属する学生の1人。自由を求めて活動する革新派の彼は、主人公と深い関わりのある美しい娘に恋をするが、信念を貫いて戦いに身を投じ、後半は物語を引っ張っていく存在だ。負けるとわかっていても、男には行かねばならない時がある。

『博士と彼女のセオリー』(2014)

離れないためにできること

1960年代、ケンブリッジ大学で物理学を学ぶ主人公は、同じ大学に通う女性と恋に落ちるが、その直後にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、余命宣告をされてしまう。

車椅子の天才物理学者スティーヴン・ホーキング博士の半生を描いた映画。難病に侵された彼と結婚した女性が、共に力を合わせて困難を乗り越えていこうとする夫婦の物語である。というと、美しき夫婦愛をイメージしがちだが、現実はそう甘くない。だって、彼女も普通の女だもの。

少しずつ体が動かなくなる博士を演じ、世界中から高い評価を受けたエディ。外見も驚くほどソックリで、ご本人からのお墨付きもあったという。相手への思いやりが強ければ強いほど、苦渋の決断をしなければならなかった二人。車椅子のエディが葛藤や哀しみを表情だけで表現し、大切なものを守ることの難しさや尊さを教えてくれる。

『ジュピター』(2014)

見ちゃおれん

単調で惨めな生活を送っている清掃員の主人公は、生まれる前に殺された父の思い出の品を買うため、大金を得ようと卵子の提供手術を受けに病院へ行く。

彼女はなぜかその病院で殺されそうになり、危機一髪のところを異星人に助けられる。彼女を抹殺しようとしたのは誰? 助けたのは誰? その理由は? 宇宙規模の権力争いという壮大なスケールの物語をわかりやすく描いたSFアドベンチャー映画。

エディは全宇宙を支配する一族の長兄で、彼女をしつこくつけ狙う悪玉だ。漫画チックな出で立ちに違和感のあるエディは、これでゴールデンラズベリー賞最低助演男優賞を受賞。ホーキング博士を演じてアカデミー賞を受賞した同じ俳優とは思えない黒歴史……役者を生かすも殺すも作品次第ということですね。トホホ。

『リリーのすべて』(2015)

命がけの決断

1928年、デンマークに住む画家の主人公は、同じ画家の妻から女性モデルの代役を頼まれて女装したことをきっかけに、自分の内面にいる女性性に目覚めていく。

世界初の性別適合手術を受けたデンマーク人画家と妻との愛を描いた伝記映画。どうしようもない衝動にかられ、女性として過ごす時間が増えていく彼の姿が切ない。しかも中身は女なのだから、妻ではなく他の男性を求めてしまう。そんな夫を必死に理解しようとし、葛藤しながらも見捨てない妻の愛は、もはや人類愛である。

はにかむ笑顔と奥ゆかしいしぐさからは想像もつかない、彼の勇気ある決断。自分自身の変化にとまどいながら、正直に生きようとするエディの繊細な演技が涙を誘うものの、たまにしか登場しないスーツ姿のエディにグッときてしまうのを許して。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)

さあ、魔法の世界へ

未知の幻獣を求めて世界中を飛び回っている魔法動物学者の主人公が、魔法動物の調査と保護のために訪れたニューヨークで、魔法のトランクを取り違えられてしまう。

大ヒットファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズの完結から5年。ホグワーツ魔法魔術学校の教科書を編纂した魔法動物学者を主人公にした新シリーズが発売され、その第1作を原作者自らが脚本を手がけて映画化。主役に抜擢されたエディは、このメジャー大作で一気に名が知れ渡った。

街中に散らばった魔法動物たちのユニークな愛らしさときたら。魔法の杖の構え方もサマになっていてかっこいいエディが、魔法動物たちに向ける愛おしそうな表情にもキュンとする。

続編の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は2018年11月23日(祝・金)に公開。

いかがでしたか?

イギリス出身の俳優エディ・レッドメインは、細身で中性的な容貌をしていることもあり、貴族のコスチュームがよく似合う。1つの役のイメージにとらわれず、これからもどんどんインパクトのある作品に出演して、もっといろいろな顔を見せてほしいものだ。

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