あの頃は自分が他人のように見えた――坂口健太郎、ブレイクを経て手にしたもの。

自らを「わりと冷めているタイプ」と語る。役を演じつつ、自分を俯瞰して見ているもうひとりの自分がいる感覚に陥ることがあるという。だからこそ、デビューしてまもなく訪れた“ブレイク”に、喜びとともに「自分がそこにいないような」戸惑いを感じた。あれから数年、経験を積む中で芽生えてきたのは「自分をそのまま出していいんだ」という自信。主観と客観のあいだを絶妙なバランスで行き来しつつ、坂口健太郎は充実の時を迎えようとしている。

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
スタイリング/KENTARO HIGAKI(little friends) ヘアメイク/CHIKA KIMURA (tsujimanagement)

役の中に自分を残しておけば、化学反応を起こせるかも

公開中の映画『人魚の眠る家』で坂口さんは、播磨薫子(篠原涼子)の娘であり、意識不明となった瑞穂(稲垣来泉)の治療と技術開発に没頭していく研究員・星野祐也を演じています。
脚本を読んで、すごくピュアな男の子というのが星野の最初の印象でした。彼なりの正義感だったり、瑞穂を助けたいという気持ちもあるし、瑞穂の母親の薫子さんと接する中でその気持ちもどんどん強くなっていく。ただ同時に危うさというか、儚く壊れてしまいそうな香りも感じましたね。
勤め先の社長である和昌(西島秀俊)に頼まれ、最新科学技術を瑞穂の治療に応用していく星野ですが、彼もまた薫子と同様に技術を妄信し、徐々に研究にのめりこむようになっていきます。
最初は星野も、自分が何をして、何が起こっているのかがわかっていたんですけど、研究が認められ、薫子からも尊敬のまなざしを向けられ、ちょっとずつ歯車が狂ってくる。自分でもどこまで行っていいのか? どこがゴールなのかという判断がつかなくなってきて…。

その変化やニュアンスは、現場で調整しながら作り上げていきました。演じ方によっては簡単に“悪い男”になってしまう役ですが、映画を見ている人に、どこかで彼に対しても感情移入してほしい、彼の正義を伝えたいという思いがありました。
技術を妄信する星野と薫子に危うさを感じた和昌が、治療と研究をストップさせようとするシーンで、星野が真っ向から反論するのが印象的でした。
薫子さんは星野のことを娘を救ってくれる神のように思い始め、星野の中にも介護に身を捧げる薫子さんを崇めるような気持ちがあったんでしょうね。そうなればなるほど、和昌は家族の中で“他者”になっていく。だから和昌にあんな言い方ができたんでしょうね。

自分で演じながらも星野に人間臭さを感じました。普通、そこまで言わないでしょってことをポロっと言っちゃう(笑)。ブレーキが利かないようなところがあって、でもそういう子だから、あそこまで突き進んじゃったんでしょうね。
女性や母親の目線で薫子、星野に感情移入する人も多いでしょうし、逆に男性目線で和昌の心情が痛いほどわかるという人もいるでしょうね。
僕自身、西島さんと対峙しながら、和昌の気持ちがすごくわかりました! 和昌が偶然再会した友人を介して、難病の子どものために寄付をする場面があるんですが、あの気持ちもすごくわかるんですよ。自分の“罪”を紛らわせるような気持ちだったんだろうなって。男の弱さと言いますか…(笑)。

だから、演じながらいろんな気持ちが交錯してしまって。星野の心情や目線を大事にしようと思いつつ、西島さんを目の前にすると和昌の思いがすごく自分の中に入ってきて、不思議な感覚でした。
星野は川嶋真緒(川栄李奈)と結婚の約束をしていますが、研究に没頭するあまり、彼女の家に挨拶に行く約束まで忘れてしまうという、うっかりぶりには背筋が凍りました(笑)。
あれはね…。(星野と)電話している川栄さんの後ろで、お父さんが料理の準備をしてて(苦笑)。
坂口さんは、仕事に没頭したり役にのめり込みすぎるあまり、他のことが目に入らなくなることは?
僕は、そこまで熱量がガーッと上がることがあまりないというか、どちらかと言うと、わりと冷めてるタイプなんでしょうね。いつもどこかでもうひとりの自分が、自分のことを俯瞰して見ているような感覚があるというか。

悪く言うと“注意力散漫”なんですかね?(笑)だからこそ、星野が研究に没頭していくのを「スゴいな」という目線で見てました。
先ほどの、演じながらも「和昌の気持ちがわかる」というのも同じ感覚かもしれませんね。以前から役を演じるうえでも「なりきる」のではなく「寄り添う」感覚だと話されていますね。
そうですね。それはすごく大きいです。100%役そのものになりきるんじゃなくて、どこかで自分のパーセンテージを残しておくほうが、化学反応が起こせるんじゃないか? たとえば「役90%+自分10%」なら、いつか100%を超えられるんじゃないかって思いがあるんですよね。

ドラマ『シグナル』で、主演を務める楽しさを知った

『人魚の眠る家』の撮影開始が1月11日。坂口健太郎の2018年はこの映画とともに幕を開けたが、その撮影が終了すると、時を移さず初の単独主演、および連続ドラマ初主演となる『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)がクランクインした。
以前から坂口さんは、個性的な脇役や悪役を演じることへの強い思いを語ってらっしゃいましたが、今作の星野はまさに、いろんな“色”を帯びた脇役でした。その後、連続ドラマで主演を務めていかがでしたか?
『シグナル』がクランクインするまでは、自分でもその後の自分の気持ちがまったく読めなかったんですよね。この後もまた「主演をやりたい!」と思うのか? それとも「主演はやっぱり自分には合っていない」と感じるのか? どんな気持ちになるんだろうかと…。

それが、いざ終わってみたら、主演という経験がすごく楽しかったですね。素直に「またやらせていただきたい」と思いました。もちろん、星野のような役を演じる楽しさもあるんですけど、そういう意味で、自分の中で(主演とそれ以外の役は)まったく別々のものなんだという思いが強くなりました。
どういう違いを感じられたんでしょうか?
主演以外の役のことを(作品における)“スパイス”なんて言い方をしますけど、やはり自由なんですよね。星野もまさにそうで、ある程度こちらの自由に、面白くすることができる役でした。

でも主演だと、作品に対する責任も大きいですし、物語の語り手であったり、軸となる存在ですから、周りの役ほどは“遊べない”んですよね(苦笑)。
さまざまな条件やルールのもとで、自分の味を出していかないといけない?
それはそれで楽しい作業でした。そういう意味でも、今回の経験を経たいまは、いろんなことを考えるのが面白い時期ですね。

もちろん、これまでも作品が終わるごとに必ず「もっとこうしておけば」というのはあったし、今回もあるんですけど、それだけじゃなく次が楽しみになりました。どんどん面白くなってきているんだなって感じています。

肩の力を抜いて「そのままの自分でいい」と思えるように

「MEN'S NON-NO」のオーディションに合格し、モデルとして活動を始めたのが2010年、19歳のとき。2014年に俳優デビューを果たし、世の“塩顔ブーム”を代表する存在として大ブレイク。この4年間で出演映画は15本。傍から見れば順風満帆と言えるキャリアだが、本人にとっては決して平坦な4年ではなかった。
いわゆる“ブレイク”の時期を経て、ここ数年で確実に役の幅を広げられていると思います。今年は連ドラ初主演もあって“転機”といった言葉で評されることもありますが、いまの自分の立ち位置をどう捉えていますか?
どうなんでしょうね…? たしかにデビューした当初は、自分でも「え? ちょっと…」と戸惑うような盛り上がりがあって。もちろんうれしいんですけど、自分がそこにいないような感覚もあったんですよね。

自分自身でも変な“肉付け”をしていたんでしょうね。「(世間で)こう思われているからこうしなきゃ」「こういう自分が求められているんだ」とか。いまは、もう少し力を抜いて「そのままの自分を出していいんだ」と思えるようになりました。あの頃は、自分の予想を超えたイメージの僕が作られていくというか…。
ご自身のコントロールを超えて、周囲が“坂口健太郎”を作っていった?
本当にその通りで、雑誌やテレビに出ている自分を見ても他人のような感覚がありました。当時は無理をしている部分もあったんでしょうね。でも結局、そういう自分をかたち作っていったのも自分なんだといまは思えるようになりました。

少しゆったりと構えられるようになって、何て言うか「坂口健太郎であること」を頭で考えなくてもよくなったというか。自分を出しても(芝居が)成立するようになってきたし、そうすることで逆にもっと役に没入できるようになったなと感じています。
坂口健太郎(さかぐち・けんたろう)
1991年7月11日生まれ。東京都出身。O型。2010年、「MEN'S NON-NO モデルオーディション」に合格し、専属モデルとしてデビュー。2014年、俳優デビュー。2015年には『コウノドリ』(TBS系)で連続ドラマ初出演。主な映画出演作に『ヒロイン失格』、『君と100回目の恋』、『今夜、ロマンス劇場で』など。ドラマ出演作に『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』、『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)、『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)など。

出演作品

映画『人魚の眠る家』
2018年11月16日(金)よりロードショー中
http://ningyo-movie.jp/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、坂口健太郎さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2018年11月21日(水)18:00〜11月27日(火)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/11月28日(水)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから11月28日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月1日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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