カルロス・ゴーン。2016年の東洋経済でのインタビューで(撮影:梅谷秀司)

日産自動車のカルロス・ゴーン代表取締役会長を東京地検特捜部は11月19日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で逮捕した。特捜部は日産自動車の家宅捜索も19日より行っている。

日産自動車が発表した内容では、内部通報を受けて、ゴーンやグレッグ・ケリー代表取締役の不正行為を内部調査を行ってきたとのこと。


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その結果、開示されるゴーンの報酬額を少なくするため、長年にわたり実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたことが判明。

さらにゴーンについては日産自動車の資金を私的に支出するなど複数の重大な不正行為が認められ、ケリー氏がそれらに深く関与していることも判明したという。

日産自動車はゴーンとケリー氏の解任を22日木曜日に開催予定の取締役会に提案している。

東京地検によれば、2011年3月期から2015年3月期の各連結会計年度におけるゴーンの金銭報酬が合計約99億9800万円であったにもかかわらず、合計約49億8700万円と記載した有価証券報告書を提出した疑いがもたれている。

ゴーンは開示ベースでも多額の役員報酬だった

東洋経済オンラインでは、東洋経済データベースを用いて、役員報酬に関するランキングを繰り返し配信してきた。

上位に必ずランクインしてきたのが、日産自動車の会長であるカルロス・ゴーンだ。現時点の開示ベース金額で、どのくらいの役員報酬を受けてきたのだろうか。今後、有価証券報告書の過小記載分が過去にさかのぼって訂正されるとみられるので、あくまでこれまでに開示された金額だが、それで見ても高額な役員報酬の実態が見えてきた。


個別にゴーンの開示ベースの報酬を見てみると、直近2018年3月期の日産自動車からの収入は10億9800万円から7億3500万円にダウンしていた。

ただ、2016年に傘下に入れた三菱自動車の会長としても2億2700万円を得ており、両社からの報酬を合算すると9億6200万円になる計算だ。

次に、9年前の役員報酬の調査開始以来、2018年3月期までの平均役員報酬の金額を完成車メーカー7社(日産自動車・トヨタ自動車、ホンダ、SUBARU、マツダ、スズキ、三菱自動車)ごとに比較した。

ランキングから見えてきたことは、他社と比べても非常に高い日産自動車の平均役員報酬額の実態だ。

日産自動車は、東洋経済の9年前の調査開始以来、平均役員報酬額は完成車メーカー他社と比べても1位。9年平均で見ても2位のメーカーにダブルスコアの大差をつけるほどのトップとなっている。その多くはカルロス・ゴーンのこれまでの10億円以上の報酬がかさ上げとなっていた。

東京地検より、過少申告が指摘される2011年3月期〜2015年3月期で見ると、日産自動車は2億円台なのに対し、他社は1億円に届かないケースがほとんどだ。他社と比較したときの高額さが過少申告の誘因になった可能性もある。(一部敬称略)

従業員の平均給与は日産よりも他社の方が高い

9年平均の役員報酬と従業員との報酬格差は27倍で、従業員平均給与は日産よりもトヨタやホンダといった他社のほうが高いケースもあった。


役員平均報酬の計算方法は、社内取締役(監査等委員会設置会社の監査等委員も含む)と執行役の平均を算出したものだ。

次ページ以降では2018年から2010年までの完成車メーカー7社の役員報酬の平均額を個別にまとめている。