日産と三菱、カルロス・ゴーン会長を解任へ。有価証券報告書に合計50億円過少記載で逮捕

ルノー会長兼CEOにして日産自動車会長、三菱自動車会長、ルノー・日産・三菱アライアンス代表を務めるカルロス・ゴーン氏と、日産自動車代表取締役のグレッグ・ケリー氏が、有価証券報告書に自身の報酬を実際より少なく申告していたとの疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。

この逮捕により日産は22日に、三菱は20日にそれぞれ予定する取締役会でゴーン氏の会長職解任を提案する予定であることをあきらかにしています。東京地検特捜部の話では、ゴーン会長らは過去5年間の報酬額を実際の99億9800万円に対し約半額の49億8700万円しか申告していなかったとのこと。他にもケリー氏の関与により、日産自動車の投資資金および経費を私的流用するなど、不正行為が複数あったとしています。

日産の西川社長はこうした事実を社内調査で把握し、不正はゴーン氏本人の主導で行われたうえケリー氏も深く関わっていたと説明。「会社として断じて容認できない」としました。また、このような問題が横行した原因について「ゴーン氏ひとりに権限が集中しすぎていることが問題」だとし、長期政権による負の側面が肥大化してきたと指摘しました。

またグレッグ・ケリー代表取締役についても、ゴーン氏の側近として様々な仕事をしてきたこともあり、ゴーン氏の力をバックに、社内に相当な影響力を持っていたとしています。日産自動車は11月22日に取締役会を開き、ゴーン氏とケリー氏の解任提案を実施するとしています。

三菱自動車は、今回の逮捕と日産の発表を受け、三菱社内でも同様の不正行為がなかったかを速やかに調査すると発表、逮捕された事実が企業統治とコンプライアンスに関わる問題であるため、やはりゴーン氏の会長職、代表取締役からの解任を取締役会で話し合うとしました。

日産自動車は、不正の発表から東京地検特捜部による逮捕、さらに取締役会への会長職解任提案予定と、かなりスピーディな対応をとっており、一連の流れがいかに周到に準備されていたかをうかがわせます。なお、ゴーン氏はルノーからも約740万ユーロ(約9億5000万円)の報酬を受け取っており、やはり高すぎる報酬が株主から指摘されていました。今回の逮捕を受けてパリ市場のルノー株は急落しています。

カルロス・ゴーン氏といえば、企業再建を次々と成功させてきた実績があり、低迷していた日産の業績をV字回復させたことで、日本でもその手腕が評価されました。立て直しのための合理的な経営は日産車から面白味を奪い、つまらなくしたともいわれるものの、その一方でフェアレディZを復活させたり、R35 GT-Rの開発を指示するなど、採算性が低くても象徴的なモデルは支持する姿勢を見せていました。ハイブリッドを飛び越えて開発させたEVのリーフも、今年春には初代モデルからの世界累計販売台数が30万台を突破し、世界で最も売れたEVと言われるようになっています。

また、ゴーン氏はルノーへの関与を強めるフランス政府の、日産への介入を防止してきた立役者ともいえます。西川社長は、ゴーン氏の逮捕は3社のアライアンスに影響しないとするものの、今後の動向が気になるところです。

無慈悲なコストカッターとも言われるゴーン氏ですが、自身の報酬についてはカットどころか増やしつづけ不正までしていたとなると、なんとも言いようがありません。