松岡禎丞の「本気」と島崎信長の「影」。互いの魅力を語り合う“親友”対談

人気アニメ『ソードアート・オンライン』の新シリーズ《アリシゼーション》編が10月にスタートした。今作では、主人公・キリトにとって大きな存在であるユージオが登場。キリト役を務めている松岡禎丞は、ユージオ役に決まった島﨑信長に「ユージオを信長がやってくれたらうれしいな」と以前から話していたという。相手の言葉を自然と補うように質問に答える様子から、演じる役柄以上の相棒感や深い信頼が伝わってくる。そんな親友ふたりが作品の魅力を熱く語り合った。

撮影/笹井タカマサ 取材・文/佐久間裕子 制作/アンファン

「2018秋のアニメ」特集一覧

▲左から松岡禎丞、島﨑信長

「ユージオを信長にやってもらいたいな」が現実に!

島﨑さんはプライベートでも松岡さんと仲が良いそうですが、ユージオ役に決まったときの心境はいかがでしたか?
島﨑 まず初めにゲームのユージオ役に決まったときはすごくうれしいと思いました。最初のアニメシリーズが放映されていた頃から、禎丞が「ユージオを信長がやってくれたらうれしいな」と言ってくれていたんですね。以前からふたりでバディやW主人公的な役ができたらいいよねと話していたこともあり、夢に一歩近づけた気がしました。
松岡 以前からふたりで話してたよね。『ソードアート・オンライン』が始まった頃には、このままシリーズが続いていけば、もしかしたら『アリシゼーション』をやるかもしれない、もし可能ならユージオを信長にやってもらいたいなって気持ちは強くありました。
ゲームのユージオ役に決まったとき、松岡さんにご報告はされましたか?
島﨑 はい、連絡しました。
松岡 最初は何が来たんだろうと思いました。というのも、LINEで「ユ」、「ユ」、「ユ」という文字だけが送られてきたので(笑)。それで「あれ、ユ……ユ? ん? 今度やる作品かな」と思ったんですけど、その数週間前にユージオのキャスティングのことを話していたんです。それを思い出して「……はっ!?」となりました(笑)。
ビックリさせようと思ったとか?
島﨑 いえ、なんとなく気分で「ユ」、「ユ」と送ったんですよね(笑)。決まったときは僕も驚いて、禎丞に教えたら驚くだろうし、喜んでくれるとは思っていました。
アニメでも島﨑さんがユージオを演じると知って、どう思われましたか?
松岡 アニメでは、また一から世界観を作っていくことになるので、長い付き合いの信長や、ゲームでもアリスだった茅野(愛衣)さんが加わるのは心強かったですね。

なぜかというと、家でリハV(事前に渡される練習用の映像素材)をチェックするときも、知っている人であれば相手がどんな演技をしてくるのか、大まかな想像ができるので。そして収録では僕が信長や茅野さんの演技を受けて引き出されたものを出して、さらに向こうが反応する。そしてそこに僕もまた返す。いわゆる「合戦」ですよね。
掛け合いというより「合戦」と。
松岡 はい。演技合戦です(笑)。そういう意味でもユージオが信長で良かったな、と。
島﨑さんもよく知っている相手だと、どんなお芝居が返ってくるか予想できますか?
島﨑 どう返ってくるかはその場の反応なのでわからないけど、もちろん相手の演技に応えたいと思っています。

芝居をしているあいだは頭でいろいろ考えたりもするんだけど、最終的には感覚や瞬発力、そしてその場で感じたものを出すことが大事だと思うんですね。禎丞はそれが自然と噛み合う相手なので、安心できるし、やりやすい。だからこそ良いものができるだろうなって思います。
松岡 この10年、いろんな現場があったじゃない? そこでカッコいい役からド変態な役までお互い見てきたからね(笑)。
島﨑 そうだね(笑)。

声色はナチュラルに、言い回しで子ども時代を表現

『アリシゼーション』はキリト、ユージオ、アリスという幼なじみ3人の過去のエピソードから始まりましたが、茅野さんを含めた3人はどんな雰囲気なんでしょうか?
島﨑 やりやすかったよね?
松岡 うん、違和感がなかった。今回は幼少期を演じるときも、ガッツリ幼少期の芝居には持っていきたくなかったんです。
それは声や演技に子どもらしさを全面に押し出さないということでしょうか?
松岡 声を作ることに重点を置いてしまうと、演技の配分がおかしくなることがあるんですよね。今回は声色を作ってはいるんですけど、その中でも演技としてナチュラルにできるラインを意識しました。たとえば言い回しで年齢の低さは表現できるんです。そういう部分に重点を置いて、幼い頃のキリトを演じていきました。
島﨑 そうだね。そういうことをいろいろ考えなければならなかったので、最初は不安もあったんですけど、やってみたら楽しくスムーズにできました。そうできたのは禎丞と茅野さん、ふたりのおかげだし、3人の呼吸が合ったからだろうね。
松岡 うん。“if”ではありますけど、アリスが連れ去られなかったら、このまま3人の物語として新シリーズが展開していってもいいぞって雰囲気はあったよね(笑)。
島﨑 うん、もうちょっとほのぼのしていたかったね。3人で仲良く過ごしたよっていう話を1クールやりたかった!(笑)

全4クールという長い時間をかけて作れることがうれしい

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』は全4クールに渡る長丁場ですが、本作に臨む心境はいかがですか?
島﨑 どちらかというと……、放映期間が短い作品のほうが難しいのかな、と。
松岡 うん、難しい。
1クールなら3ヶ月という短期間で役柄を掴み、チーム感を育んでいかないといけない難しさがあるからでしょうか?
島﨑 昔は基本、年単位の作品がほとんどだったんですよね。これは先輩の受け売りになってしまうんですけど、それこそ1クール、2クールやって初めて役が自分になじんできて、やっと自由にできるようになるという話を聞いたことがあるんですね。
役が自分のものになるまでには、想像以上に長い時間がかかるのですね。
島﨑 そう考えると、1クールでひとりの人間を演じきったり、自由に表現できるところまで持っていくのは大変なことだなと思うんですよね。だから長い時間をかけて作っていけるのはありがたいです。
松岡 本当に!
島﨑 もともとゲームからの参加だったし、作品そのものに関わっている期間はもっと長いわけで。禎丞なんてずっとキリトを演じているものね。
松岡 そうだね。オーディションを入れると6、7年は経ってる。
小学校に入学した子が卒業する年月が経っているということになりますよね。
松岡 そうですよね。ビックリしますよ。
島﨑 新シリーズではあるのですが、現場もできあがっている感があります。
松岡 うん、そうだね。そうなんだけど、原作の川原 礫先生と茅野さんのとある対談記事を読んだんだけど、川原先生が「(松岡さんが)現場で笑ってる」って言っていて……(笑)。
笑ってるとは?
島﨑 リラックスかな(笑)。
松岡 それは信長の存在がデカいんですよ。
島﨑 仲がいい男子がいるのはね。
松岡 今までキリトの周りは、女性キャストが多かったんですよね。メインの戸松(遥)さんだったり、日高(里菜)であったり。
島﨑 男性キャラも先輩が演じられることが多かったんだよね。
松岡 同世代がいなかったんです。1期、2期を通して現場を振り返ってみると、僕はずっと台本を見ていたな、と(笑)。
島﨑 (笑)。
松岡 同期といえば、逢坂良太がゲストとして登場して去っていきましたが(笑)。
まだそこまで親しくなかったんですね。
松岡 現場ではあまり会ったことなかったんです。呼び方も「良太」なんて呼んでいませんでしたし……。
島﨑 しかも1話のゲストとして主人公の隣に座って話すとなると、ゲスト側もちょっと遠慮するというか……(笑)。
松岡 うん。そうなんだよね。

現場に気兼ねなく相談できる相手がいるありがたみ

松岡さんは島﨑さんがいることによって、心穏やかに現場に臨めているんでしょうか?
松岡 心穏やかって言い方もアレですけど……(笑)。たとえば現場に信長がいれば、演技のことでも何でもかんでも話せるんですよ。これもね……いろんなところで話題になっているんですけど、1期のときに僕は口を滑らせてしまったことがあるんです。
何を言ったんですか?
松岡 戸松さんに「どうやってプロポーズされたらいちばんうれしいですか」と。
島﨑 まあ……正しい調査だよ(笑)。
そう思います。
松岡 ほかにも直葉役の竹達(彩奈)さんに「お兄ちゃんの代わりに……キリト君を好きになることもなかったのにっ!!」と言われるシーンがあったので、そこで「『ごめん』というセリフをどう言われたらいちばん傷つきますか?」と聞いたんですよ。
確かにそれはひどいです!(笑)
松岡 (伊藤)かな恵さんにも「松岡くん、それはひどいよ!!」と言われました(笑)。僕は聞いただけじゃないですか!? と思ったんですが。
島﨑 でもそれは正しいと思うよ(笑)。そこで傷ついたから後々の演技に反映されて行くんだと思うし。

戸松さんへのプロポーズの質問にしたって、視聴者の方にも、アスナにも、よりときめいてもらえるようなプロポーズをしたいなと思ってのことだったんだよね? 「ごめん」にしたって、女性が本当はどう思うのか、男性にはわからないじゃないですか。想像することはできるけど。申し訳なさそうに謝ったほうが傷つくのか、それとも心なく言ったほうが傷つくのか……。
松岡 そうそう、人によっては一気に拒絶されたいかもしれないですし。
島﨑 男の「ごめん」の言い方で、いろんな心情を相手は抱くわけですよ(笑)。
なるほど(笑)。今回の『アリシゼーション』の現場はわからないことがあったら、島﨑さんに聞けるようになったんですね。
島﨑 毎回、何かしら話してますね。
松岡 言い方、受け取り手の感情……いろいろ話すよね。「自分はこう思うけど、信長どう思う?」と聞いたりします。
島﨑 ユージオ的にはこう受け取ったから、これはこうじゃない?と返したり。「僕は違和感あるけど、聞いていて違和感なかった?」とお互いに聞けますし。気にせず話せる相手がいるのはありがたいですね。
今回、共演してみて新たに発見したお互いの魅力はありますか?
島﨑 いや……新たにというより、改めて実感したという感じですね。ずっと魅力的な演技をしていることは知っているし、見てきましたから。それが今回共演して「ここはいいな」「ここがスゴいな」と改めて思わされる、そういう部分にたくさん助けてもらっています。
松岡 僕らふたりとも10年以上声優をやってきて、その延長線上で思ったことなんですが……信長が演じるユージオを今まで見てきて、信長の声色には影があるように感じるんです。とくに思ったのが2話ですね。キリトと会ってユージオが話しかけるんですけど、そこでも良い意味での闇を感じるというか(笑)。
ユージオの闇みたいなもの。
松岡 オープニングを見ていただければわかるんですけど、ユージオっていきなりひとりになるんですよね。幼い頃は幼なじみ3人で過ごしていたけれど、ユージオが走りだすと途端にひとりになる。

キリトもそうですけど、何かを失った、何かができなかった……ユージオもそういう経験があって、そういう人間の心には後悔が残ってしまうんですよね。どこかでアリスを助けられなかったという悔いが残っている。ただ悔いても、《アンダーワールド》の世界ではどうすることもできない。

そんなユージオの闇をアリスの妹のセルカは感じていたと思うんですが、僕もそれをユージオの言葉のニュアンスから感じるんです。それによって信長にしかできないユージオになっていると思うんですよね。自分にはできないなとすごく感じます。
では島﨑さんが、松岡さんのお芝居で改めて素敵だなと思ったところを教えてください。
島﨑 禎丞が演じることでキリトにリアリティーが乗ると思います。VRの世界ではあるけれど、演技にもし「どうせゲームだし」という想いが乗ってしまうと、途端に興ざめしてしまうと思うんですね。でも松岡禎丞は「命がかかっているんだ」という想いが伝わる演技をずっとやってきたから、緊張感や緊迫感が出てくるし、観ているほうは「キリトって本気なんだ」と思える。

本気だからキリトはカッコイイし、人間的に惹かれる部分にも繋がるんだと思うんです。叫びにしても、その状況や心持ちによって声に乗るものが変わると思うんですけど、松岡禎丞はいつも本気で仕事をしている人間で、その気持ちが演技にも乗るから、リアリティーを感じさせてくれるんだろうなって。そして、それを誰の心にも響く形で伝えられる役者だなと思います。

破天荒なキリトを見守るユージオの「お母さん感」

1話では幼なじみだったキリトとユージオですが、次に再会したときは、お互い初対面だと思ってましたよね。現在までのあいだにバディ感は生まれましたか?
島﨑 ユージオとキリトがルーリッド村を旅立って修剣学院に入るまでのエピソードは、アニメではけっこう省略されているんですね。そのあいだにふたりがどう過ごしたかは原作に描かれているので、ふたりで話し合うことで埋めていきました。年齢を積み重ねた感じをどれくらい声に出すかという話もしましたね。6、7話ではすっかり相棒感は出ているんじゃないかと思っています。

ルーリッド村にいた頃は、ユージオはちょっと遠慮して、キリトを見上げているようなところがあった。でも7話ではユージオがキリトにあきれていたり、ツッコミを入れるようなところも描かれているんですよね(笑)。
たしかに砕けた関係になりました。
島﨑 「しょうがないなキリト……そういうところあるよね」という感じになっていますよね(笑)。そう考えると距離感がグッと縮んでいる気がするし、ふたりのその様子から、そこまで一緒に過ごした年月も感じていただけたんじゃないかと思います。
松岡 キリトとユージオには、覚えていなくても絆的なものがあると思うんですよね。7話以降はお互い対等な関係として描かれているので、僕もふたりは相棒なんだなと思っています。

キリトとユージオのお話には、アスナがいないじゃないですか。これは信長にも言ったんですけど、キリトにとってのユージオってアスナ感があるんですよ(笑)。
どんなところにアスナ感が?
松岡 ユージオがキリトに注意するときって、お母さん感があるんですよね(笑)。
島﨑 わりとキリトが破天荒ですからね。常識を破っているんだけど、ギリギリのところでルールを守っている。そしてたまにだらしなかったり、いい加減なところがあるから、ユージオが世話を焼いたり、ツッコミを入れたりする感じ。僕はそこにも相棒感があると思っています。相手のことをわかっているんだなと。
これからも楽しみな展開が続きそうですね。
島﨑 いよいよふたりは修剣学院に入りました。今までもいろんなことが起こりましたが、ここからいろんな出来事が押し寄せてきて、見どころばっかり!(笑)

それでもアニメでは、尺の都合でお話を省略している部分もあるので、アニメをご覧になった後、そこまでの原作も読んでもらえると、より楽しんでもらえるかなと思います。何も知らずにまずアニメを見たい!という方には、その順番がおすすめです。
松岡 ちょっと先のお話をするなら、今までも怒濤の展開ではありましたが、怒濤の怒濤が来ます(笑)。原作を読んでいらっしゃる方の想像も超えたいと思いますし、アニメーションだからこそできる表現になると思うので、みなさんの期待を超えられるように演じています。毎週毎週、常に待ち遠しいと思ってもらえる作品になれるようにがんばります。
※タイトルが「島崎信長」となっておりますが、「崎」の字は「立つ崎(たつさき)」が正式表記です。
松岡禎丞(まつおか・よしつぐ)
9月17日生まれ、北海道出身。O型。2009年、『東のエデン』(AKX20000)でデビュー。主な出演作に『ソードアート・オンライン』(キリト)、『食戟のソーマ』(幸平創真)、『BAKUMATSU』(岡田以蔵)、『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』(アスタロト)、『ゴブリンスレイヤー』(槍使い)、『デビルズライン』(安斎結貴)など多数。2019年には『盾の勇者の成り上がり』(天木 錬)、『五等分の花嫁』(上杉風太郎)などに出演する。
島﨑信長(しまざき・のぶなが)
12月6日生まれ、宮城県出身。A型。2009年、『戦場のヴァルキュリア』(ヘルバート・ニールセン)でデビュー。主な出演作に『バキ』(範馬刃牙)、『ブラッククローバー』(ユノ)、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』(ユージオ)、『ルパン三世 PART5』(八咫烏五郎)、『Free!』シリーズ(七瀬 遙)、『牙狼〈GARO〉 ーVANISHING LINEー』(ルーク)など。2019年に映画『コードギアス 復活のルルーシュ』(シェスタール)などに出演する。

「2018秋のアニメ」特集一覧

出演作品

TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
10月6日(土)よりTOKYO MX・BS11・MBSほか各局にて放送中
https://sao-alicization.net
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、松岡禎丞さん×島﨑信長さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2018年11月19日(月)19:00〜11月25日(日)19:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/11月26日(月)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから11月26日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき11月29日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
  • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
  • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。