阪神・藤川球児【写真:荒川祐史】

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広島・フランスアは育成スタートながら驚異の成績を残した

 K9、日本では奪三振率と言われる指標は、奪三振数を投球回数で割って9をかけたものだ。その投手が9回を投げれば何個の三振を奪うかという数字。三振は、振り逃げ以外の出塁が考えられず、投手にとって最も安全なリザルトとされる。

セ・リーグ 50イニング以上を投げた62人のK9ランキング。上位15傑。

1フランスア(広) 11.22(47試 65回 81奪三振)
2藤川球児(神) 11.10(53試 54.1回 67奪三振)
3三嶋一輝(De) 10.85(60試 68回 82奪三振)
4パットン(De) 10.77(58試 56回 67奪三振)
5桑原謙太朗(神) 10.26(62試 57回 65奪三振)
6岩崎優(神) 10.16(61試 62回 70奪三振)
7山崎康晃(De) 10.07(57試 56.1回 63奪三振)
8一岡竜司(広) 9.75(59試 56.1回 61奪三振)
9風張蓮(ヤ) 9.52(53試 57.2回 61奪三振)
10ドリス(神) 9.39(55試 53.2回 56奪三振)
11中尾輝(ヤ) 9.333(54試 54回 56奪三振)
12才木浩人(神) 9.329(22試 82回 85奪三振)
13澤村拓一(巨) 9.29(49試 52.1回 54奪三振)
14浜口遥大(De) 9.22(19試 94.2回 97奪三振)
15エスコバー(De) 9.17(53試 53回 54奪三振)

 今季、広島で、不振に陥った今村猛に代わって中継ぎ投手として活躍したフランスアが1位。5月20日まで育成だったが、まさに救世主的な存在となった。最速158キロの剛速球で8月の月間MVPにも輝いた。

阪神の藤川は今季38歳を迎えながらリーグ2位の数字を叩き出す

 驚異的なのは阪神の藤川球児。「JFK」とよばれ、勝利の方程式を担ったのは、もう10年も前のことだ。J(ジェフ・ウィリアムス)もK(久保田智之)もとっくに引退している。以後、藤川はMLBに挑戦、さらに独立リーグの高知でも投げて阪神に復帰。松坂世代の藤川は今季38歳になったが、K9はリーグ2位の11.10をマークした。不振に陥ったマテオに代わり、セットアッパーの重責を担った。

 規定投球回数以上の投手はこのランキングには出てこない。最高は巨人・菅野智之の8.91(17位 202回200奪三振)だった。

 投球回数より多くの三振を奪う投手を、一般的にパワーピッチャーという。K9でいえば9.0以上だ。今季のセ・リーグは16人(16位のDeNA・東克樹は9.06)。パ・リーグは7人だからセの方がパワーピッチャーが多いように見えるが、一概にはそうとは言えない。指名打者制がないセは投手が打席に立つ。投手が三振をする率は非常に高いことが、セの投手陣のK9を押し上げているのではないか。

K9が低い5人も見ておこう。

58藤嶋健人(中) 5.05(19試 71.1回 40奪三振)
59ブキャナン(ヤ) 4.90(28試 174.1回 95奪三振)
60野村祐輔(広) 4.53(20試 119.1回 60奪三振)
61吉見一起(中) 4.37(20試 125.2回 61奪三振)
62アドゥワ誠(広) 4.01(53試 67.1回 30奪三振)

 この中には今季不振で、三振が奪えなかった投手もいるが、打たせて取るのが持ち味の投手もいる。今年10勝を挙げたブキャナンはその典型だろう。

 広島のアドゥワ誠も今季デビュー。セットアッパーとして活躍したが、K9は最も低かった。2シームが持ち味の、打たせて取るのが得意なタイプだった。広島の中継ぎ陣には、最もK9が高いフランスアと、最も低いアドゥワ誠がいる。他球団の打者にとっては厄介な存在だったはずだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)