ズべレフ戦でのボールボーイの行為についてフェデラーが言及している【写真:Getty Images】

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土壇場のプレー中断に絡んだ2人に配慮、ズベレフへ「笑顔を見せてほしい」

 男子テニスのツアー最終戦「Nitto ATPファイナルズ」は17日、準決勝でアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)がロジャー・フェデラー(スイス)を7-5、7-6で破り、決勝進出。しかし、第2セットのタイブレーク、ボールボーイの“落球”をきっかけにズベレフがプレー中断を要求。以降、流れが傾いたため、フェデラー贔屓の観衆から勝利者インタビューまでブーイングする事態となった。海外メディアが動画付きで公開し、ファンに賛否を呼んでいたが、フェデラーはボールボーイに対して粋な激励をしている。

 百戦錬磨の王者にとってもまさかの展開だった。問題のシーンは第2セットのタイブレーク、フェデラーが4-3として迎えた場面だ。プレー中にズベレフが突如、「ウェイト、ウェイト!」と叫び、プレーを止めた。フェデラーの後方で手に持ったボールを落として慌てて拾い上げたボールボーイの姿が視界に入り、これを主審にアピール。主張が認められ、プレーはやり直しとなった。

 ただ、この後にフェデラーのミスもあってミニブレークに成功したズベレフが勝利し、結果的に流れを左右する一因になってしまった。直後の勝利者インタビュー、世界的人気を誇るフェデラー贔屓の観衆から大ブーイングが降り注ぎ、ズベレフも「初めに僕はタイブレークの際のボールボーイが落球した件について謝りたい」と切り出し、勝者が謝罪をする異例の展開となっていた。

 ATP公式中継サイト「テニスTV」公式インスタグラムは実際にボールボーイがボールを落とし、ズベレフがプレー中断を要求する実際の様子を動画付きで公開。海外ファン、メディアに波紋を呼んでいたが、フェデラーが擁護したのは不運の展開に巻き込まれてしまった2人だった。

今季最後に示した王者の品格「これは起こり得ることだと思った」

 英地元紙「デイリー・エクスプレス」によると、ズベレフに対して「彼はきっと今夜、ディナーにくるだろう。これは冗談だけど、笑顔を見せてほしい。そんなに深刻に考えることではない」とジョーク交じりに語ったという。

 ボールボーイに対しては「僕は彼に尋ねた。『君はボールを落としたの?』と。彼の言ったことが理解できなかったからもう一度、聞いた。彼は『はい』と言った」と舞台裏を明かした上で「大丈夫、問題ない。これは起こり得ることだと思った。彼がよく眠れることを願っている」と慮ったという。

 自身にとっては流れを失う引き金ともいえるプレー。それでも、誰を責めるわけでもなく現実を受け入れ、ズベレフとボールボーイに対して粋な激励を送ったフェデラー。その裏には無用な批判を向けないでほしいとの配慮もあっただろう。最後は王者らしい品格を示し、今シーズンに幕を下ろした。(THE ANSWER編集部)