GPシリーズ連勝を飾った羽生【写真:Getty Images】

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演技後、立ち上がって拍手「コメントしなきゃいけないことさえ忘れた」

 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第5戦ロステレコム杯は17日、男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位の羽生結弦(ANA)が167.89点をマーク。合計278.42点で自身初のGPシリーズ連勝を飾った。当日の公式練習で転倒し、右足首を痛めながら果たした戴冠。現地放送局で解説を務めたロシアの重鎮タチアナ・タラソワ氏は「彼は闘った。引き下がらなかった」「未来を切り開く人を愛してる」と賛辞を送り、自身のインスタグラムで直接労った実際のシーンを画像付きで公開している。

 魂を込めた4分間の舞いはタラソワ氏の心を確かに打った。右足首に痛みを抱えながら、序盤の4回転ジャンプ2本を綺麗に着氷。美しいステップ、スピンで魅了し、後半に転倒こそあったが、堂々と演じ切った。アクシデントを知る観衆から無数のくまのプーさんが投げ込まれると、放送席にいたタラソワ氏も立ち上がって拍手を送り、リンク上の羽生を称えた。

 解説に戻ると、タラソワ氏は手放しで称えた。「知ってますか? 私はコメントをしなければならないことを忘れてさえいました。なぜならハニュウが闘ったから、とてつもない大きな喜びを得ていたからです」と我を忘れる感動だったことを明かした。その上で、手負いの状態で演じ切ったことに賛辞を述べている。

「今日の練習での転倒と怪我でもちろん、少し心の動揺があったでしょう。でも彼は闘った。引き下がらなかった。彼は試合に出た。私たちは地平線の彼方に彼とともにある秘められたものを見ている。なぜなら私たちは自分たちの将来を(そこに)見ているから、本当にありがとう」

演技後に「よくやった」と羽生を労う実際のシーンもSNS公開

 さらに、演技中に咄嗟に構成を変更し、頭を使って演技したことを振られると「スケーターが頭脳を駆使するというのは一番肝要なことです、なぜなら頭脳は衝動を与えるから」と頷き、「今から彼のところへ行って、私に与えてくれた喜びと私が得た授業に感謝します。私はこういった私たちのために未来を切り開いてくれる人を愛しています」と語った。

 また、多くの大会で優勝し、五輪で連覇をしながら現役生活を続けていることについて問われ、タラソワ氏は「彼は一番難しい道を選んだ。なぜなら、それなしには彼は生きられないから」と王者に宿る飽くなき挑戦心に理解を示し、締めくくっていた。

 宣言通りに演技後、羽生のもとを訪れて対面を果たし、真っすぐに目を見つめて労ったシーンを自身のインスタグラムに画像付きで公開。ロシアメディアによると「よくやった」と伝えたという。現代最強スケーターに対する思いが伝わってくる1枚だった。ロシアの重鎮に感動を与える熱演を披露した羽生。今はただ1日も早い怪我の回復を祈るばかりだ。(THE ANSWER編集部)