忘年会などお酒を飲む機会が増える時期を控え、「痛風持ち」の会社員の方などは不安な日々を過ごしているかもしれません。プリン体を含むビールなどのお酒が、痛風の症状を悪化させるといわれているためです。痛風持ちの人はビールを避けて、「プリン体ゼロ」の発泡酒を飲むなどの工夫をすれば、問題ないのでしょうか。痛風の専門医に聞きました。

アルコール自体が尿酸値を上げる

 痛風は「尿酸」という物質が関節の中で固まって結晶になることで起こる、関節炎を主な症状とする病気です。突然発症するので「痛風発作」と呼ばれることもあります。痛風発作が起こる少し前に、足の親指の付け根や足首、膝にむずむずするような違和感が生じます。痛みが激しく、歩行困難になることも少なくありませんが、10日前後で軽快します。発作が起きるのは、当初は年1〜2回程度ですが、放置すると次第に頻発・慢性化します。

 血液中の尿酸値が高いほど痛風は起こりやすく、尿酸値は一般に男性の方が女性よりも高いので、痛風を発症するのはほとんどが男性です。また、肥満や高脂血症、高血圧症などの生活習慣病の人に患者が多いのも特徴です。

 東京女子医科大学膠原(こうげん)病リウマチ痛風センター膠原病リウマチ内科診療部長の山中寿さんに聞きました。

Q.痛風はプリン体が関係すると聞きます。プリン体とはどのような物質で、痛風とどのように関係しているのでしょうか。

山中さん「プリン体は生物の体にとって不可欠な物質です。遺伝子をつかさどるDNAやリボ核酸(RNA)の半分はプリン体でできていますし、体のエネルギー源であるアデノシン三リン(ATP)もプリン体です。そのプリン体が使われた後に老廃物としてできるのが尿酸で、その尿酸が関節の中にたまると痛風の原因になります」

Q.ビールにはプリン体が多く含まれているといわれます。痛風を発症した場合、ビールを飲んではいけないのでしょうか。

山中さん「ビールはアルコール飲料の中で最も多くプリン体を含んでいますので、痛風を発症した人がビールを控えた方がよいのは確かです。一方で、『プリン体の少ない焼酎なら、いくら飲んでもよい』と考えるのは間違いです。アルコール自体が尿酸値を上げるため、ビールに限らずどんな種類のお酒でも尿酸値が上がるからです」

Q.発泡酒や第3のビールはどうでしょうか。「プリン体ゼロ」をうたう発泡酒や第3のビールは問題ないのでしょうか。

山中さん「アルコール自体が尿酸値を上げますので、発泡酒や第3のビールであれば大丈夫ということはありません。『プリン体ゼロ』をうたっていても、同じです」

Q.ノンアルコールビールは、痛風になりにくいのでしょうか。

山中さん「理論的にはそうですが、科学的な根拠はありません」

Q.痛風の症状がある人は、忘年会や新年会などお酒を飲む機会が増える時期を前に、どのような対策をすればよいでしょうか。

山中さん「痛風の治療をきちんと受けること、それが最善の対策です。治療を受けずにお酒を飲める方法などありませんし、私の立場からは勧めません」

 ちなみに、日本痛風・核酸代謝学会がまとめた「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)」では、尿酸値への影響を最低限に保つアルコール飲料の目安量は、日本酒は1合(180ミリリットル)、ビールは500ミリリットル、ウイスキーは60ミリリットル、ワインは180ミリリットルと定義されています。