ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)による2014年イノベーション・レポート(2014 Innovation Report)では、要点のひとつとして、同紙がこれまで保管してきたコンテンツを十分に活用できなかったことが挙げられていた。同紙はこの点を修正するため、1800年代の半ばからおよそ600万枚も保管してきた写真のデジタル化を進めている。

保管資料は、既存パブリッシャーの大きな強みだ。新規参入したパブリッシャーとは異なり、こうしたコンテンツを再配信することでトラフィックを増やしたり、バックナンバーや写真として販売したり、広告を作成したりすることもできる。アトランティック(The Atlantic)やエコノミスト(The Economist)といったパブリッシャーもこうした手法をとってきた。

ニューヨーク・タイムズは、保管資料の商業利用を禁止しているわけではないが、写真のデジタルアーカイブはニュース編集室のみが使用できるようにしているという。編集室はそれをニュース報道や、時事に関連する写真として再利用する。

保有財産の価値を理解



同紙の編集局長補佐を務めるモニカ・ドレイク氏は、「これまで実に長期にわたり、当社は世界中の出来事を報道してきた。保有している情報量は莫大だ」と語り、次のように述べた。「現時点での目標は、これまで長い時間をかけて集めてきた当社が保有する資料や情報が日の目を浴びるように活用することだ。当社はニューヨーク・タイムズを、前世紀に起こったことや、司法長官が初めて退任したときのことを知りたいと思った人が訪れる場所にしたいと考えている」。

同紙はベロニカ・チェンバース氏が率いるストーリーテリングチームを立ち上げた。このチームは保管された写真の発表や、ほかのデスクからリクエストされた保管写真の提供といった業務を担当する。同チームの最初の成果となる、カリフォルニアの発展をテーマとしたフォトエッセイが11月第2週に発行された。

ドレイク氏は、前述のイノベーション・レポートやタイムズ紙によるアフリカ系に関するこの記事は、まさに保管された写真の価値を示すものであり、「当社はこうした保有財産の価値を理解している。デジタルオーディエンスの心に響く財産だ」と語った。

現代の視点でデータ化



問題は、こうした写真がすべて人の手でフォルダに移され保管されていることだ。当時では意味があったカテゴライズでも、現代の視点ではそうなっていない場合があるとドレイク氏は明かす。

「ズートスーツ(1940年代初期のアメリカを中心に流行した、極端にだぶだぶしたスーツ:参考)のフォルダもあった。ズートスーツの写真フォルダができるほど大量に撮ったことがあったということだ」と同氏。

保管されている写真を人の手でタグ付けするのはあまりにも時間がかかるので、同紙では実施していないが、10人のチームを雇い、写真のスキャンとアップロードを行っている。Googleを活用して写真をクラウドに保存し、スキャンした写真の手書きキャプションをテキストに変換することで検索しやすくしている。この作業は今年の夏にはじまり、1年以上かけて完了する見込みだ。

Googleとの協力関係



このGoogleとの取り決めは、Google Cloudのカスタマーとしての同紙とGoogleの関係性があって実現した。両社は11月9日に保管作業について発表を行った。この両社の発表は、中小規模のメディア企業の保管写真のデジタル化をはじめとするタスクを実施しているGoogleのニュースイニシアティブに関するクラウドプログラムとは関連していない。

Lucia Moses(原文 / 訳:SI Japan)
Image via The New York Times.