ANA(全日空)が、運航乗務員(パイロット)の飲酒により5便で遅延が発生したことについて対策を講じ、国土交通省へ報告。適度な飲酒量を社内規則に明記する、ポータブル呼気検査機を貸与するといった対策が行われます。

5便で遅延が発生

 ANA(全日空)は、2018年10月25日(木)に運航乗務員(パイロット)の飲酒により5便で遅延が発生したことについて対策を講じ、11月16日(金)に国土交通省へ報告したと発表しました。


羽田空港を発着するANA機(2016年3月、恵 知仁撮影)。

 そこでANAは、以下を「問題点」として挙げています。

・(制限時間)乗務開始時刻12時間前を超えて飲酒した(12時間前以降は飲酒禁止)。
・(飲酒量)飲酒量を自己のコントロール下に置いていなかった。
・(相互監視)ANAの運航乗務員が同席していたにもかかわらず、注意することなく飲酒を続けた。

 そしてこの「問題点」を受け、ANAは以下の3点を「課題」としました。

・(自覚の欠如)運航乗務員としての、飲酒制限時間と飲酒量のコントロールに対する意識と自覚の欠如。
・(組織的なサポート不足)アルコールに関する理解を促進・向上させるための、教育・啓発・物品貸与・カウンセリングの機会などの、会社としての組織的なサポート不足。
・(基準が未統一)グループ内や事業所ごとの、アルコール検査手法や規定などのばらつき。

適度なアルコール摂取量を社内規則に明記 日常使える検査機の貸与なども

 そして、ANA便を運航する全日本空輸、ANAウイングス、エアージャパンの3社は今後、以下の措置を講じるとしています。

●運航乗務員
(1)自己管理を促進するための措置
・飲酒量について社内規則への明文化:乗務開始12時間前以降の時間制限と合わせ、適度なアルコール摂取量はアルコール2単位(ビールなら500ml缶2本程度)までである旨を社内規則に反映(12月より)。
・日常使用できる呼気検査器の貸与:運航乗務員が自身のアルコール体内分解能力を日常的に把握することで、自己管理意識を向上させることを目的に、ポータブルタイプ呼気検査器を全運航乗務員へ貸与(12月から順次)。
・アルコール教育プログラムの見直しと再徹底(12月以降に開始)。
・アルコールに関するカウンセリング窓口のグループ社への展開と利用促進(2019年4月を目途に開始)。

(2)乗務前アルコール検査の強化
・検査機器の更新:ストロータイプの記録式呼気検査器を国内外全空港(※)に配備(2018年末までに)。
・第三者確認ならびに検査結果記録の管理:乗務前アルコール検査時の第三者確認を国内外全空港(※)に拡大。あわせて検査結果ならびに確認実施者の記録を管理する(2019年1月を目途に開始)。
※運航乗務員の勤務開始が発生しない空港をのぞく。

●運航乗務員以外の航空機の運航の安全に携わる者(客室乗務員・整備従事者・運航管理者)
・全航空従事者に対し、日常的な健康管理の一環として、始業時の酒気確認を実施(2019年1月を目途に準備がととのい次第開始)。
・航空従事者が所属する全事業所にストロータイプの記録式呼気検査器を配備し、随時検査が可能な体制を構築(2019年1月を目途に準備がととのい次第開始)。

●上記以外の運航に関わる作業者(空港構内で車両運転に従事するグループ社員)
・車両乗車前のストロータイプの記録式呼気検査器を用いた確認の実施(2019年4月を目途に準備がととのい次第開始)。また検査器配備までは、当直の監督層が始業時の酒気確認を日常的な健康管理の一環として実施。

 ANAは、運航乗務員をはじめとした航空機の安全に携わるグループ社員の、アルコールに関する自己管理に向けて会社として組織的に支援し、不正の余地を残さないチェック体制の構築などの再発防止策を講じることで、安全運航を堅持するとともに、グループ一丸となって信頼回復に努めていくとしています。

【写真】ANAが羽田空港で使用している呼気検査機器


東海電子のALC-PROIIを、ANAは羽田空港で使用している(画像:ANA)。