高所得者と低所得者の「時間の使い方」にはどんな違いがあるのか。雑誌「プレジデント」では、年収2000万円と年収500万円のビジネスパーソン150人ずつにアンケートを実施。その違いを探った。第3回は「家族&飲食」について――。(全4回)

※本稿は、「プレジデント」(2017年5月15日号)の掲載記事を再編集したものです。

家族編
長時間労働でも「家族との食事」「子どもとの休日」を大事にする2000万

平日に家族と過ごす平均時間は、低所得者のほうが全体的にやや長めだ(図1)。ただし、ここで経済評論家、投資家として活躍する加谷珪一氏が注目したのは、高所得者の「1時間台21.3%」という数字。「おそらく高所得者のほうが、多忙でも家族との時間をより積極的につくりたいと思っているのでは。高所得者は残業が多くて退社時間も遅く、家で過ごす時間は少ないはず。だからこそ、何とか1時間は確保したいと頑張っているのでしょう。夫婦仲や家族関係がうまくいかないと、仕事に悪影響を及ぼす可能性がありますから」。

実際、お金持ちはかなりの割合で夫婦仲がいいそうだ。中小企業オーナーの場合、夫婦で事業をいとなんでいたり、妻が社員のマネジメントをサポートしたりするケースも多い。「仕事が忙しくて家のことにべったり関わる時間のない外資系企業のエリートたちは、短時間でも妻の話をよく聞いていないと家庭のマネジメントが効率的にできないという背景もある」(加谷氏)。

高所得者は家族との朝食も大事に考えているようだ(図2)。忙しい中でも何とか家族と一緒に朝食をとろうとする姿勢が窺える。「朝きちんと起きて、食事をとるというルーチンワークができているのは計画的に物事を進めているということ。おそらく朝5時に起きてランニング、朝食後メールチェックといった予定が組まれているのでしょう。このストイックともいえるほどの規則正しさが、仕事の高い生産性、高収入につながっているのでは」(加谷氏)。

この傾向は夕食についても同じで、高所得者のほうが家族と一緒にとっている人が多い(図3)。計画を立て、時間を上手にマネジメントして家族との時間を捻出している様子が窺える。

子育てに関わる日数についても、2〜3日になると高所得者のほうが圧倒的に多い。時間がない中でも限界ラインの2〜3日は確保しようという姿勢が見て取れる(図4)。また休日の過ごし方についても、高所得者のほうが子どもとふれ合うことの優先順位が高かった(図5)。

飲食編
日頃からリサーチ、ここ一番の「勝負店」を持つのが収入アップの秘訣

高所得者のほうがお酒を飲む回数が多かった(図1)。「高所得者がよく飲むのは、仕事の延長線上の会食が多いからでしょう。でも、会食に行っても飲まないと決めている人もいる。低所得者はそもそもお酒にお金をかけられないからでは」(加谷氏)。

では、高所得者はどんなお酒を好むのか。「圧倒的にワインですね。とくにフランスのワインが人気で、価値基準が体系立てられていて、そうした知識がないとお金持ちのコミュニティに入れない雰囲気がある。私もある程度勉強しましたが、富裕層の仲間入りをするチャンスをつかみたいなら覚えておいて損はない」(加谷氏)。

誰とよく飲むかという質問では、高所得者は社外の人、低所得者は社内の人という結果が出た(図2)。「高所得者が社外の人と飲む機会が多いのは、情報収集やビジネスチャンス探しを兼ねているからでしょう」(不動産から医療法人まで年商100億円の企業グループをつくり上げた金森重樹氏)。逆に、低所得者が社内の同僚とよく飲むのは愚痴を言い合ってストレスを発散しているからではと加谷氏。

「一人飲み」が多いのは高所得者のほう(図3)。「社会的な地位が上がってくると誰にも弱みを見せられなくなる。1人で本当にリラックスできる場所がないとバランスが取れないのでしょう」(加谷氏)。

また、高所得者の過半数が行きつけのこだわりの店を持ち、外食頻度も多い(図4、5)。「接待用の“勝負店”を持っているのでしょう。お金持ちになると、接待のためだけにお店のオーナーになる人さえいる。お店選びでは、料理の味はもちろん、気配りのあるサービスが重要。これが商談に大きく影響してくる。収入が少ないうちは、どういうお店が会食や商談にふさわしいのかを知るために、たまにでも高級店の接客を体験してみるといい」(加谷氏)。

外食(ディナー)にかける金額は高所得者の3割超が一人当たり平均8000円以上かける(図6)。「私の感覚でも、相手が2〜3人でワイン代を入れて4万〜5万円です」(加谷氏)。

調査方法●編集部と楽天リサーチで実施。個人年収500万円未満150人、個人年収2000万円以上150人から回答を得た。調査日は2017年3月15〜16日。

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加谷珪一
経済評論家
東北大学工学部原子核工学科卒。日経BP社(記者)、投資ファンド運用会社を経て、コンサルティング会社を設立し代表に就任。
 

金森重樹
行政書士
不動産投資顧問。東京大学法学部卒。不動産、建設、ホテルチェーンなどグループ年商100億円の企業グループのオーナー。
 

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(河合 起季 撮影=大沢尚芳、鈴木啓介)