リーグ・アンに挑戦して2年、日本代表DFの酒井宏樹はフランス屈指の名門マルセイユで、確かな地位を確立している。

 2016年6月にハノーファーから鳴り物入りでマルセイユの門を叩いた酒井は、守備戦術に定評のある智将リュディ・ガルシアの薫陶を受け、元々定評のあったクロスの精度に加え、課題のディフェンス面も飛躍的に向上している。

 そんな酒井をマルセイユの重要戦力たらしめているのが、ディフェンスで複数ポジションを遜色なくこなす点だ。ガルシア監督の下では、DF陣が人材難に悩まされたというチーム事情もあり、本職の右SBだけでなく左SB、さらには3バックの一角も務めている。

 その出来栄えは、CB起用の判断を下したガルシア監督も、現地12日のディジョン戦(リーグ・アン12節)の後に「試合内容も含めて最善ではない。しかし、新たな経験でプレーの幅も広がったし、貴重な成功だ」と、感服した様子で語っているぐらいだ。

 そんな現状に、当人はいかなる思いを抱いているのか? 日夜、マルセイユのありとあらゆる情報を発信している『Le Phoceen』で、「僕にとっては大した問題でもない」と酒井自らが明かしている。

「ときどき右SBで、ときどき左SBだね。時には3バックのセンターの右や左でもプレーする。でも、どこでプレーしようと関係なく、僕は100パーセントを尽くしている。

 僕自身のプレーが良いのか悪いのかはわからないけど、チームが勝つことが僕にとっては嬉しい。僕にとっては大した問題ではないし、全ては監督が決めることだし、コーチたちの決断を尊重する」

 名うての名手たちを相手にし、確実にスキルアップしている酒井。その蓄えた力は当然、代表にも還元される。「僕は代表のために、100パーセントでプレーしたい」と語る28歳は、そのうえで気を遣っていることについても明かしている。

「マルセイユでも同様だけど、100パーセントの力を尽くしたい。もちろん、全てを管理することは難しいかもしれない。けど、ストレッチや回復、食事や飲み物、そういった全てのことに注意を払っている」

 フランスでマルチな才能をいかんなく発揮し、存在感を高めている酒井。その充実感に満ちた言葉を聞くに、森保ジャパンでも、ますます重要な戦力となっていきそうだ。