焼肉といえば、お酒を飲みながらいただきつつ、食後は煙草を一服、という楽しみ方をする方も多いですが、業界初の「禁酒禁煙」の焼肉店が話題を集めています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、そんな会員制の焼肉店の戦略・戦術を紹介しています。

既存企業が取り込めていなかった顧客層を取り込む

業界初のお酒を扱わない焼肉店を分析します。

● 三代目 脇彦商店 本店(会員制焼肉店)

戦略ショートストーリー

純粋に焼肉を楽しみたい方をターゲットに「肉とタレと米へのこだわり」に支えられた「最高峰の味わいと香りを楽しめる(お肉とお米に向き合える)」等の強みで差別化しています。

焼肉業界では珍しい「禁酒・禁煙の焼肉店」という話題性で注目を集め、店主が厳選したこだわりの焼肉とご飯を楽しめる店舗として、顧客の支持を得ています。

■分析のポイント

既存企業が取り込めていなかった顧客層を取り込む

「三代目 脇彦商店 本店」は焼肉業界では珍しい「禁酒・禁煙の焼肉店」で話題となっていますので、今回は焼肉店がお酒を扱わないメリットを考えてみましょう。

一般的なお酒を扱っている焼肉店は数多くある居酒屋やバーなどの飲み屋とも競合しています。ですから、焼肉店といえどもお酒の品揃えを充実させることが重要になります。これにより、焼肉店は焼肉が食べられる飲み屋となっているお店が多いように思われます。焼肉はお酒とセットというイメージを持たれている方も多いでしょう。

ですので、お酒を扱わないということは居酒屋などの飲み屋と競合しにくくなるということを意味します。これは大きなメリットだと思います。お酒を楽しめる飲み屋は価格帯に限らず競争が激しいレッドオーシャンと言われるような業界ですからこの競争を避けられるというのは、企業の戦略上、非常に重要です。

また、「三代目 脇彦商店 本店」は、禁酒に加えて完全に禁煙にしていることも特徴的です。多くの焼肉店のテーブルには灰皿が置かれていますし、店内には焼肉を焼く煙だけでなく、タバコの煙が充満しているというイメージを持たれている方も多いでしょう。このことが女性やファミリー層を遠ざける要因の一つになっていたと思われます。だからこそ、「三代目 脇彦商店 本店」が既存の焼肉店が取り込めなかった女性客を惹きつけているわけです。

まとめますと、「三代目 脇彦商店 本店」は禁酒・禁煙とすることで、競争を避けるとともに、既存企業が取り込めていなかった顧客層を取り込めているということです。そして、取り込んだ顧客に対しては最高峰の味わいと香りを楽しめる場を提供することで「三代目 脇彦商店 本店」のファンになってもらうというビジネスの流れがよくできていると思います。

今後、「三代目 脇彦商店 本店」の焼肉業界でどのような存在になっていくのか注目していきたいです。

◆戦略分析

■戦場・競合

戦場(顧客視点での自社の事業領域):焼肉店競合(お客様の選択肢):焼肉店 など状況:肉ブームの影響もあり国内の焼肉店は好調のようです。

■強み

「最高峰の味わいと香りを楽しめる(お肉とお米に向き合える)」

本当の肉のうまみが味わえる。肉の焼ける香ばしい匂いも味わえる。最高のタイミングのお米を味わえる

★上記の強みを支えるコア・コンピタンス

「肉とタレと米へのこだわり」

肉は希少部位を使用米は美味しいお米だけを厳選して全国より取り寄せ、特製の釜で炊き上げるタレは創業1918年の醸造酢卸店「脇彦商店」の初代店主から受け継がれた味噌ベースの濃厚な甘辛「黒ダレ」を再現したものと今回独自に開発した甘めの「白ダレ」

上記のような、こだわりが強みを支えています。

■顧客ターゲット

焼肉の好きな方純粋に焼肉を楽しみたい方

◆戦術分析

■売り物、売り値

焼肉(2種類のコースのみ)」

「結(むすび)」(6,000円/税別)

→肉量300g〜320g

店主が厳選した和牛の赤身、霜降り肉とホルモンなど「響(おもてなし)」(8,000円/税別)

 →肉量320g〜350g

店主が厳選した和牛・松坂牛や創作料理など釜で炊いたご飯がおひつで提供される(おかわり自由)。タレは2種類の味噌ダレ。

→濃厚な味わいの黒ダレとあさっりめの白ダレ。飲み物は黒烏龍茶かルイボスティー。

■売り方

「禁酒・禁煙の焼肉店」として話題になり、複数のメディアで取り上げられています。会員制(要予約)

■売り場

大阪福島市に開業午後5時〜19時、同21時〜23時の二部制

※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。

image by: 「三代目 脇彦商店本店」公式フェイスブック

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