秋の「マイル王決定戦」となるGIマイルCS(11月18日/京都・芝1600m)は、GI馬7頭に、重賞勝ち馬も多数参戦し、豪華な顔ぶれがそろった。頂点を狙える実力馬が何頭もいるうえ、一発の可能性を秘めた伏兵馬も数多くいて、かなり熾烈な戦いが予想される。

 そのなかで前評判が高いのは、春のGI安田記念(6月3日/東京・芝1600m)を制したモズアスコット(牡4歳)、昨年の覇者ペルシアンナイト(牡4歳)、そして安田記念の2着馬で、GII毎日王冠(10月7日/東京・芝1800m)を快勝して臨むアエロリット(牝4歳)。

 3頭はそれぞれ、全国リーディング1位を快走するクリストフ・ルメール騎手、同2位のミルコ・デムーロ騎手、そして世界的な名手のライアン・ムーア騎手と、実績も実力も申し分ない外国人騎手とコンビを組む予定で、馬券的な人気も相当集めそうだ。

 しかしながら、3頭の実力はそこまで抜けているのだろうか。人気や評価については、あくまでも”鞍上込み”でのものだろう。実力や実績はもちろん、最近の勢いなども含めて、これら3頭にヒケを取らない馬は他にもたくさんいる。

 であれば、馬券的な妙味があるのは、そういった馬たちだ。そこで、過去10年の結果を参考にして、過小評価されそうな”オイシイ実力馬”を探し出してみたい。

 過去の結果を見てみると、たびたび穴を開けているパターンがあることがわかる。直前の重賞を勝っていながら、伏兵扱いにとどまった馬たちの激走だ。

 2008年に4番人気で勝ったブルーメンブラットや、2011年に5番人気で戴冠を遂げたエイシンアポロンがいい例。前者は前走でGIII府中牝馬S(東京・芝1800m)を、後者は前走でGIII富士S(東京・芝1600m)を快勝していながら、上位人気を争うことはなかった。

 また、2016年に3着に入ったネオリアリズムは前走でGII札幌記念(札幌・芝2000m)を、昨年の3着馬サングレーザーも前走でGIIスワンC(京都・芝1400m)を勝っていながら、ともに7番人気の低評価に甘んじていた。

 それぞれ、重賞勝ちの勢いはあったものの、GI未勝利、GI初出走といった点で評価を下げてしまったのだろう。だが、そういう馬たちは決して軽く扱ってはいけない、ということだ。

 そして今回も、直前の重賞を勝っての参戦ながら、GI未勝利、あるいはGI初出走ということで、人気薄になりそうな馬がいる。

 ミッキーグローリー(牡5歳)、ロードクエスト(牡5歳)、ロジクライ(牡5歳)の3頭だ。

 ミッキーグローリーはGIII京成杯オータムハンデ(9月9日/中山・芝1600m)、ロードクエストはスワンS(10月27日)、ロジクライは富士S(10月20日)と、3頭とも前走では重賞を勝ってきた。しかし前述のとおり、初のGI参戦、あるいはGIでの勝利がないため、ここでの評価はあくまでも伏兵の1頭にすぎない。

 おかげで、人気が急落しそうだが、ここまでの戦績や現在の勢いからして、3頭とも十分に勝ち負けできる要素を備えている。軽視は禁物である。

 このうち、狙いをあえて1頭に絞るなら、ロジクライだ。


初のGI出走でも上位争いが期待されるロジクライ

 というのも、同馬が勝った富士S組が、過去のマイルCSでも結果を残しているからだ。昨年の覇者ペルシアンナイトは富士S5着から巻き返しを図り、同2着のエアスピネルも富士Sを勝っての参戦だった。

 さらに、一昨年の2着馬イスラボニータ、2014年に8番人気で優勝したダノンシャークも、それぞれ富士S(イスラボニータは2着、ダノンシャークは7着)を経由しての奮闘だ。

 これらと同じく富士Sから、それも勝って挑むロジクライ。夏以降のマイル重賞3戦では、すべて3着以内の好走を続けており、地力アップは間違いない。高配当を望むなら、同馬の一発に賭けてみてはどうだろうか。

 ところで、マイルCSにおける勝ち馬だけを見てみると、最近は4番人気の馬が狙い目、ということがわかる。2008年のブルーメンブラット、2012年のサダムパテック、2015年のモーリス、2017年のペルシアンナイトと、過去10年で4勝も挙げているのだ。

 今年も、有力馬ぞろいの激戦ムードであることを考えると、冒頭に挙げた3頭に続く、4番人気の馬が頂点に立ってもおかしくない。

 そこで、改めて出走メンバーを見渡し、今回4番人気になりそうな馬を推測してみた。おそらく、アルアイン(牡4歳)、エアスピネル(牡5歳)、ステルヴィオ(牡3歳)の3頭ではないだろうか。この3頭なら、どの馬が勝っても何ら不思議はない。

 当日のオッズを確認して馬券を購入できる方は、実際に4番人気になった馬で勝負してみるのも悪くないだろう。

 ただ、ここではそうはいかないので、3頭の中から最も勝利が期待できそうな馬をピックアップしたい。

 非常に甲乙つけ難いが、強いて挙げるなら、エアスピネルか。

 決め手となるのは、やはりマイルCSとの相性がいい富士S組ということだ。エアスピネルの場合、富士Sで1番人気に推されながら4着に敗戦。そこからマイルCSという臨戦過程が、なおさら魅力的だ。

 先にも触れたように、2014年の勝ち馬ダノンシャークは、富士Sでは1番人気を裏切って7着に敗戦するも、本番ではきっちり結果を出した。昨年の覇者ペルシアンナイトも、2番人気に推された富士Sでは5着に敗れるも、マイルCSでは見事に栄冠を手にした。

 マイルCSにおける勝利のキーワードは、まさに”富士Sからの巻き返し”。”前哨戦”の富士Sで上位人気を裏切った馬が、”本番”のマイルCSで本領を発揮することはよく見られる。

 今年は、エアスピネルがその傾向を踏襲。悲願のGI制覇を、ここで果たすかもしれない。

 実力伯仲のマイルGI。目移りするほどの豪華メンバーの中から、勝ち馬をセレクトするのも難解を極めるが、その分、馬連や3連単をモノにできれば、どんな組み合わせでもそれなりの配当が見込めるはず。それらの的中のヒントが、ここに隠されている。