年月の経ったクルマは、ヘッドライトが黄ばんだり、くすんだりすることがあります。通常の洗車では落ちないこの汚れ、なぜ発生するのでしょうか。これまでの常識を覆す、新たな対策も登場しています。

黄ばみやくすみはヘッドライトの宿命?

 ヘッドライトが黄ばんだり、くすんだりしているクルマを見かけることがあります。


ヘッドライトに黄ばみやくすみが発生することがある。写真はイメージ(画像:ハセ・プロ)。

 これは、ヘッドライトカバーに使われているポリカーボネートの性質によるもの。ポリカーボネートは透明製や耐久性に優れた樹脂製品で、自動車用ヘッドライトだけでなく戦闘機のコックピット、オートバイの風防などにも使われています。

 しかし、ポリカーボネートは薬材や高温高湿に弱いといった性質もあり、製造時にはコーティングが施されるのが一般的。ヘッドライトの黄ばみやくすみは、かんたんにいうと、このコーティングが紫外線で劣化し、ひび割れたり剥がれたりするのが要因です。

 カー用品量販店「オートバックス」を展開するオートバックスセブン(東京都江東区)によると、こうした汚れはヘッドライトカバーにくもったフィルターがかかったようになり、光量が確保できなくなることもあるといいます。ヘッドライトクリーニングを施工している自動車整備工場の代表によると、これによる光量不足、あるいは片方のライトだけ汚れて左右の光量に違いが生じることで、車検に通らない場合もあるとのこと。

 対策としては、劣化したコーティングをきれいに落とすことだといいます。ただし通常の洗車では落ちません。ヘッドライトポリッシュなどと呼ばれる磨き材がオートバックスなどでも販売されており、これによってカバー表面の古いコーティングを削り取るのです。

 ただし、コーティングがはがれてむき出しになったポリカーボネートは、より劣化しやすいため、削ったあとに再コーティングすることが重要だとオートバックスセブンは話します。カー用品店ではそのようなコーティング剤もヘッドライトポリッシュなどと合わせて販売されているほか、整備工場では磨きから再コーティングまで、プロの手で行ってくれます。

削らなくてもいい!? 逆転発想の新対策

 このように、ヘッドライトの黄ばみやくすみを除去するには、劣化したコーティングを削り取るのが一般的ですが、近年、新たな手法が登場しています。コーティングをそのままにして、上から透明なシートを貼るというものです。

 このシートは、自動車用カーボンシートなどを製造販売するハセ・プロ(大阪市生野区)が特許を持つ技術。シートを貼るだけで透明度が復元され、ライトの透過率も著しくアップすることが確認されているといいます。この商品を2017年に発表し、2018年から本格的に拡販しているという同社に話を聞きました。

――シートを貼るだけで透明度が復元されるというのは、どのような仕組みなのでしょうか?

 シートの糊(のり)成分が、劣化してひび割れたコーティングの凸凹を埋めてフラットにすることで、透明に見えるようになるのです。たとえば、表面がザラザラしたすりガラスにセロハンテープを貼ると、向こうが見えるようになるのですが、この原理を応用しています。傷んだ表面を直すというよりも、隠しているといったほうがよいかもしれません。

――シートにはどのような特徴があるのでしょうか?

 糊成分が特許の技術であり、強粘着でありながらやわらかい性質をもっているほか、ヘッドライトに黄ばみが発生していても、シート成分との化学反応によってそれを抑えることができます。また、紫外線を92%カットするので、劣化したコーティングを磨いた後に施工して再コーティングの役割も果たします。

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 ハセ・プロによると、その性能はクルマの使用状況により前後しますが、およそ5年間持続するとのこと。施工前には、コーティングを削り取る必要はないものの、中性洗剤などで落とせる汚れはきれいにしてほしいそうです。


通常、ヘッドライトのクリーニングは磨いてコーティングを除去するのが一般的(画像:sima/123RF)。

 ただし、ヘッドライトカバーの内側に黄ばみやくすみが発生している場合は、シートを貼っても効果はないといいます。前出した自動車整備工場の代表によると、ヘッドライトのカバーだけを取り外して内側を磨くのもリスクがあるため、難しいとのこと。カバーの外側も含め、何年くらい経過すると黄ばみやくすみが生じてくるかは、一概には言えないそうです。屋内あるいは屋根付き駐車場に停めるなどして、紫外線から守るのがいちばんの対策だといいます。