事件現場で献花する母。「今年5月の健康診断で異常なしだった息子が、病死するはずがない」と語った

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事件現場で献花する母。「今年5月の健康診断で異常なしだった息子が、病死するはずがない」と語った

「これからどう生きていけばいいのか……。息子は警察の手で殺されました。府警は絶対に許せません」

 10月20日、大阪市内で保護された豊中市内在住の会社員の男性(33)が、都島警察署に連行される途中、パトカー内で急死した。亡くなった男性の母・本田佳子さん(仮名・65)は、本誌の独占取材に涙ながらにそう語り始めた。

「20日の夜中に警察から電話で『息子さんが亡くなりました』と言われ、頭が真っ白になりました。急いで都島署に向かうと、署内の部屋に通されました。警官から『パトカーで署に連れて行こうとしたら急に意識を失い、病院に救急搬送したが23時44分に亡くなった』と説明されたんですが、『なんでそうなるんですか』と聞いても、『それは今から調べます』とだけ。わけもわからず、『とにかく息子に会わせて下さい』とお願いをしました」

 霊安室に案内された佳子さんが目にしたのは、変わり果てた息子の姿だった。

「右目をうっすら開いていて、身体を触ると冷たくなっていました……」

 この時、遺族の許可を得て男性の会社の同僚も立ち会っていたが、遺体には不可解な点がいくつもあったという。

「右の頬辺りから首にかけて、紫色に変色していたんです。痣(あざ)はないかと服をめくろうとしたら、その場にいた警察官が突然、『やめてください!』と慌てて止めてきました」(同僚)

 佳子さんと同僚はこの日、「遺体は解剖する」「マスコミの取材には答えないように」と一方的に告げられ、ひとまず帰宅させられた。「解剖結果が出た」との知らせを受け、佳子さんが再び都島署へ出向いたのは、10月22日のことだった。

「見せられた書類には〈死因は肺鬱血(うっけつ)〉、〈病死または自然死〉と書かれており、『制圧による鬱血ではない』とはっきり言われました。でも、『どうしてですか』と聞くと、前回と同じように『ちゃんと解明しますので』としか言いませんでした」

 今日に至るまで、この「解明する」という約束は果たされていない。それどころか、この日以降、大阪府警の説明は二転三転している。前出・同僚が証言する。

「警察は最初、『パトカー内で男性は暴れていませんでした』と言っていたんです。それなのに次の日には、『昨日の話は訂正させて欲しい。暴れたので後部座席で本人を挟んで連行した』と。その他にも、うつ伏せの状態で押さえつけていたのにそれを隠していて、新聞記事で事実を知ったこともあった。担当の刑事は『ウソは絶対につかない』と言っていたくせにウソばかりで、許せません」

 10月26日、本誌は男性が連行される一部始終を捉えた動画を公開(11月9日号)。そこには、警官が男性の首に手をかけ、無理やりパトカーに押し込む様子がはっきりと映し出されているが、この動画を見た佳子さんは言葉を失ったという。

「あんな連行の仕方だったなんて、まったく聞かされなかったので、びっくりしました。すぐに警察に『説明が全然違いますが、どうなってるんですか!』と電話をした。電話に出た署員は『とにかく説明に上がります』と言ってきましたけど、『あなたの子供が同じ目にあったらどう思いますか』と告げると押し黙っていました。あまりにも不誠実なので、『もうウソの説明は結構です』と断りましたよ」

 大阪府警は捜査本部設置を発表し、全力で真相究明に取り組むとしていたはず。真っ先に説明責任を果たさなければならない遺族に対し、なぜこうも杜撰(ずさん)な対応をするのか。本誌の取材に捜査一課調査官の福本忠氏は「捜査中ですのでコメントできません」と回答するのみだった。

「もちろん、酔っていた息子が100%悪くないとは思いません。でも保護されただけで殺されるなんて、あまりにも無念でなりません」(佳子さん)

 ウヤムヤなままの幕引きだけは、許してはならない。

大阪府警は捜査一課が真相究明に当たり、男性を制圧した都島警察署員を入念に捜査しているというが……

連行されるまでの一部始終を収めた動画。警官は無理やり男性をパトカーに押し込んだ

PHOTO:加藤 慶