児相、保育所は「近所迷惑」か 住民反対相次ぐ

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 日本有数の「セレブタウン」である東京都港区の一等地に開設予定の児童相談所(児相)や保育室をめぐり、一部住民が反発する事態が相次いでいる。

 ブランドショップが並ぶ南青山では「(児相が)地域にふさわしくない」との声があがり、「シロガネーゼ」の言葉も生まれた白金台では保育室の着工が延期された。子供の施設は街のイメージを壊す「迷惑施設」なのか、自治体の説明不足なのか…。同様の反発は全国でも起きている。(久保まりな)

 価値が下がる

 「イメージに合わない」「価値が下がる」

 10月中旬、港区が実施した「子ども家庭総合支援センター」に関する説明会で、住民の一部からはこんな声が相次いだ。

 平成28年に児童福祉法が改正され、都道府県や中核市のほかに特別区でも児相が設置できるようになった。このため港区は、児相のほか、さまざまな事情で養育が困難な母子家庭が入所する支援施設や家庭問題の相談に対応する子育て支援機能も備えた同センター(地上4階建て)を整備することを決めた。

 総工費は100億円以上。昨年11月には同区南青山5丁目の国有地(約3200平方メートル)を用地として購入した。区議会の承認も得て、平成33年4月の開所を目指しているが、今年10月に2回行われた住民説明会で、計画の見直しを求める声が相次いだのだった。

 建設予定地は東京メトロ表参道駅に近く、周囲には高級ブランドショップも建ち並ぶ都心の一等地。反対住民らでつくる「青山の未来を考える会」の佐藤昌俊副会長(63)は、「区が掲げる『気品とにぎわいのまち 青山』に合致しているのか。他に候補地はなかったのか」と、区の姿勢を疑問視する。

 港区内では高級住宅地として知られる白金台でも、似たような現象が起きた。待機児童の解消を目的に建設予定だった0〜5歳児を受け入れる「保育室」が住民から猛反発を受け、区が来年4月としていた開所時期を延期したのだ。

 区によると、過去3回にわたり開いた工事説明会で、「高齢者施策にもっと重点を置くべき」「必要性がわからない」などの意見が続出。予定していた10月中旬の着工は見送られた。

 区の担当者は、「南青山も白金台も、粘り強く説明して施設の必要性を住民の皆さんに理解してもらうしかない」と話した。

 他地域でも

 児相や保育室などの児童福祉関係施設の設置に地域住民が反対する事例は近年、都市部で目立つ。

 大阪市では28年、同市北区のタワーマンション内に児相の設置を検討したが、マンションの住人から治安やプライバシーの観点で不安の声が相次ぎ、計画は頓挫した。

 千葉県市川市では28年に住民の反対で保育園の建設を断念したケースがあったほか、今年に入っても東京都武蔵野市で保育園の開園が住民の反発で延期されている。

 児童虐待が社会問題化し児相の対応件数は増え続けており、保育施設の待機児童も増加の一途をたどっている。児相も保育施設も必要な施設だが、なぜこうした状況が起こるのか。

 まちづくりに詳しい小泉秀樹東京大教授は、「児相や保育室といった福祉施設は道路や大型公共施設と違い、行政の長期的なまちづくり計画に含まれないことが多く、『唐突だ』と思われて住民からの反対が起きやすい」と指摘する。

 さらに小泉氏は「福祉施設は本来、住民にとって迷惑なものでも街の景観を悪くするものでもない。データなどを元に、なぜそうした施設が必要なのかという点を計画に組み込めば、構想段階から住民と十分な議論ができるはず」と、自治体側の丁寧な説明の必要性を強調した。