セッションを行った沖浦泰斗氏

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セッションを行った沖浦泰斗氏

11月8日、シンガポールのMariana bay sandsのコンベンションセンターにて、アジアで初となるNetflixの大型イベント「See What's Next: Asia」が開催された。Netflixの新作発表を中心に最新情報を伝えるものだ。

アジアから200人以上のプレスが集まった会場で、やはり注目を浴びたのが強力ラインナップで世界に広がるNetflixオリジナルアニメである。コンテンツ最高責任者のテッド・サランドスがCGアニメ「ULTRAMAN」の製作に触れると歓声があがるほどだ。そうした期待に応えるべく、これまで明らかにされていなかった新作タイトル5作品が、ここで発表された。「パシフィック・リム」「オルタード・カーボン」「虫籠のカガステル」「YASUKE」「TRESE」である。

イベントでは「Anime Announcement」とタイトルしたアニメ作品のための特別セッションが設けられた。日本から現地に訪れたNetflixコンテンツ・アクイジション アニメディレクターの沖浦泰斗氏が次々にタイトルを紹介すると会場からどよめきがおこる。

トップバッターは、ハリウッドの大ヒットSF映画「パシフィック・リム」のアニメ版。スタジオなど制作スタッフは明らかにされなかったが、映画を手がけたレジェンダリー・エンターテインメント自身が製作する。海外実写作品のアニメ化は、次に言及された「オルタード・カーボン」もだ。Netflixの実写オリジナルSFの人気作のアニメ化である。すでにスカイダンス・テレビジョンによる実写シーズン2製作が進んでおり、それに平行してアニメが展開する。こちらの制作は日本のCGアニメスタジオのアニマ。脚本に佐藤大、近藤司。佐藤大の代表作として「カウボーイビバップ」が紹介されると大きな歓声で沸いた。

そして「虫籠のカガステル」は橋本花鳥のSFマンガが原作。人が巨大な虫になる奇病「カガステル」が蔓延した近未来を描く。パンデミックは、Netflixが実写でも得意とする題材でまさにNetflixらしい。これを「LAST EXILE」「ブレイブ ストーリー」の千明孝一が監督する。アニメーション制作はGONZO。

「虫籠のカガステル」本編カット

今回の5作品の特徴は、これまでのオリジナルアニメ以上に世界の視聴者が意識されていることだ。沖浦氏は「コアなアニメファンはもちろんだが、実写ドラマを見るひとたちにも魅力的な作品である」とアピールする。実写の人気作品のアニメ化は、この流れにある。それを加速するのが、「YASUKE」だ。「ユーリ!!! on ICE」や「賭ケグルイ」などで人気のMAPPAがアニメーション制作を担当するが、制作・監督・製作総指揮は海外のルショーン・トーマス。ルショーンはすでに制作中の「キャノン・バスターズ」でもサテライトと協業している。日本とアメリカが融合した体制である。題材の“弥助”は、戦国時代に実在した黒人サムライである。海外で人気の「サムライ」を取りいれ、かつ黒人の視聴者にアピールしそうだ。

そして「TRESE」は、フィリピンの人気グラフィックノベル(漫画)をベースにする。舞台となるマニラには邪悪な生き物が存在し、主人公はここで裏社会と対決する。アクションやファンタジー要素を交えながら、東南アジアを題材にする。こちらは製作・プロデューサーとも海外だ。

「虫籠のカガステル」本編カット

日本アニメを意味する「ANIME」としながらも、グローバルな会社、スタッフの名前が並んだことで、今回のイベントはNetflixオリジナルアニメの新次元への突入を感じさせた。2015年日本上陸でアニメ参入を宣言したのが第1期、2017年夏の「Netflix アニメスレート」のオリジナルタイトルを大量発表したのが第2期とすれば、今回は第3期の始まりである。アニメと経験を積むことで、よりNetflixらしさが強調された。Netflixは大人向けのアニメーションの市場を急速に開拓している。同時に新たなクリエイティブの方向性すら生みだしているようだ。

沖浦氏はMCからNetflixが日本のアニメに与えた影響を聞かれると、「Netflixと日本のアニメスタジオが直接つながったこと」「日本アニメのクリエーションの可能性を広げていること」を挙げた。さらに求めている作品では「SF」「アクション」「コメディ」といったジャンル、そして「ゴジラ」や「ウルトラマン」といった強力なコンテツと話した。Netflixは依然日本アニメに積極的で、その可能性を広げている。しかし同時に従来の日本アニメと異なる強烈なグローバル志向もあり、それは場合によっては日本を素通りしかねない。日本アニメの脅威ともなりうる。そんなNetflixオリジナルアニメのパワーを感じさせたのが、今回のシンガポールの発表イベントであった。(数土直志)