中間選挙後、米国はさらなる「対中強硬」へ

米国の中間選挙は、トランプ政権の「1勝1敗」で終わった。大統領は政権の求心力を維持するために、中国に対して一層、強腰で臨む可能性が高い。韓国の「自滅」もあって、日米同盟の役割はますます重要になった。

中間選挙は上院で与党・共和党が勝利する一方、下院は民主党が8年ぶりに多数派を奪還した。選挙選最終盤で難民キャラバンが大挙して国境に押し寄せる事態になって、共和党に追い風になったが、下院の劣勢を覆すには至らなかった。

今回の中間選挙は、米マスコミにとっても試練だった。2016年の大統領選に続いて、今回も予想を外していたら、フェイクニュースならぬフェイク予測と批判されかねなかった。予想通りの結果になって、関係者はほっと胸を撫で下ろしているだろう。

選挙結果は、日本はじめ世界にどんな影響を及ぼすだろうか。私は、トランプ氏が2年後の大統領選をにらんで、求心力を維持するために、外交政策で強硬路線を選ぶ可能性が高いとみる。焦点はもちろん、中国との「新冷戦」である。

中国との対決姿勢は共和党だけでなく、民主党も共有している。中国に甘い態度に出て、相手陣営から批判される事態を避けるために、政権側はもちろん、野党・民主党も中国に対して強硬姿勢に傾く可能性がある。

加えて、民主党は多数を握った下院を舞台に、ロシアの大統領選介入疑惑を厳しく追及する構えを示している。そうなると、大統領は疑惑だけに焦点が当たる事態を避けて、外交で得点を稼ぐためにも、中国に厳しく対応するだろう。

結局、相乗効果で強硬路線は「インフレ・スパイラル化」し、一段と強硬になる。トランプ政権はすでに、サイバー攻撃で米国のハイテク技術を盗んだ組織や個人に対して制裁を科すことを検討している、と報じられている。

たとえば、産業スパイやサイバー攻撃で米国のハイテク技術を盗む組織や個人を標的にして、在米資産を凍結したり、米国企業との取引を停止するのだ(9月28日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57707)。敵対国に対して貿易面で制裁措置を講じるとともに、在米資産を凍結するのは米国の常套手段である。

中国の習近平国家主席は事態の打開を図るために、中国国際輸入博覧会で「15年で40兆ドル(約4500兆円)の輸入拡大」を表明した。だが、そんな懐柔策が通用するとは思えない。問題の核心は輸入額ではなく、知的財産の窃盗と強制的な技術移転である。

そもそも、中国が15年がかりで輸入を拡大しようにも、途中で人民元が暴落し、金融危機に陥ってしまう可能性もある。先の日中首脳会談で、中国が日本との通貨スワップ協定を結んだのも、金融危機の可能性を自覚していたからだろう。

通貨スワップ協定については「敵に塩を送るようなもの」という批判がある。中国にとって、万が一の安全網(セーフティネット)になるからだ。それは、たしかに一理ある。ただ、運用次第で日本が中国の命運を握る切り札になる可能性もあるのではないか。

いずれ、本当に中国の金融危機が起きれば、中国経済の規模から考えても、事態への対応策は日米欧を巻き込んだグローバルな課題にならざるをえない。そのとき、日本は米欧と足並みをそろえて、中国に「アメとムチ」で対峙すればいい。

徴用工判決がもたらす「北朝鮮包囲網」崩壊

さて、米中間選挙と同じ日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は元徴用工(実際は徴用ではなく、本人の応募)に対する賠償問題で沈静化を図るどころか、逆に火に油を注ぐような挙に出た。大統領秘書室長が日本の対応を「非常に不適切で遺憾だ」と批判したのだ。

李洛淵(イ・ナギョン)首相も、河野太郎外相らが判決を「暴挙」と批判しているのを受けて「日本政府の指導者が過激な発言を続けていることに深い憂慮」を表明した。

韓国最高裁判決の後、韓国政府の姿勢が注目されていたが、これらの発言で文政権の姿勢がはっきりした。政府として最高裁判決を支持したのである。こうなると、他の徴用工たちも同じように日本企業を訴える動きを加速させるに違いない。

日本政府は文政権と対決せざるをえない。安倍政権は国際司法裁判所(ICJ)への提訴を含めて、徹底的に争う姿勢だ。ただ、韓国はICJの強制管轄権を受諾していないので、日本が提訴しても、韓国が受けなければ、裁判は開かれない。

日本は竹島の帰属をめぐって韓国に3度、共同付託を提案したが、韓国が同意しなかった。今回も裁判は開かれない公算が高い。そうなると、日本と韓国は問題解決の糸口が見えないまま、対立が長期化する。

すると、話は元徴用工の賠償問題にとどまらない。北朝鮮に対する日米韓の包囲網も実質的に崩壊せざるをえなくなる。

実際、11月中旬にシンガポールで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連首脳会議やパプアニューギニアでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の折に、安倍首相と文大統領の会談が予定されていたが、キャンセルされる見通しだ。

1965年の日韓基本条約の付随協定である請求権協定とそれに伴って実施された5億ドルの経済協力という、日韓関係の基本の枠組みが揺らいでいる以上、首脳会談を開いて対北包囲網を話し合っているような場合ではない、と私も思う。

何を言ってきても、放っておこう

徴用工問題を別にしても、文政権の韓国はかねて北朝鮮に対して宥和的だった。そこへ徴用工問題が起きて、日本批判を強めて対決する姿勢をはっきりさせた。慰安婦問題でも、韓国は2015年に約束した日本大使館前の慰安婦像を撤去していない。

韓国は条約に伴う協定も、外相が記者会見して公表した国同士の約束も守らず「平気で後からひっくり返す国」なのだ。

日本はどうすべきか。拳を振り上げて怒ったり、嘆いたりしてもしかたがない。淡々と国際常識にしたがって、言うべきことを言う。そのうえで、相手が何を言ってきても放っておく。それしかない。

この際「駐韓日本大使を召喚すべきだ」という意見もあるが、召喚すれば、政権が変わらない限り、韓国に戻す機会は当分、ないだろう。それより韓国にとどまって、他国の駐韓大使たちに「いかに韓国が常識外れか」と訴えるべきではないか。

韓国内で韓国批判の国際的ロビー活動を展開したほうが、韓国に痛手になる。ここまで来たら、日本も腹をくくって対応すべきだ。