CEATEC JAPAN 2018から凸版印刷の「光子無線通信」技術をレポート!

幕張メッセにて10月16〜19日まで行われたIT技術の展示会「CEATEC JAPAN 2018」に凸版印刷が出展し、LEDを光源とする可視光でデータ通信を行う「光子無線通信」技術の展示を行いました。

一般的な高速無線通信技術には高周波の電波や赤外線などが用いられることが多いですが、今回展示されていた光子無線通信技術ではLEDによる可視光波長の光が用いられています。敢えて電波や赤外線などを用いない無線通信技術にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

本技術が持つメリットや用途など、展示ブースの様子とともにご紹介します。


見慣れない通信技術に多くの人が足を止めていた


■意外とどんな場所でも通信可能な光子無線通信
展示ブースで光子無線通信に用いられていた光源は青色LEDで、通信には双眼鏡のような通信装置が用いられます。これは通信用の光を光学的に送受信するためで、装置ではレンズ側から見て左側が送信用、右側が受信用のレンズとなっています。

レンズには防犯カメラや工業用カメラで多く用いられているCSマウントが採用されており、市販の汎用レンズを用いることでコストダウンやメンテナンス性の向上を図っています。

LEDの色は青色ではなくてもとくに問題はないとのことで、同社テストでは実測約750Mbpsでの通信テストに成功しているとのこと。展示では2〜3mの距離で実演が行われており、約430Mbpsでの高速通信が安定して行われていました。


装置自体は一般的な防犯カメラ程度の大きさ



強い照明の当たる展示ブースでも安定した通信速度


また光には電波と同じように「波」としての性質があるため、格子状の障害物や曇りガラス、半透明のプラスチック板などでも受光側のレンズが光を確認できさえすれば通信は問題なく持続されるとのことで、実際に金網などで光を遮るデモなども行われていましたが通信速度がほとんど落ちることなく通信が行われていました。

また光の屈折などにも強く、ビルの外壁用ガラスなどに用いられる厚いガラスを斜めに置いて光を遮っても問題なく通信が行われていました。


光による通信と聞くと障害物に弱そうなイメージがあるが、この程度なら何も問題ない



わずかでも光が通れば通信ができる


水中でも通信が可能な点が本技術の大きなメリットです。同社ではプールを用いた15m間で通信テストを行った結果280Mbpsでの通信に成功しており、展示ブースでも大きな水槽を挟んで装置が備えられデモ通信が行われていました。


空中と変わらないほどの非常に安定した通信速度が出ている


■工事現場やイベントなどの無線通信装置として
電波を用いた無線通信に対するメリットとして、設備の簡易さや電波ノイズの影響を受けない点を挙げています。地下工事やトンネル工事などでは電波状況が悪い場合が多く、専用のアンテナを設置するよりもコストが抑えられるとしており、電子機器の工場内など電波そのものを扱えない場所でも無線通信が可能な点を強調していました。

さらに電波が利用できない水中では音波通信よりも高速大容量を扱える点もメリットとしています。


展示ブースの対角線に置かれた通信装置および4Kカメラによる4K映像の送信テスト


また「見える光」である点も扱いやすさの大きなメリットであると展示スタッフは語ります。電波や赤外線による通信では通信が途絶した際、機器の故障なのか経路の寸断なのかノイズの影響なのかが判断しにくくその対応に時間がかかりますが、光子無線通信の場合目で見て判断できるため対応が迅速に行えます。

光源にはレーザー光線のような平行光ではなく一般的な拡散光のLEDが用いられる上に出力もそれほど強くないため、直接光を見ても目を怪我する心配もありません。直射日光下でも問題なく通信が可能で通信距離は最大600mまで可能で、雨などの影響も受けにくいとのことです。


ゲリラ豪雨並の雨量でも通信可能だ


工事現場以外では屋外イベントなどでの利用も想定しているとのこと。大規模なイベント会場では電波による通信は安定しない場合が多く、時には通信が混雑しすぎて輻輳を起こすなどの大規模な通信障害も想定されるため、野外モニターへの映像送信や音楽配信などに活用できるとしています。

本技術はすでに数社が試験的に導入しており、実地での実績を積んでいる状況とのことで、さらに数社での導入予定があるとのことです。また2019年以降には装置の小型化や防水仕様の筐体なども予定しており、本格的な実用化と量産体制を整えつつ2025年には本技術を用いたソリューション全体で50億円程度の売上を目標としています。


取引企業による採用事例



現在はこのようなアクリルハウジングを用いて防水対応をしているが、将来的には装置全体を防水設計にしたいとしている


記事執筆:秋吉 健


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