NTTドコモが3つの方針転換 最新モデルにみる国内市場の変化が浮き彫りに

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NTTドコモは10月17日、2018年末、そして2019年春頃までに順次発売となる「2018-2019冬春モデル」を発表しました。

例年であれば、このタイミングでの新機種の発表・投入は、一年を通して市場の盛り上がりが大きい年末や年度末の商戦に向けて意欲的なモデルを多数揃えてくるの通例でした。

しかし今年のラインナップは例年と比べて大きな違いがあります。

今回は、NTTドコモが発表した最新モデルから、
徐々に変わりゆく携帯電話市場の現状について推察していきます。

○高性能なハイエンドモデルが少ない
NTTドコモが今回発表した最新モデルは全部で11機種。
機種数こそ、他社と比較して2倍近いラインナップになっていますが、スマートフォンの花形ともいえる「フラグシップモデル」は4機種・3メーカーに留まっています。




今回のフラグシップモデルは
・Xperia XZ3 SO-01L(ソニーモバイル製)
・Galaxy Note9 SC-01L(サムスン製)
・Google Pixel 3(Google製)
・Google Pixel 3 XL(Google製)
この4機種。
もちろん、これらの4機種はどれも今冬の注目機種であることは間違いありません。
ですが、NTTドコモではお馴染みの
・AQUOS(シャープ製)
・arrows(富士通製)
この2社のハイエンドモデルがありません。
さらに言えばLG電子製のフラグシップモデルも今年はラインナップにありません。
明らかに例年に比べてフラグシップモデルのラインナップが薄くなっています。

その理由として挙げられるのは、やはりiPhoneの存在でしょう。




今年のiPhoneは、この3モデル、いずれもハイエンドモデルとなります。
さらにiPhone XRに至っては6色展開とカラーバリエーションも豊富です。
単純な製品数でみれば、例年の倍といってもよいでしょう。
・iPhone XS
・iPhone XS Max
・iPhone XR

現在のフラグシップモデル、高性能モデルは、価格が10万円を超えるモデルも珍しくなくなってきたの中で、iPhoneの製品数がこれだけ増えれば、どうしてもAndroidスマートフォンの売れ残りへの懸念が増してしまいます。

また近年では消費者のスマートフォンの買い替えサイクルが従来の2年から、それ以上の期間と鈍化しています。

NTTドコモは、3年ほど前からスマートフォンは、各製品カテゴリにおいて、年一回を目安としたモデルチェンジを行ってきました。
それから3年が経過し、
・ハイエンドモデルの価格高騰
・買い替えサイクルの鈍化
・iPhoneに偏るのハイエンドモデル
これらがハッキリとしてきたと言えます。


○価格や用途を絞った機種を拡充
フラグシップモデルが少なくなる一方で、
・低価格
・低機能
これらのラインナップは、逆に拡充されています。




NTTドコモでは月額料金が条件を満たす限り永年1,620円割り引かれる「docomo with」を2017年夏から提供しており、すでに300万契約を突破するなど同プランが人気、主力となりつつあります。
docomo withは指定された機種を購入しなければ加入できない割引プランです。
指定機種の特徴には
・実売3万円〜4万円
・エントリーやミドルレンジに属するモデル
このように、docomo withプランのユーザー層は、フラグシップモデルを求めない層でないことは明白です。




さらに、今回は2年ぶりにフィーチャーフォンの新作がラインナップに追加されました。
・カードケータイ KY-01L
・AQUOSケータイ SH-02L

現在は、
・安価なスマートフォン
・安価な料金プラン
これらが求められるようになっています。
さらに、そもそもスマートフォンは不要だと考えているユーザーも少なくありません。

スマートフォンの普及も飽和状態に達し、使い方や用途も周知されました。
このことで、「電話とメールだけ利用できればいい」と、使い方を割り切るユーザーも増えています。

こうしたユーザーにとっては、
・スマートフォンの本体価格
・スマートフォンの料金プラン
これらは割高で、無駄な出費となります。
当然、従来のフィーチャーフォンを使い続けたいということになります。

しかしNTTドコモとしては、フィーチャーフォンのユーザーに対して
・新製品(4G対応機器)に買い替えてもらう
・他社に移行(MNP)されない
これらの対策を進めなければならない理由があるのです。

NTTドコモは10月末に行われた決算会見で、
2020年代半ばに第三世代通信サービス(3G)の「FOMA」のサービスを終了する意向を示しています。

つまり従来のフィーチャーフォンを利用するユーザーを第四世代通信サービス(4G)へ移行させていく必要があるのです。

そこで、4Gに対応したフィーチャーフォンを追加し、スマートフォンを不要だと考えるユーザーにも、4G対応フィーチャーフォンへの買い替えを促しているのです。


今回のNTTドコモのラインナップは
・ハイエンドモデルの売れ筋、価格帯が明確化
・ハイエンドと実用志向のユーザーの明確に分離
・フィーチャーフォンの4G移行
といった、今後の携帯電話における3つの方針の転換がハッキリと浮き彫りになったといえます。


迎 悟