がむしゃらに俳優業と向き合ってきた10年。菅田将暉に生まれた“怖さ”の正体

俳優として注目された映画『共喰い』から5年。いわゆる若手イケメン枠から飛び出し、昨年公開された『あゝ、荒野』では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。これまで、俳優として邁進してきた菅田将暉は、昨年から俳優活動に加え、アーティスト活動でも結果を残してきた。本人いわく、それは「自分のパーソナリティを失わないための活動」。今年で芸能界に足を踏み入れて10年目。菅田は自身の状況を見据え、いまどう在るべきかを常に見極めている。静かな語り口の中に、彼の強い意志が見えた。

撮影/平岩 享 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.

俳優は免許があるわけでもなく、点数が出る仕事でもない

菅田さんの単独インタビューとしては、映画『帝一の國』のとき以来です。そのあとに公開された、映画『あゝ、荒野』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞されました。まずは、菅田さんにとって映画賞とはどういったものなのかをうかがいたいと思います。
狙いに行くものではないし、かといって無視するものではないから、『共喰い』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞したときもそうだったけど、最初に受賞を知らされたときは「マジか!?」ってビックリします。でも、そのあとに受賞の背景が見えてくるとうれしいですし、もっと頑張ろうと思います。
賞を得たことが自信につながることは?
それはありますね。俳優という仕事は免許があるわけではないし、点数が出る仕事でもないから、自信を持ちづらいところがあるんです。人の評価というか、人の心を動かせたかどうかでしか判断がつかないから、映画賞のようにわかりやすく評価していただけるとありがたいです。
逆にそれがプレッシャーになることもあるのでしょうか?
どうなんでしょうね。ただ、自分が賞をいただいたことの意味合いを考えてしまうことはあります。たとえば、友達から100円をもらうのと2000万円をもらうのとでは大きく違うじゃないですか。100円なら(もらったことに対して)あまり深く考えないけど、2000万円にもなると、「なぜ僕にくれたんだろう」と考えますよね。賞というのはそれくらい大きなもの。

どんな作品を撮っていても「日本アカデミー賞最優秀主演男優賞の〜」と言われてしまうので、手を抜けないなと。結局のところ、必死に作品を作っていくしかないということなんですけどね。

とはいえ、作品はチームで作るものだし、『あゝ、荒野』に関しては、岸 善幸監督、共演者のヤン・イクチュンさんをはじめ、この作品に関わった全キャスト、スタッフのみなさんと共に過ごした時間が正しかったのだと思えたので、本当にうれしかったですね。

自分の本意ではない仕事をすることは、往々にあると感じた

11月9日から公開される映画『生きてるだけで、愛。』でプロデューサーを務められている甲斐真樹さんとは、『共喰い』以来のタッグとなりますね。何か特別な思いはありましたか?
僕は『共喰い』のときに甲斐さんと監督の青山真治さんから映画の現場の在り方を学んだので、また一緒に仕事ができるのはうれしかったです。それに今回の作品は、どこか『共喰い』に共通するところがあるんですよね。
というのは?
『共喰い』は戦後の生きにくさを描いていましたが、これは現代の生きにくさを描いた作品。両方とも時代に犯されているというか、気づかぬままに疲弊しているのをあぶりだした作品という意味で似ていると思います。
『共喰い』では、オーディションで役を勝ち取られました。そこでの演技が評価されて、今の躍進につながっていると思いますが、ご自身としてはいかがですか?
今ではオーディションを受けることが減り、オファーをいただくことが多くなりました。それは本当にありがたいことであり、だからこそ僕らみたいな人間が映画館に人を呼べる存在にならないといけないな、と感じることが多くなりました。
菅田さんは本作について、監督である関根光才さんに「これは自分たちの世代が『よくぞやってくれた!』と思える映画になる」とおっしゃったそうですね。
その“世代”とは、今を生きている10代、20代、30代の人たちのことです。(菅田さん演じる)津奈木は文学の世界に憧れて出版社に入ったのですが、自分のやりたかった物書きの仕事に就けず、ゴシップ記事を書き続けています。それこそ最初に恋人の寧子(趣里)と出会ったときに「汚い仕事」と言われるんですが、自分にとって本意ではない仕事をやらないといけないことは往々にしてあるなと思いました。

でも仕事って、やりたいことが必ずしもできるわけではないじゃないですか。実際、津奈木と同じような状況にいる人も多いと思うし、この映画にはそういったリアルな現実が描かれていると感じたので、そういう発言をしました。
菅田さんは俳優として順調にキャリアを重ねられているように思いますが、ご自身も同じように感じたことがあるのでしょうか?
たくさんありますよ。でも、どんなときでも楽しんでいかないと、と思っています。
では、自分にも他人にも嘘をつけず、素直すぎるゆえにメンタルに問題を抱える恋人の寧子と、そんな彼女を優しく包み込みつつも、しだいに疲弊していく津奈木の関係については、どう思いましたか?
社会的に言えば、津奈木はまともだと思います。そういう意味では、津奈木は社会に迎合している人間で、それができずにいるのが寧子。社会にいる人間をわかりやすく二分すれば、このふたつに分かれるのかもしれないけど、彼らの生活を見ていると、意外と同じところにたどり着いているのではないかと思います。

数ヶ月ごとに違う役を演じることに、怖さを感じるときも

先ほど「どんな仕事も楽しんでいかないと、と思っている」とおっしゃっていました。2009年の『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)での俳優デビューから、来年で芸能生活10年を迎えます。この10年で俳優としての考え方は変わってきましたか?
ありますね。がむしゃらに頑張っていくというのは今後も変わりませんが、毎月、あるいは数ヶ月ごとに違う役を演じることに、怖さを感じるようにもなってきました。
自分とは違うキャラクターを演じ、それを数ヶ月後に切り替えるのは大変なことだと思います。そのうえ、もし撮影の時期が被っていたら…それはなおさらですね。
俳優業をしていると、曜日感覚がなくなってくるんですよね。毎日違う時間に起きて、違う人と会って、違う人格のキャラクターを演じる。もちろん頭ではわかっているんですけど、ずっとやっていると、頭と体の融通が利かなくなってくるところがあって。
今年だけでも、ドラマ『トドメの接吻』(日本テレビ系)、映画『となりの怪物くん』、ドラマ『dele』(テレビ朝日系)と、幅広い役を演じられていました。
だからこそ、『菅田将暉のオールナイトニッポン』でラジオパーソナリティをやったり、歌手活動で歌うことによって、役ではない自分を作りたかったんだと思います。
それは自分が役に侵食されてしまう怖さがあったから?
そうとも言えるかもしれませんが、それよりも、日本が東京オリンピックの開催に沸いているときに、「何でこんなに道が混んでいるんだよ」ぐらいにしか思っていない自分がヤバいなと。でも、ラジオのリスナーさんと会話していると、ちゃんと今の社会とつながることができるんですよね。それは菅田将暉として発信する音楽も同じだと思っています。

なので演じる役だけでなく、自分の人生もプロデュースしていかないといけないなというのが、今の僕の率直な思いですね。
それが今後、俳優、アーティストとして、菅田将暉が目指すところですか?
そうですね。あと指針とは少し違うかもしれませんが、やっぱり楽しむことですかね。というのも、映画は撮っても公開できない作品がたくさんあります。そのうえで、僕がやっている仕事は、自由もあるけれどいつ何があってもおかしくない職業。

今はSNSを含めて情報にあふれている時代ですから、作りものに興味がない人も多いかもしれないけれど、まずは自分が楽しまないと見てくださる方も楽しめないと思うんです。だからこそ、今の自分としては楽しんでやっていくことが大事かなと感じています。
菅田将暉(すだ・まさき)
1993年2月21年生まれ。大阪府出身。A型。2009年、『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)でデビュー。2013年に出演した映画『共喰い』、翌年の『そこのみにて光輝く』で注目され、2015年には、ドラマ『ちゃんぽん食べたか』(NHK)、『民王』(テレビ朝日系)で主演を務めた。主な出演作品に、映画『溺れるナイフ』、『帝一の國』、第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した『あゝ、荒野』、『銀魂』シリーズなど。ドラマでは、『トドメの接吻』(日本テレビ系)、『dele』(テレビ朝日系)などがある。今後は、NHK連続テレビ小説『まんぷく』への出演、主演映画『アルキメデスの大戦』(2019年夏公開)が控えている。ラジオパーソナリティやミュージシャンとしても活躍中。

出演作品

映画『生きてるだけで、愛。』
2018年11月9日(金)全国ロードショー
http://ikiai.jp/
©2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会
ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
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