大学の奨学金で自己破産!?……奨学金返済に困ったら救済制度の活用を

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この5年間で、約1万5000人が奨学金を理由に自己破産しているのをご存知でしょうか?

私立大学の学費は高騰し続け、国立大学でさえ学費は16年間で6割も増加。今では2人に1人の学生が奨学金を借りています。奨学金の平均返済額は利息を含めると約400万円にものぼり、大卒の初任給が17万円弱だと考えると、相当な負担を強いられることは間違いありません。

返済できない時は連帯保証人や保証人になった親などが返済請求を受けることがあります。奨学金の返済に困った場合はどうすればいいのでしょうか。若者の労働・貧困問題に取り組むNPO法人POSSE相談員の岩橋誠さんに対処法をうかがいました。

借金を自ら増やす必要はありません。 最大のタブーは「返済の延滞行為」

――どうしても奨学金の返済が難しくなった場合、私たちはどのような対策をとるべきでしょう?

岩橋さん
「まず、もっとも大切なのは、奨学金を返せなくなったときに『その状況を放置しない』ということですね。延滞金が発生するので、余計にお金を払わなければならなくなります」

――自ら借金を増やすことになるということですね。ですが、「払えないのだからしょうがない」と諦めてしまう人もいるのでは?

岩橋さん
「それでも返済は滞らせないことが大切です。それでは、返済に困ったときに使える制度をご紹介しましょう」

意外に知られていない、奨学金返済を「一時停止」できる制度

岩橋さん
「奨学金の返済ができない場合は、支払い期限を先送りできる制度があります。ひとつは『返還期限猶予』で、奨学金を返せなくなったときに『ちょっと待って』ということで支払いを一時停止する制度です。これなら延滞金もつきません。この制度は返済を1年単位でストップすることができ、申請は計10回(10年分)まで許されています。数年間、連続で使ってもいいし、分割して使うこともできます」

――苦しいときは一度返済をストップさせ、少しお金が貯まってからまた再開すればいい、ということですね。

岩橋さん
「申請の条件は年収が300万円以下であること。過去にさかのぼって申請することもできますが、過去の年収が300万円以下であることを証明しなければなりません」

日本学生支援機構「返還期限猶予」

申請はスピーディに! 訴えられたら「返還期限猶予」は使用不可  

 

――申請が過去にもさかのぼれるというのはありがたいですね。

岩橋さん
「気をつけなければならないのが、長らく返済を滞らせたせいで、日本学生支援機構から裁判を起こされてしまうこと。そうなったらもうこの制度は使えなくなります」

――ちなみに、どれくらいの期間、返済が滞ったら訴えられるのでしょう?

岩橋さん
「9ヶ月分滞納すれば、いつでも訴えられるということにはなっています。訴える基準はまちまちで、1〜2年で訴えられる人もいれば、もっと早く訴えられる人もいます。そういった意味でも、『返還期限猶予』はすぐに申請したほうがいい」

他にも「減額返還制度」や「返還免除」もあるにはあるが……

 岩橋さん
「他にも『減額返還制度』というものがあります。これは毎月の返済額を半分にしてくれる制度で、その分、支払い期間が長くなりますが、返還総額は変わらないので利息も増えません。しかし、一度で、も返せなかったら延滞金は発生するので、返済に不安があるなら先ほどの『返還期限猶予』をおすすめします」

――支払う能力に見合った制度を利用すべきだということですね。

岩橋さん
「他にも『返還免除』といい、奨学金の返済そのものが免除される制度もありますが、これは本人が死亡するか重度の障害を負った場合のみ使えます。これに該当しない場合で、本当に奨学金を返せなければ、自己破産するのもやむを得ないことです」

今の職場で「未払い賃金」はない? 見落としがないかの点検を

――その他にも返済で困ったときの解決策はありますか?

岩橋さん
「これは制度ではありませんが、現在の勤め先で『未払い賃金』があるかどうかを確認してもいいと思います。奨学金の返済が辛いのかは、働いているのに十分な収入がないから。もしかしたら、サービス残業した分などの未払い賃金があるかもしれません。これを取り戻し、今後は給料として支払われれば、返済が楽になるかもしれません」

  ――未払い賃金があるかどうかを、法律の素人が確認するのは難しいのでは?

岩橋さん
「ですから、返済で困ったときは『POSSE』のような機関、もしくは『奨学金問題対策全国会議』という弁護士たちの団体もあり、いずれも無料で相談を受け付けています。どうすれば自己破産せずに済むか、一緒に考えましょう」

――相談のタイミングはいつがベストですか?

岩橋さん
「『返済が辛い』、『返済がキツくなりそう』だと感じたら、すぐさま相談を。できるだけ延滞金がつく前に連絡してほしいですね」

自己破産者の半分は保証人。自分を責めず、早めの相談を

日本学生支援機構から奨学金を借りた本人と連帯保証人となった親が返済できない場合、保証人(※)は未返還額の半分しか支払い義務がありません。それにも関わらず、機構がその旨を伝えないまま全額を請求し、9割以上がそれに応じていたことが報じられました。

(※)日本学生支援機構から奨学金を借りる場合、「連帯保証人」だけでなく、「保証人」も選定する必要があります。連帯保証人は原則として父か母、保証人は4親等以内の親族と定められています。

全額支払うよう求めること自体は違法ではありません。しかし、保証人の無知を利用し、事実を伝えないままに全額を回収するのはいかがなものか、社会的責任が問われています。

POSSEには奨学金の返還に関して、年間150〜200件ほどの相談がくるそうで、その半分以上は連帯保証人や保証人になっている親族から。実際、奨学金による自己破産者の半分近くはそうした親や親戚だといいます。

返済する必要がない給付型の奨学金制度が始まったとはいえ、その条件は厳しく、対象は全国の生徒数のわずか2%。日本の学費は世界的にみても高く、従来の返済義務のある奨学金がなければ大学に通えない若者はますます増えてゆくはずです。非正規雇用も増え、大卒でも正社員になれる保証はありません。

岩橋さんはいいます。「今の社会には、奨学金制度が想定した『安定的な雇用』がなくなりつつあります。奨学金返済の滞納は、決して個人の計算ミスではないんです」。

返済に困ったら決して自分を責めず、どうか早めの相談を。

今回の取材先
NPO法人 POSSE
 執筆・監修

猿川 佑氏

ジャーナリスト、雑誌編集者。政治・社会問題からライフスタイルやファッションまで、扱う分野は多岐にわたる。

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