双子や三つ子が生まれる不思議…  家系の遺伝に関係あり?

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執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


可愛らしい双子の赤ちゃんを見かけると、なんだか微笑ましくなります。

同時に二人を育てる苦労をする分、たくさんの幸せも享受できる…

そんな双子の子育てに憧れる人もいるかもしれません。

しかし、双子の出産は望んだら叶うのでしょうか。

一説によれば、双子は遺伝ともいわれています。

今回は双子が誕生するメカニズムや遺伝についてご説明します。

双子はどのように生まれるの?

生命が宿るのは、通常、排卵された1つの卵子に1つの精子が結びついて受精卵となり、子宮のなかに着床することから始まります。

人間の身体には、基本的に1回の月経周期で1つの卵子を排卵する仕組みが備わっているため、妊娠と聞くとお腹に一人の赤ちゃんがいるイメージを抱くと思います。

しかし、何かのきっかけで受精卵が2つに分かれたり、1度に2つ以上の卵子が排卵され、それぞれに精子が結びついたりすることがあります。

こうして複数個の受精卵が子宮に着床すると、双子や三つ子が生まれる可能性が出てくるのです。

ところで、双子と言えば

「一卵性」「二卵性」

という違いを聞いたことがあるでしょう。

もともと1つの受精卵が2つに分かれて育つと「一卵性の双子」、2つずつの卵子と精子がそれぞれ受精して別々の受精卵として同時に育つと「二卵性の双子」になります。

双子は遺伝が関わっているの?

双子が生まれるメカニズムは前述のとおりですが、実はなぜ1つの受精卵が2つに分かれたり、同時に複数の排卵が起こったりするのか、詳しい原因は今も明らかになっていません。

ただし、同時に複数の卵子が排出されやすい、という体質の影響はあると考えられています。

そこには母親側の遺伝的な要素が関わっているとされ、母親側の家系に二卵性の双子を産んでいる人がいれば、同じように二卵性の双子を授かる可能性が高いというわけです。

しかしながら、このような遺伝の影響によって双子が生まれるケースもありますが、家系に双子がいなければ絶対に双子は生まれない、ということにはなりません。

双子の数は増えている?

少子化が問題視されている今、出生率は低下し続けていますが、双子が生まれる数はやや減少傾向がみられるものの横ばいで、すべての分娩件数に対して双子が生まれる割合は増えています。

厚生労働省の調査(※)によると平成21年、一人の赤ちゃんが生まれてくる単産の出生数は105万人、双子の出生数は2万人でした。

この双子の出生数は、およそ30年前と比べると2倍近くになります。

さらに、一卵性の双子と二卵性の双子の数に注目すると、かつては二卵性の双子の数は一卵性の半分程度でしたが、1970年代から徐々に増え、現在では二卵性の双子の方が多くなっています。

これは不妊治療で使用される排卵誘発剤や体外受精の普及などが関係しています。

ただし、必ずしも不妊治療によって二卵性の双子が生まれる、という意味ではありませんので正しい理解が必要です。

※厚生労働省『出生に関する統計 2.出生動向の多面的分析』(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo06/syussyo2.html)

一卵性と二卵性の双子の違い

一般的に、顔がそっくりな双子は一卵性というイメージですが、具体的にはどのように違うのでしょうか。

一卵性の双子は同じ受精卵から分かれるため、遺伝子は全く同じ、容姿はとても似ていて、性別や血液型ももちろん同じです。

一方二卵性は、性別も血液型も、同じ場合と違う場合があります。

容姿が似る割合は、年の違う兄弟程度であることがほとんどです。

体格については、一卵性、二卵性を問わず、お腹のなかにいるときの環境によって差が生じることも考えられ、一概に同じようになるとは言えません。

また、性格は似ていることもありますが、生まれてからの環境や人間関係、受ける刺激などによって差ができ、それぞれの個性となっていきます。

実際に双子を育てた方に話をうかがうと、授乳や睡眠のリズムがまったく同じでびっくり!という声がある一方、双子でも性格がまったく違っておもしろい、という意見もあります。

双子を育てる大変さを理解し、このような個性の違いや双子同士の関わりについて、周りの大人があたたかく見守ってあげられるような社会が理想的ですね。

【参考】高橋恒男・関和夫監修『たまひよ新・基本シリーズ+α 双子&三つ子ママの妊娠・出産・育児』(ベネッセコーポレーション 2014年)


<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供