殺害への関与は否定したムハンマド皇太子。15人の実行犯のなかには、皇太子の専任SPも含まれていた

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歯向かうものは全員有罪

殺害への関与は否定したムハンマド皇太子。15人の実行犯のなかには、皇太子の専任SPも含まれていた

「ジャマル・カショギ氏という著名なジャーナリストが殺害されたので大きなニュースになっていますが、これはサウジアラビアが行っている粛清のほんの一例にすぎません。例えば、現政権に対して批判的だった3人の王子は、亡命中にもかかわらず、行方不明になっています。他にもムハンマド皇太子とは対立関係にあったカレド王子は、ドイツ亡命中に何者かに毒を盛られて死にかけました」

 そう語るのは国際ジャーナリストの山田敏弘氏だ。今回の事件でサウジアラビアのムハンマド皇太子(33)の強権政治が表面化したが、彼が事実上の最高権力者になった’15年以降、同国内では激しい権力争いが繰り広げられてきた。

 10月2日にトルコのサウジアラビア総領事館内で殺害されたカショギ氏も、ムハンマド皇太子とは対立する派閥に属していた。皇太子批判を繰り広げてきたカショギ氏は、サウジ独特の内部抗争に巻き込まれた可能性がある。

 実はサウジには、ムハンマド皇太子の手足として動き、敵対勢力を容赦なく排除する特殊部隊が存在する。王族に忠誠を誓い、王室のためだけに動く組織「サウジアラビア王室警備隊」だ。今回のカショギ氏殺害も、王室警備隊の諜報機関と、その暗殺部隊が関与したのではないかと疑われている。国際政治学者の六辻彰二氏が解説する。

「王室警備隊は、正規のサウジアラビア軍とは別で動いており、超法規的な組織です。国王直属の部隊で、SPとしての役割も担う。独自の秘密回線を用いて通信するなど、秘匿性の高い部隊です。今回も王室警備隊の中の特殊部隊がムハンマド皇太子の意を汲んで動いていた可能性があります」

 今回、実行犯としてトルコが発表している15人のうちの4〜5人が王室警備隊に所属していると、欧米メディアは報じている。

 米国の同盟国でもあるサウジは、イスラム国家の中では比較的、日本にも身近な国という印象がある。しかし、実際はその内部に、血も凍るような暗殺のプロ集団を抱え込んでいたのだ。

「今回の実行犯は、特殊部隊の中でも高度な訓練を受けた精鋭である可能性が高い。計画的な犯行で、手際も良かった。間違いなく、殺しを専門にする経験豊富なプロ集団です。ムハンマド皇太子は、こういった暗殺部隊を駆使して強権的な政治を敷いている。今後も、反体制的な人間に対する粛清が続くのか注視しなければなりません」(前出・山田氏)

 サウジは、暗殺国家という汚名返上のために、カショギ氏が殺された本当の経緯を国際社会に説明しなければならない。

15人の暗殺チームのメンバーたち。ムハンマド皇太子のボディガードや、軍関係者、法医学者などから構成。うち一人はサウジ国内で交通事故死した

殺害されたカショギ氏。サウジ初代国王の主治医の孫で、武器商人のアドナン・カショギ氏のおいにあたる

PHOTO:アフロ