対馬・厳原の市街地(「Wikipedia」より)

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 日本海に浮かぶ島、長崎県対馬市。古くは『魏志倭人伝』や『日本書紀』にも登場する歴史ある島に、異変が起きているという。韓国・釜山まで最短で49.5キロという位置に浮かぶ対馬には、近年になって韓国人観光客が殺到している。それだけならまだしも、韓国資本が対馬の不動産や土地を買収する動きが活発化しているというのだ。

 なぜ、対馬の土地は韓国人に買われてしまうのか。また、対策はどのようになっているのか。これまで何度も対馬に足を運び、現地の取材経験も豊富な産経新聞社編集委員の宮本雅史氏に話を聞いた。

●この10年でコリアンタウンに変貌した対馬

「対馬は、この10年で大きく変わった」と宮本氏は言う。

「10年前に訪れた際には、『韓国人お断り』という貼り紙をした飲食店が数多くありました。当時、すでに年間10万人くらいの韓国人観光客が来ていたのですが、マナーの悪さが目立ち、島民にはあまり歓迎されていませんでした。盗難防止のために、ホテルの冷蔵庫やテレビは鎖につながれていることもあったくらいです」(宮本氏)

 しかし、10年たった今、そうした貼り紙はほとんどない。それどころか、比田勝のフェリーターミナルを降りると、韓国人観光客専用のツアーバスが何十台も列をなし、観光客を待ち構えている。免税店には韓国人が殺到し、まるでコリアンタウンの様相を呈しているという。Tシャツに短パンという、近所にふらっと遊びに来たかのような出で立ちの観光客も少なくない。もはや、韓国人にとって対馬は“気軽に立ち寄れる場所”なのだ。事実、フェリーに乗って免税店で買い物をし、日帰りで戻っていく人も多いという。

「昨年は37万人の韓国人が対馬を訪れました。対して、日本人の島民は3万人。住民票を置いたまま本土に働きに出ている人もいるので、実際に住んでいる人の数はもっと少ないかもしれません。かつてあったような韓国人観光客への抵抗感は、すっかり消え去りました」(同)

 一方で、韓国人観光客が増えると同時に、島の土地や民宿、民家などが次々に買収されるようになった。その結果、韓国人なしには島の経済が成り立たなくなってしまったのだ。

「かつて日本一人口密度が高いといわれた川端通りの飲食店街は、今や韓国人御用達の店だらけです。店舗を買収した韓国人が経営者となって、島民を従業員として雇っているケースも少なくありません。民宿や釣り宿なども買収されました。したがって、大勢の観光客が来たところで、彼らがお金を落とすのは韓国資本が関係するホテルや飲食店、免税店。島自体にはそれほどお金は落ちないといいます。つまり、対馬は単なる場所貸しになってしまっているようです」(同)

 仕事がなく定年を迎えると、島を後にする島民もいる。すると、今度は空き家になった民家をまた韓国人が買う。高く買ってくれる人がいれば、売り手にとっては、それが日本人だろうと韓国人だろうと関係はない。少し前だが、2008年に海上自衛隊対馬防備隊本部に隣接する土地が韓国資本に買収され、韓国人観光客を受け入れるリゾートホテルになったことは衝撃を与えた。

「海上自衛隊本部の隣の土地が韓国資本の手に渡ってしまったのは、安全保障上も大きな問題です。しかし、韓国からすれば『買えるものを買っただけ』にすぎません。しっかりと規制をせずに曖昧に放置していた日本に責任があります。アメリカでも韓国でもどの国でも、他国の人間が土地を買う際には制限が設けられていますが、日本にはその規制がありません。国際的に見ても異常なことが実際に起きています」(同)

 対馬には、ターミナルがある比田勝と中心街の厳原、その間にもいくつもの町がある。それらの地域でも、不動産が韓国資本に買収されるところが増えているという。点と点がつながれば線となり、気がついたときには島の大部分が韓国人のものになっていてもおかしくはないだろう。

「高齢化が進み、地場産業もどんどん衰退していっています。ある免税店の店員は、『もう、対馬はいつ韓国の国旗が掲げられてもおかしくない。実質、韓国領だ』と言っていました。『対馬は、あと10年もしないうちに日本ではなくなっている』と不安がる人もいます」(同)

●中国資本が本格参入の脅威も

 韓国資本による買収が進む対馬は、なぜ放置されているのだろうか。その理由について、宮本氏はこう語る。

「多くの日本人が、不動産が外国資本に買収されるということに関心がないからです。その証拠に、対馬の現実はメディアで報じられることはほぼありません。『領土を奪われるなんて、現実に起きるわけがない』と多くの日本人が信じ込んでいるのと、領土が実際に奪われることへの危機感が薄いのでしょう」(同)

 しかし、“危機”はすぐそこまで来ている。一方で、国はいっこうに対策する気配を見せない。

 一時は、自民党の議員連盟「真・保守政策研究会」や超党派の国会議員による「日本の領土を守るため行動する議員連盟」が立ち上がり、外国資本の参入に規制をかける新法制定に向けて動きを活発化させたこともあったが、議員連盟を牽引していた中川昭一氏が病死したことで、その流れは止まってしまった。その後の動きがないことからも、国の対馬に対する関心の低さがうかがえる。

 そんななか、17年4月に施行されたのが、いわゆる「有人国境離島法」だ。しかし、同法は対馬の現状に対しては意味をなさないという。

「有人国境離島法は、離島から本土に渡る費用の6割を国が負担するというもので、利用できるのは島民だけです。本土から島に行く人に対する援助ではないので、これでは意味がありません」(同)

 最後に、宮本氏は脅威は韓国だけではないことを明かした。

「対馬に訪れる中国人も年々増加しています。中国資本が本格的に入ってきたら、韓国も太刀打ちできないといわれています」(同)

 地場産業が活発化するように人を投入する、本土の人間が行きやすくなるように環境づくりを行う……対馬を守るための施策は、まだまだたくさんあるだろう。取り返しのつかない事態になってからあわてて対策を打っても、もう遅いということになりかねない。
(文=島野美穂/清談社)