手抜き工事で慢性肺炎の恐怖、家カビの大量発生で
2005年12月14日17時35分 / 提供:PJ
家カビは室内の結露から生える。ただの黒カビだと甘くみていると、肺臓の細胞が蝕まれ、最悪は命取りになってしまう。家カビがいかに恐ろしいものか。慢性肺炎で苦しむ、葛飾区の藤間聖子(仮名)(62)さんから話しを聞くことができた。
1985年の秋、藤間家は一戸建ての家屋(建坪延べ85平方メートル)が三人の子どもの成長とともに手狭になり、53平方メートルの増築をした。聖子さんの学友が紹介してくれた墨田区のS工務店で、設計施工を依頼した。二階は子ども部屋。一階は六畳間、八畳間の和室とし、襖で仕切った。遠い将来の二世帯をにらみ、八畳間には簡単なキッチンを添えた。ここが内職(小学生の答案添削)をはじめた聖子さんの仕事場となった。
7年後の92年の初夏、聖子さんは風邪を引いた。売薬や医院の投薬でも効果がなく、熱と咳が続いた。晩秋になって、咳はごく自然にとれた。しかし、翌年から決まって夏風邪を引き、症状が年々悪化してきた。95年、激しい咳と熱に耐え切れず、市川市の呼吸器専門の化研病院で診てもらった。レントゲンに写った肺臓は真っ白で、即時、入院だった。病名は間質肺炎。これを機に、内職はやめた。2カ月間の入院で、完全に治癒と思っていたが、翌年また再発したのだ。
99年、精密検査の結果、聖子さんの血液から家カビ(トリコスポロン)が発見されたのだ。『夏型過敏性肺炎』と病名が切り替えられた。最近は学会でも注目されはじめた病気である。夏になればカビが大量発生し、冬になればカビの活動がおさまる。連動して肺炎の症状も鎮まる、それで名づけられていた。病名から判断すると、冬には治りそうだが、慢性化すると、肺の細胞がコールタール状となり、通年にわたり咳き込む。やがて、呼吸困難に陥るから、家カビの排除が急務だと医師からいわれた。
家屋を点検してみると、増築した一階の押し入れにはカビが繁殖していた。塗装業者に依頼し、室内全般の壁面に防カビ剤を塗り、除湿器も設置した。それでも翌年の初夏になると、肺炎が発病した。2003年には畳を疑い、全室の取り替えを業者に依頼した。聖子さんの仕事部屋の畳をはがすと、真っ黒なカビがびっしり。畳裏の模様が黒カビで、腐った床板にプリントされた状態だった。背筋に寒気を覚えたという。
「これがそのときの写真です」。聖子さんは畳屋の取り替え作業を一時中断したうえで、池袋の井手一級建築士に家屋診断をしてもらったという。
井手社長から直接話を聞くことができた。「あれはひどい工事でした。床の根太は細く、古い材料が使われていたし。そのうえ、和室の床はふつうザラ板で、桟の隙間を取るべきだが、9ミリのベニヤ板がびっしり張られていた。それが腐ってぼろぼろでした。まさに手抜き工事の見本だった」。畳は床下の風を室内に送ったり、吸ったり、つねに呼吸している。藤間家の増築は、ベニヤで塞がれ、床下からの空気の流入が阻害されていた。
もうひとつの大きな欠陥は、流し台の足元にガラリ(通気孔)を作ったことだという。「都市ガスは空気よりも軽い。漏洩しても上方に拡散するし、天井に近いところに、ガラリを造作するものです。和室に低い位置でガラリを造ると、畳が戸外の湿気を吸うんです。あの畳は水分を吸って通常の二倍の重さでした。あれでは家カビが大量に発生してもおかしくない」。
おなじ説明を受けた一昨年、聖子さんの夫が電話でS工務店に抗議した。さらには写真を添えた書面による抗議をしたが、S工務店は一度も藤間家に訪ねてこなかったという。
その点をPJはすばり、S工務店に向けてみると、過去四十年間、一度もこんな苦情はない。ガラリはガス漏れの安全のためにつけたし、法違反ではない。家人が窓を開けっ放しで外出すれば雨が吹き込み、畳が濡れる。畳を二十年近くも取り替えなかった、藤間家に非があるといわんばかりの内容だった。
聖子さん夫婦は争うか否かと何度も話し合ったようだ。誠意のないS工務店を相手に裁判で争っても、最後は和解だと、虚しさが残るだけだ、残る人生が無駄になる、という夫の意見で訴えることは止めたという。「私の肺炎は人災です。床板と畳の取り替えで、肺炎の症状は軽くなりましたが、慢性化しましたから、咳は冬でも消えません。一度はびこった家カビはゼロになりません。家屋の建て替えが一番ですが、60歳を越えると、資金面から踏みだせないんです」。【了】
1985年の秋、藤間家は一戸建ての家屋(建坪延べ85平方メートル)が三人の子どもの成長とともに手狭になり、53平方メートルの増築をした。聖子さんの学友が紹介してくれた墨田区のS工務店で、設計施工を依頼した。二階は子ども部屋。一階は六畳間、八畳間の和室とし、襖で仕切った。遠い将来の二世帯をにらみ、八畳間には簡単なキッチンを添えた。ここが内職(小学生の答案添削)をはじめた聖子さんの仕事場となった。
7年後の92年の初夏、聖子さんは風邪を引いた。売薬や医院の投薬でも効果がなく、熱と咳が続いた。晩秋になって、咳はごく自然にとれた。しかし、翌年から決まって夏風邪を引き、症状が年々悪化してきた。95年、激しい咳と熱に耐え切れず、市川市の呼吸器専門の化研病院で診てもらった。レントゲンに写った肺臓は真っ白で、即時、入院だった。病名は間質肺炎。これを機に、内職はやめた。2カ月間の入院で、完全に治癒と思っていたが、翌年また再発したのだ。
99年、精密検査の結果、聖子さんの血液から家カビ(トリコスポロン)が発見されたのだ。『夏型過敏性肺炎』と病名が切り替えられた。最近は学会でも注目されはじめた病気である。夏になればカビが大量発生し、冬になればカビの活動がおさまる。連動して肺炎の症状も鎮まる、それで名づけられていた。病名から判断すると、冬には治りそうだが、慢性化すると、肺の細胞がコールタール状となり、通年にわたり咳き込む。やがて、呼吸困難に陥るから、家カビの排除が急務だと医師からいわれた。
家屋を点検してみると、増築した一階の押し入れにはカビが繁殖していた。塗装業者に依頼し、室内全般の壁面に防カビ剤を塗り、除湿器も設置した。それでも翌年の初夏になると、肺炎が発病した。2003年には畳を疑い、全室の取り替えを業者に依頼した。聖子さんの仕事部屋の畳をはがすと、真っ黒なカビがびっしり。畳裏の模様が黒カビで、腐った床板にプリントされた状態だった。背筋に寒気を覚えたという。
「これがそのときの写真です」。聖子さんは畳屋の取り替え作業を一時中断したうえで、池袋の井手一級建築士に家屋診断をしてもらったという。
井手社長から直接話を聞くことができた。「あれはひどい工事でした。床の根太は細く、古い材料が使われていたし。そのうえ、和室の床はふつうザラ板で、桟の隙間を取るべきだが、9ミリのベニヤ板がびっしり張られていた。それが腐ってぼろぼろでした。まさに手抜き工事の見本だった」。畳は床下の風を室内に送ったり、吸ったり、つねに呼吸している。藤間家の増築は、ベニヤで塞がれ、床下からの空気の流入が阻害されていた。
もうひとつの大きな欠陥は、流し台の足元にガラリ(通気孔)を作ったことだという。「都市ガスは空気よりも軽い。漏洩しても上方に拡散するし、天井に近いところに、ガラリを造作するものです。和室に低い位置でガラリを造ると、畳が戸外の湿気を吸うんです。あの畳は水分を吸って通常の二倍の重さでした。あれでは家カビが大量に発生してもおかしくない」。
おなじ説明を受けた一昨年、聖子さんの夫が電話でS工務店に抗議した。さらには写真を添えた書面による抗議をしたが、S工務店は一度も藤間家に訪ねてこなかったという。
その点をPJはすばり、S工務店に向けてみると、過去四十年間、一度もこんな苦情はない。ガラリはガス漏れの安全のためにつけたし、法違反ではない。家人が窓を開けっ放しで外出すれば雨が吹き込み、畳が濡れる。畳を二十年近くも取り替えなかった、藤間家に非があるといわんばかりの内容だった。
聖子さん夫婦は争うか否かと何度も話し合ったようだ。誠意のないS工務店を相手に裁判で争っても、最後は和解だと、虚しさが残るだけだ、残る人生が無駄になる、という夫の意見で訴えることは止めたという。「私の肺炎は人災です。床板と畳の取り替えで、肺炎の症状は軽くなりましたが、慢性化しましたから、咳は冬でも消えません。一度はびこった家カビはゼロになりません。家屋の建て替えが一番ですが、60歳を越えると、資金面から踏みだせないんです」。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一
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