吉田氏と妻の香さん(51)。ラーメン店を始めたいと相談されて驚いたという香さんだが今は仲良く店を切り盛りしている

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グルメ趣味が高じて自分で店を出したら大人気

吉田氏と妻の香さん(51)。ラーメン店を始めたいと相談されて驚いたという香さんだが今は仲良く店を切り盛りしている

 鳥取県の山間・浜村温泉の一角にある中古車販売会社「ホット・エアー」。ここに昼時になると行列ができ、客は口々に「スープまで飲み干しちゃった。美味しい!」と満足気な様子で出てくる。

「ここのご主人が趣味でラーメン店を始め、あれよあれよと人気になって。私も何度も食べてるけど、クセになる味なの。週末には県外ナンバーの車で食べに来る人も多いです」(70代の地元女性)

 この店が、10月12日に発売された『ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019』で、ビブグルマン(コストパフォーマンスのよい店部門)に選ばれたのだ。

中古車のガレージで屋台を

「今年2月にミシュランの調査員が来たんですけど、入ってきた時から『この人、なんか違うぞ』と思いましたね」と、店主・吉田克己氏(53)は明かす。

「専門的な質問に答えていたら身分を明かしてくれました。その後、電話で確認があったから掲載されるんだな、と。おそらくビブグルマンだろう、という確信はありました。プロが喜ぶ味を僕は当初から作ってきましたから」

 吉田氏は5歳の頃から祖母に連れられて様々な店に行き、味を比較採点するような子供だった。’02年からは妻の地元である浜村温泉で中古車販売業を営み、納車のために出張した地で食べ歩きをするのが趣味だったという。

「ラーメンおたくが趣味で店を始めた、と思われてるけど違います。しいて言えば僕はダシおたく(笑)。どんな料理にもある"旨み"が好きなんです。自分でダシをとるようになったきっかけは子供が生まれたこと。化学調味料も保存料も入らない、本当に美味しいものを食べさせてあげたいと思って。ラーメンを選んだのは、単に大衆食が好きだったからです」

 最初は、地元の祭りの時に中古車のガレージで屋台を出してラーメンを売ってみた。完全な独学だったが、出店のたびに密かにスープを変え、お客さんの反応をリサーチ。すぐに評判となり、2時間で120杯を売り上げたこともあった。

「屋台を始めて3年後、事務所の奥を厨房にしてラーメン店を出したけど、最初はお客ゼロという日もありました」

 店構えの珍しさからテレビに取り上げられたりもしたが、逆に視聴者から「単なるネタで、ホントは美味しくないんだろ」と思われてしまったという。

「それがミシュランに載って一気に変わった。店構えもこのままで貫いていきますよ。中古車販売もやめる気はありません。車のほうでも僕を必要とする人がいるんですから」

 最終目標は「同い年で大ファンの吉川晃司に食べに来てもらうこと」だ。

営業は11:15からスープ終了まで。現在は13:00過ぎに売り切れている

看板商品は鹿野地鶏などがベースの「極み塩」と「極み醤油」(ともに800円)

中央の大きいテーブルはもともと中古車販売の商談用だった

PHOTO:山田真実