ファミリーマートの横に「PRODUCED BY ドン・キホーテ」の文字が!

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立川駅南口を降り「柴崎町三丁目」の交差点を左折。国立方面に5分ほど歩いたところに駐車場を備えたコンビニエンスストア「ファミリーマート立川南通り店」がある。

レジには肉まんやファミチキ、おでんといった人気のホットスナックに並んで「焼き芋」の姿が

ごく普通のファミリーマートかと思いきや、店外にはペットボトル飲料やスリッパなどの日用品が山積みされ、そこに書かれている値札は、どこかで見たような書体。

看板を見ると納得した。この店舗は「ファミリーマート」と「ドン・キホーテ」のコラボ店舗だったのだ。

■ 「ドンキ度高っ!」と驚くこと間違いなし

店内に脚を踏み入れると、笑ってしまうほどファミリーマートとは大きく異なる。人が一人通れるかどうか、という狭い通路。天井近くまで積み上げられた商品。ドン・キホーテではお馴染みの圧縮陳列だ。

それもそのはず、ファミリーマートの商品だけでなく、ドン・キホーテ側の商品も取り扱うことで、通常のコンビニエンスストアの約2倍近い約5000種の商品が並んでいるのだ。

並ぶ商品も日用品(特に衣料品)や化粧品、携帯関連用品、そして加湿器に腕時計と、今までのコンビニエンスストアでは見られないものばかり。しかも、どれも驚きの「情熱価格」。

奥に進むとファミマでお馴染みの「お母さん食堂」の惣菜や弁当、飲料などが並ぶ。この空間まで進むと、なぜかホッとする。大型の冷蔵庫やホットドリンクコーナーなども、コンビニではよく見かける光景。逆にドン・キホーテではあまり見ない光景といえる。

レジにはファミチキや肉まんといったファミマではお馴染みのホットスナックの隣に、ドン・キホーテではお馴染みの焼き芋、そして10円のガチャポンのガムが置かれている。もはやファミリーマートなのかドン・キホーテなのかよくわからなくなってきた。この発想力、恐るべしである。

■ 「顧客満足度向上に寄与する新たな可能性を検証する」実験店舗

ファミリーマートは以前からレンタル大手のTSUTAYAをはじめ、スギ薬局など、異業種とのコラボレーションを行っていた。しかし量販店と手を組んだことは今までにはない。では何故にドン・キホーテと手を組んだのだろう。担当者に話を伺った。

「2017年8月にユニー・ファミリーマートホールディングスとドン・キホーテホールディングスが資本・業務提携に関する基本合意を締結し、昨年より様々な検討を進めてきました。大きな取り組みの一つとして、ユニー株式会社の展開する『アピタ』『ピアゴ』と、ドン・キホーテの展開する『MEGA ドン・キホーテ』のノウハウを結集した、ダブルネームブランド『MEGA ドン・キホーテ UNY』の展開を、現在 6 店舗実施しています。

また、様々な業態との競争が激化するコンビニエンスストア業界においても、ファミリーマートの基本的な売場づくりや品揃えに、ドン・キホーテ店舗の強みである地域のニーズに合わせた商品提案や演出ノウハウを付加することで、顧客満足度向上に寄与する新たな可能性を検証するために、実験をすることになりました」

この実験は6月から開始しており、立川のほか、目黒区「大鳥神社前店」と世田谷区「世田谷鎌田三丁目店」で行われている。「地域のニーズに合わせた商品提案や演出ノウハウ」ということもあり、他の2店舗が「立川南通り店」と同じ商品を取り扱ったり演出を行っているわけではない。また、この実験店舗は、現時点ではこれ以上拡大する予定はないという。「ドンキとファミマがコンビに」は3店舗限定なのだ。

■  売上3割増!ついでに買ってしまう相乗効果

では、実験の途中であるとは知りながらも、その成果について伺った。「6月〜8月までの3ヶ月間の実績で、3店舗平均で売上は約3割増えています。また、客数、客単価共に、以前よりも 1 割以上伸長しています。 特に日用品は前年比 300%、加工食品や菓子等も 200%以上伸長しています。 ファミリーマートで人気のファミチキなどに加え、ドン・キホーテで取り扱っている『情熱価格極氷』や『焼きいも』などが人気です」と、どうやら売上の面では実験は成功しているようだ。顧客一人あたりの単価が伸びているということは、たとえばお弁当のついでに化粧品を、といった具合で、本来の目的とは異なる何かを買っていると思われる。

ファミリーマート側は、この相乗効果ともいえる状況を、どのように分析しているのだろう。「ファミリーマートの強みである、ファミチキや焼きとり、中華まんをはじめとしたファストフード や、おむすび・サンドイッチ・パスタ・デザートなどの中食商品に加え、ドン・キホーテの強みである日用品や衣料品の品揃えや、POPなどの販促手法が加わることにより、これまで以上にお客さまに利便性と、お買い物の楽しさを提供できていると考えています」。

コンビニエンスストアはもともと、目的買いの店舗だと思う。今回の実験は、そこに衝動買いの要素が加わるのか、という実験をしているように見えた。実験の期間は明らかにされていないものの、ここでのノウハウが今後のファミマ商品や店舗運営に生かされることは想像に難しくない。

もし立川や目黒、そして二子玉川に立ち寄る機会があったら、いずれも駅から若干距離はあるものの脚を運んでみてはいかがだろうか。なるほど、というアイデアがいっぱいあるし、地域差が見えて面白いと思う。ちなみに筆者は、ここで紹介する立川の他に目黒の店舗にも訪問したが、立川南通り店の方がより「ドンキ度」が高いように感じた。(東京ウォーカー・栗原祥光)