税務調査を受けやすい人の特徴とは?(写真:Nishihama/PIXTA)

国税局や税務署が担う税務調査。もし税務調査によって、税金の未納が指摘された場合、ペナルティとして追徴課税を課せられます。彼らは一体どんな人を「調査対象」とするのか? かつて国税職員として働いていた、さんきゅう倉田さんが解説します。

確定申告を終えた後、「そのうち自分にも税務調査が来るのかな」なんて気にされた方は多いと思います。まず結論から言えば、あなたが個人事業者であれば、毎年その可能性があります。一方、会社員の方でも確率は低いですが、調査が入ることがあります。もし何か副業をやっているなら、一般の個人事業者と同様の確率で調査対象となります。

税務署の接触方法もさまざま。調査官が自宅や事務所に直接やってくるケースや、「お尋ね」と書かれた書類の回答を求められるケース、資料を持って税務署に来るよう指示されるケースなどがあります。

税務署から「標的にされやすい」人の特徴

では、どんな人が税務署から調査の標的にされやすいのでしょうか?

最も狙われやすいのは、税務署から見て「目立つ人」です。税務調査を避けたければ、とにかく目立たないことを意識してください。たとえば些細なことですが、確定申告書類の記入ミスや計算ミスなどの単純ミスをなくすだけで、狙われにくくなります。

しかし、正しく申告しても目立ってしまう場合があります。たとえば「売上が伸びている」「売上が極端に減った」「所得が伸びている」「所得が極端に減った」「経費だけ増えている」「今まで計上していなかった勘定科目で過大なものがある」など、このような場合は税務署から「目立っている」と認識されます。逆に言えば、数年間、申告書類に大きな変化がなければ、調査官たちも調査に着手しづらいわけです。

もし、あなたが副業をしている会社員なら、急に売上が伸びたり、日々の飲み代を交際費にして所得が急に減ったりすることもあるでしょう。すると突然、調査官から「税務調査をしたい」と電話が来るかもしれません。そのとき、あなたに顧問税理士がいるかいないかも彼らが税務調査をする判断材料になります。

実は税務署の調査官にはノルマがあり、なるべく大きな増差(調査による所得の増加)がほしいという事情があります。となると、税務調査を行った際、不正でもミスでもいいので、できるだけ調査対象の所得が増加したほうがうれしい。もし顧問税理士がいない調査対象であれば、税の知識はなく、帳簿にも誤りがあるかもしれないし、税法の解釈が難しいような処理でも容易に納得させられる、と考えます。なので、税理士と顧問契約していない個人事業者は、調査において圧倒的に不利となります。

もちろん、税理士への顧問料、申告費用、税務調査の立会いに伴う支払いがあるので、トータルコストでどちらが有利かはケースバイケースです。ただ、税務調査だけで見ると、税理士さんの助けを借りないのは、丸腰で戦地に赴くのと同じです。

税務署はどうやって情報を集めるのか?

副業をする会社員の方の中には、「どうせバレやしないだろう」と正しい所得を申告していない方もいらっしゃるかもしれません。ですが、そのような人を税務署が見逃すことはない、と断言しておきましょう。

確定申告をしないことを「無申告」と言いますが、税務署や国税局は、ここ数年、無申告の人間の取り締まりを強化しています。

税務調査の前に調査官たちは、「準備調査」という下調べとデータの整理を行います。彼らは申告していない人間の情報をどうやって集めるのでしょうか。

その方法は多種多様です。一部は公表できませんが、中には「タレコミ」や「反面調査」、「銀行調査」といったものがあります。

税務署へのタレコミというのは、定期的にあるものです。クビになった従業員や恨み、妬みを持った近所の住人、別れた奥さんなどが、ある日突然税務署にやってきたり、匿名で電話をかけてきたりします。そんな人は、税に明るくもないですし、色眼鏡で見ていることが多いので、間違った情報を提供してくることも多い。それでも、ノルマがある調査官は、その情報をもとに税務調査に行くことがあります。

もしそのタレコミが言われもない事実だとしたら、たまったものではありません。何も悪いことはしていないのに、恨み、妬みでタレコミされ、風説を元に、それを確認するために税務調査が行われるわけですから。だから、商売をするうえで、自分が儲かっていると流布し、他人の恨みを買うような行為は控えるのが得策です。

反面調査とは、調査対象者の取引先などに調査をすることです。もし調査対象者が、申告書類の取引記録を改ざんしていれば、取引先の記録と矛盾が生じますし、そもそも調査対象者が破棄していた取引もあるかもしれません。また、無申告の人間と取引している可能性もあります。

銀行調査では、調査官が対象者の預金口座を調べようとします。銀行も調査官の依頼を断ることはまずありません。もし無申告で口座に給与以外の振込が散見された場合、調査官から何かしらの副業をしていると判断され、税務調査に発展する可能性があります。

税務調査に入られないための方法

税務調査の基本的な手法として「帳簿を3年分見る」があります。税務調査官が、すべての個人事業者に調査することはまず無理です。だから、税務調査は数年に1回、あるいは数十年に1回といった頻度になるわけです。

税法上は7年分の帳簿の保存が求められています。ですが、7年分見ることは基本的にありません。慣習として、「最低3年分は見よう」となっています。となると、事業を始めて1年や2年で調査が入ることはなく、3年分の申告を終えて、4年目以降に調査が入ることが多くなります。

申告書類上、特に目につくことがなくても、4年目になったからとりあえず調査に行ってみよう、と税務署が着手することもままあります。こうなると、運が悪かったと諦めるしかありません。幸いなことに、そこで申告是認(増差がないこと)であれば、今後、調査が行われる確率は下がります。

税務署は、無鉄砲に調査対象を選ぶのではなく、一定のルールに基づいて選定しています。運もありますが、みなさんの努力次第でその確率は下げることができます。もし、税務調査への不安を解消したければ、上記のことを守ってください。

もちろん不安を解消するいちばんの方法は、確定申告の際に正しい数字を申告することです。