「オールブラックス」にちなみ、工場外観や作業服は黒一色に統一

写真拡大

 「下請け、町工場のイメージを良くすることが自分のライフワーク。どんなにAI(人工知能)やITが進歩しても、モノづくりはなくならない」と力強く語るのは、industriaの高橋一彰社長。バルブなど金属加工の下請けから事業をはじめ、近年は自社ブランド製品も収益の柱になっているが、「下請け脱却といより、下請けスタイルで(自社製品を)ブランディングしていった」(高橋社長)と強調する。

 ゼロから製品を開発し、販売するのではなく、顧客の懐に入り込んで困り事を聞き出し、それを商品化するスタイルを貫く。「それこそが下請けの強み。顧客から図面をもらってその通りにつくるのか、図面はなくても顧客に助けて欲しいと言われてつくるのか。それだけの違い」(同)と徹底する。

 その一環で生まれたのが工場廃液用フィルター「フィルスター」。縦長で円筒形の本体内部で廃液を遠心分離により、ゴミを底に沈殿させて取り除く。

 ゴミをこす膜やろ紙、網などはなく、それらを交換する手間が省け、廃棄物も出ない。ランニングコストも大幅に削減できる。製造を請け負っていたバルブがたまたま廃液処理装置に使われていたことがきっかけで「フィルター交換のいらない装置がないものか」と相談されたのが始まりだ。

 精密加工、磨き加工、溶接の自社技術をフル活用。それでも足りない技術は積極的に外部の力を借りた。広島大学との共同研究で廃液の流体制御やノズル形状などをシミュレーションしたり、首都圏産業活性化協会(TAMA協会、東京都八王子市)で他社と協力したり、「多くの人や団体、大学、会社などの門をたたき、コラボレーションがどんどん広がった。最終的には約30機関と連携した」(高橋社長)と数え上げる。

 商品化は2003年。営業でも「すべて顧客の現場へ行き、実際にテストを無償でさせてもらってから販売する。シミュレーションには頼らない」(同)と下請けスタイルを徹底。ゴミの除去能力も当初は30マイクロメートルのサイズまでしか分離できなったが、改良を重ね、今では1マイクロメートルまで除去できるようになった。

 現在、自動車や建設機械、工作機械、排水プラントなどさまざまな洗浄工程で使われており、その累計は世界98カ国で約12万本におよぶ。特に自動車の車体の塗装前洗浄工程では7割のシェアを持つ。

 今後の製品開発でも「現場で泥臭く、何度も何度も試行錯誤してつくり出す」(同)と下請け・町工場のスタイルを貫いていく方針だ。