Jリーグの外国人枠が変わりそうだ。

 J1では早ければ来シーズンから、現行3人の出場枠が5人に拡大される。
外国人枠の議論でポイントとなるのは、「拡大による競技力の向上」と「自国の選手の出場機会の確保」に、どのようなバランスを見出すのかにある。年齢的には10代後半から20代前半あたりの選手で、ポジション的にはセンターバックとストライカーが、外国人枠拡大の影響を強く受けると考えられる。

 もっとも、各チームが外国人枠の拡大をすぐに、最大限に生かすのかには、疑問符が付く。
 まずは予算の問題がある。

 外国人選手の待遇はチームによって異なるが、基本的には住居と自家用車を用意する。その他にも母国との航空運賃代、家事や生活事務の代行、家族のケアなど、費用と手間がかかるものだ。

 もちろん、通訳も必要である。5人の外国人が同じ言語を話すから通訳はひとりでOK、というわけにはいかない。通訳はピッチ外でもマネージャーのように寄り添い、選手とその家族をサポートする。5人すべてが同じ言語を話し、なおかつ手のかからない選手だとしても、3人はいないと仕事がまわらないだろう。

 5人の外国人を獲得できる資金を持ったクラブでも、戦力アップにつながる選手を5人集められるか。

 外国人なら誰でもいいわけではなく、ポジションバランスも考えなければならない。基本的にはセンターラインや人材の手薄なキャラクター──たとえば、左利きのサイドバック──が欲しいのだろうが、J1の全18チームがすぐに5人を揃えるとは考えにくい。
Jリーグ各クラブの外国人選手の補強は、実績重視の傾向が強い。日本国内で過去にプレーしたことのある選手が重用される。

 そこには、限られた予算を無駄なく使いたい、失敗したくないという思惑がある。外国人選手の供給ルートが限られていることも、複数のクラブでプレーする選手が多い理由にあげられる。いずれにせよ、リスクのある投資をしてでも5人揃える、という発想は薄いのではないだろうか。

 ヨーロッパのビッグクラブでは、自国の選手がスタメンにひとりもいない、といった状況が以前から生まれている。各クラブを外国人選手の獲得へ駆り立てるのは、とにもかくにも試合数が多いからだ。

 国内リーグとカップ戦に加えてチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグを戦い、それぞれのタイトルを目ざすために、一定水準以上の戦力を揃える。ターンオーバーができるようにする。そのためには、即戦力の外国人の補強が効果的である、という考え方が広がっていった。

 ひるがえってJリーグは、ターンオーバーが必須となるほどの過密日程にならない。今シーズンの鹿島アントラーズのように、ACLで勝ち上がりながら天皇杯とルヴァンカップも勝ち抜けていくと、試合数は一気に増える。それにしても、ごく限られたクラブしか直面しない。ACL出場クラブには外国人枠の拡大が魅力的に映りそうだが、その他のクラブはそこまで前向きにならない気がする。
外国人枠の拡大が正式に決まれば、各クラブへの選手の売り込みは増加する。それによって供給ルートも拡がっていくだろうが、19年から導入されたとしても、すぐに外国人選手が急増することにはつながらないはずだ。

 導入直後は二極化が進むのではないか。ヴィッセル神戸のように積極的に外国人選手を獲得するクラブと、しばらくは様子を見るクラブに分かれる気がする。

 外国人選手に頼らないチーム作りを、はっきりと打ち出すクラブが出てくるかもしれない。J1とJ2を行き来することになっても、地元出身の選手を育てることに軸足を置く、というクラブにも、それなりのメリットはある。トップチームへ昇格する選手が増えれば、「自分もあのチームでプロに」と考える選手が育成組織の門を叩き、その結果として優秀な人材が集まってくるかもしれない。

 外国人枠を無条件に拡大することには、率直に言って抵抗がある。ただ、各クラブの性格が明確になり、リーグ全体として多様性を持つことはできるなら、必ずしも悪いことではない。

 大切なのは「育成」の観点を失わないことだ。ヨーロッパの主要リーグが取り入れているホームグロウン性などを参考にしながら、若い選手の成長が阻害されない手当てをしていくべきだろう。