ドコモのフィンテック事業拡大が、金融サービスを巻き込む巨大経済圏でのシェア争いの幕開けになるワケ

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●NTTドコモが狙うフィンテックの世界とは? 
NTTドコモは10月17日、「2018-2019冬春 新商品発表会」の開催にあわせて、同会場にて報道陣向け「金融機関向けレンディングプラットフォーム提供に関する発表会」を開催しました。
通常の新商品発表会とは異なり、一般向けの動画配信なども行われず、これまでのNTTドコモの発表会とは異質な発表方法です。

今回発表された「ドコモ レンディングプラットフォーム」は、
NTTドコモが2020年までの中期戦略として掲げる「beyond宣言」の一環であり、「ライフスタイル革新」へ貢献するフィンテック分野の施策に位置付けられます。




フィンテックとは「Finance」(金融)と「Technology」(技術)を組み合わせた造語であり、「financial technology」の略称でもあります。
この言葉の意味するところは多岐にわたっています。
・オンライン購入にともなう電子決済
・スマートフォンからのオンライン送金
・現金や銀行での手続きを必要としないスマートペイメント
・仮想通貨取引
など、さまざまなものがすべてフィンテック分野に含まれます。

今回発表されたNTTドコモの「ドコモ レンディングプラットフォーム」は、
「lending」(融資)を目的としたものとなります。

手元のスマートフォンを使って、
・融資金の返済期日の確認
・融資金の管理
などが行えるほか、返済プランなどもユーザーの消費動向から個別にアドバイスしていくというものです。




しかし「ドコモ レンディングプラットフォーム」は、同社が直接ユーザー(一般消費者)に金銭を融資するわけではありません。

それは本プラットフォームが銀行などを対象としたBtoBtoC事業だからです。
つまり、「銀行(B)が、本プラットフォームを利用した金融サービス(B)を、一般ユーザー(C)に提供する」
という形になります。

今回、NTTドコモが、新商品発表会とは別枠で発表を行った背景には、
「ドコモ レンディングプラットフォーム」が企業向けの発表会であったためです。

同社広報担当も、
「NTTドコモが、(一般消費者に直接)融資サービスをはじめるのでは?」
といった誤った情報が流れないように配慮してのことと話しています。




「ドコモ レンディングプラットフォーム」は、NTTドコモが所有する顧客情報を最大限に活用するため、
・「ドコモスコアリング」
・「レンディングマネージャー」
・「ドコモサービスとの連携」
という3つの軸を用意しました。

ドコモスコアリングとは、
NTTドコモが所有するユーザー情報から、
・携帯料金の支払履歴
・契約内容
・コンテンツサービスの利用状況
などの融資に関係する5つの項目で評価を行います。
こうした評価情報を提携する金融機関に提供し、融資の際の判断に役立てるというものです。




このドコモスコアリングによる評価は、
同社のAI技術やビッグデータの処理技術が用いられます。
・収入
・就労状況
など一般的な融資の判断材料となる評価にくわえて、ドコモスコアリングの詳細な情報を付与することで、よりユーザーの目的や利用用途に適した融資プランを提案できるようになるとのことです。




レンディングマネージャーは、
マネーフォワードと共同開発したスマートフォン用アプリです。
「ドコモ レンディングプラットフォーム」を利用した金融サービスから融資を受ける際に、管理などを行うことができます。

たとえば、
・融資状況
・返済期限
などの管理だけでなく、ドコモスコアリングを基にした
・適切な融資プラン
・借入金額の提案
・個別の返済アドバイス
などにも対応することで、よりユーザーのニーズに密接した融資管理を行うアプリを目指すとしています。




●金融サービスを巻き込んだ巨大経済圏への顧客取り込みが最大の目的
NTTドコモの「ドコモ レンディングプラットフォーム」への取り組みは、一見すると利益が薄く、企業的なメリットが希薄との見方もあります。

しかしNTTドコモの目標は、顧客だけにとどまらず、パートナー企業を含む巨大経済圏の確立にあります。

・金融機関には、顧客の個人情報を提供
・顧客には、金融機関が提供情報を基に最適な融資プランを提供
こうした適切で運用力の高い融資を行うことで、自社サービスや提携企業の商品を購入に結びつけていくのです。

NTTドコモは、ポイントサービス「dポイント」を展開しています。
「dポイント」提携企業は、レストラン、コンビニエンスチェーン、ファーストフードなどあらゆる分野のトップ企業が名を連ねています。
このdポイント経済圏に参加する各種サービスを拡大する、成長させる=「お金を落としてもらう」ことが目的です。

「ドコモ レンディングプラットフォーム」を通して、金融機関から最適な個人融資が行われることで、dポイント経済圏のユーザーを増やし、取り込む。こうした流れを生み出すことで、同社の携帯電話サービスやdポイントサービスの顧客を確実に確保し、流出も防ごうというわけです。




「ドコモ レンディングプラットフォーム」を採用した金融サービスは、新生銀行グループより2019年3月の開始が予定されています。以後、全国の金融機関にも順次拡大予定とのことです。

現在、NTTドコモに限らず、KDDIやソフトバンクもフィンテックを軸とした金融サービスの展開には強い関心を示しています、
今後、移動体通信事業者(MNO)3社によるユーザーの囲い込み競争は、携帯電電話の業界にとどまらず、金融業界をも巻き込んだ巨大なシェア争いに発展していくことは、間違いなさそうです。





秋吉 健